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「重圧」と「責任感」のルール

数年前、現・阪神タイガーズ監督の矢野燿大(あきひろ)さんがTV解説の際、バッテリーを組んでいた頃の球児さんについて興味深いコメントをしました。

「あの頃の球児は、ファンから全てのアウトで三振を求められていた」
「それも真っ直ぐでの三振を」

そういう空気はありました。だからフォークを続けると「あれ?」みたいにざわつくし、ランナーを出しただけでヤジが飛ぶ。救援に失敗した日の試合後や翌日は外を歩くのも嫌だったはず。想像しただけで胃が痛くなります。

いい子ぶるわけではないのですが、私は球児さんが打たれるたびに「あれだけ酷使されたら、そりゃたまには」とベンチの采配に疑問を抱きました。たとえば猛暑日に8回の頭から投げて逆転された2010年8月のヤクルト戦。何で当然のようにイニング跨がせるんだ、セットアッパー育てておけや、と。

↑の記事によると、球児さんは「自分が批判を浴びることで監督やコーチを守っていた」と気づいて納得したとか。ただただ頭の下がる話です。でも普通は逆ですよね。

思い出すのはサッカーのモウリーニョ監督。かつての彼はチームが敗れるたびに挑発的な発言をしてファンやメディアから批判されました。コメントを見るたびにイラっとしましたが、まさに「選手を守るために責任者である自分が矢面に立つ」という構図だったのです。

選手の頃から監督やコーチと同等の責任をひとりで背負っていた球児さん。そのハードな経験の蓄積がいまの素晴らしい人間性を育んだのだとしても、組織として当時のタイガースに問題があったのはたしかです。

矢野監督が敗戦後によく「俺の責任」と言うのも、あるいは球児さんの苦悩する姿を見ていたからかもしれません。その結果、佐藤輝明選手は三振を恐れない豪快なスイングでホームランを量産し、江越選手は盗塁死した翌日に盗塁を成功させました。

重圧と責任感は人を育てます。と同時に、それらが本来の力を出せなくなるほど膨れ上がるのを上の人が防ぐことも成果に繋がる。おふたりから学ばせていただきました。ありがとうございます。

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