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「気軽に手に取れない」からこそ

選考会は1月19日(木)におこなわれるとのこと。

直木賞候補作に気になるものがふたつあります。

ひとつは「クローズド・ノート」や「犯人に告ぐ」で知られる雫井脩介(しずくい しゅうすけ)さんの「クロコダイル・ティアーズ」です。かつての恋人に夫を殺された妻と彼女を疑う姑。肉親間に渦巻くドロドロが昼ドラみたいで、獲ったら話題になる気がします。

もうひとつは私が受賞を予想している作品。小川哲(おがわ さとし)さんの「地図と拳」です。

日露戦争から第二次世界大戦へ至る時代の満州を舞台にした640ページの壮大な群像劇。↑には「歴史×空想小説」とあります。題を言われれば「ああ」となるのかもしれませんが、現時点では似たような既読作品が頭に浮かびません。だからこそ惹かれています。

読書メーターのレビューを見る限りでは、同じ年代をスパイの視点から批判的に描いた柳広司「ジョーカー・ゲーム」に近いテーマを感じました。しかし地政学を考慮に入れるなど、よりリアリスティックな印象も受けました。領土論や戦争論という角度から、ロシアとウクライナの現状に重ねている方もいらっしゃいます。

お値段は2420円。ボリュームに二の足を踏んでしまうのもたしかです。ただ考えてみたら、前々回の受賞作である今村翔吾さんの「塞王の楯」も560ページの大作でした。でも読み始めたらあっという間で、間違いなく己の血肉になっています。決して大げさではなく、繁忙期の不条理すぎる職場で踏ん張れている理由の何パーセントかは「塞王の楯」のおかげなのです。

こういう「気軽に手に取れない重厚な傑作」こそ直木賞や本屋大賞、そして我々書店員の力で売っていきたい。

お店が落ち着いた頃にでも読もうかな。よかったら皆さんもぜひ。

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