マガジンのカバー画像

詩集

43
日々生きている中で生まれた詩たちを綴っています。 2014年〜現在までに出来た作品をランダムにアップしていきます。 是非、毎日の隙間に読んでいただければと思います。よろしくお願い…
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】アイスコーヒー

【詩】アイスコーヒー

仕事を終えて
コンビニでアイスコーヒーを買い
それを持ってバス停に向かう

ほんのちょっとの距離なのに
西陽は容赦なく
氷たちを溶かしていく

バス停に着き
ベンチに腰掛ける
僕の側に置いたアイスコーヒーは
僕よりたくさん汗をかいている

その時不意に風が吹く

夏の夕方に吹く涼しい風は
我々に何とも言えない快感を与える

そんな幸せを感じている間もなく
バスは来る

僕のアイスコーヒーはその汗で

もっとみる
【詩】朝顔

【詩】朝顔

暑さの気配が漂い始める朝
通勤途中に
雑居ビルの横を通りかかる

そのビルの歩道に面した壁際には
コンクリート造りの花壇が
備えつけられていて

夏のつる性の植物を育てるために
支柱が立てられ
ネットが張られている

そこにはゴーヤや朝顔が

ふと見ると
あまりみたことのない模様の朝顔の花が
一輪だけ咲いている

くっきりとした藍に近い紫色で
花の中心から白いラインが5本程度
放射状に走っている

もっとみる
【詩】ねむい

【詩】ねむい

ねむい
 
低反発のベッドに横たわり
目を閉じると

からだはぐにゃりと二つ折れになり
先端になったお尻から
ずーんと地球の中心部を目指して
沈みこんでいく

その様はパフェのクリームに沈み込む
チョコレートさながらに
際限なくその身を伸ばし
マットレスと混ざり合い

最後にはわずかに私の色をした
マットレスのような
混濁した意識だけが
在るのだろうか

ねむい

【詩】長距離ドライヴ

【詩】長距離ドライヴ

星のない高速道路で
長い時間に渡り
車を走らせる

フロントガラスはスクリーン
ヘッドライトはスポットライト

流れる白線や反射鏡
時折前や後ろに流れるテールランプ
めくるめく風景を映し出す

それらのシーンは次々と向こうからやってきて
僕らをすり抜け
後ろに通り過ぎていく

その繰り返し

時折ハンドルを右や左に動かし
アクセルの足を踏み込み緩める
それらだけが
僕らの画角を決める
最大限の動作

もっとみる
【詩】ボヌス

【詩】ボヌス

我々は豊穣を祝う

今日のよき日を祝おう!

酒を酌み交わす

自由と引き換えに
位置を与えられ
金を手にして
手に入れた酒

こう言っちゃ聞こえは悪いが
だからなんだというのだ

今はただ
ボヌス・エヴェントスが与えたもうた
美酒を飲み

明日の英気を養おうじゃないか!

※ボヌス・エヴェントス(Bonus Eventus)・・・ローマ神話における豊穣と成功、勝利の女神

【詩】ガラム

【詩】ガラム

自転車に乗った僕は
自転車に乗った老人とすれ違う

そこで香ったのは
予測だにしなかった

薄い赤みのかかった
紫の煙

その香りは一気に僕を
20年前のライブハウスに引き摺り込む

その辺りに漂う
甘く強い香りと
ミラーボールの光

ゆらめく人影と

轟音

振り返ると
いつもの帰り道

老人は振り返らず
走り去っていく

--------------
補足

ガラム(GARAM)は独特の香りの

もっとみる
【詩】夏と自転車

【詩】夏と自転車

自転車で走る

多量の水を含んだ
生ぬるい空気が
僕の体にぶつかってくる

息を吸うと
空気と一緒に
水が鼻や口に入ってくる

時には水の密度が多く
息苦しくなるが

ごく稀に
その中に混ざっている
とても冷たい空気と
少量の水を飲むと

身体中に清涼な何かが
駆け巡り

僕の脳は一気に目覚める

シフトアップした僕は
加速をした自転車を駆り
夏の空気に突っ込んでいく

【詩】くしゃみ

【詩】くしゃみ

朝ごはんを食べていると

どこかの家からだれかのくしゃみの声が

こんなとこまで聞こえるなんて
滑稽だねえ

と、思うのだが

こんなに大きななにかを
その内にかかえていたのかあ
とも思うと

出てきてよかったねえ

だれかの大きななにか

【詩】大雨

【詩】大雨

「水は高いところから低いところに降りる」
これは真実であるが

地上より高いあの空に
水の化身である雲があるというのは
どういうことか

熱にさらされ
空気よりも軽い
蒸気という姿に変えることができるとはいえ

何故神さまは
一見ひとつの摂理の抜け道のようにも見える
さらに大きな循環の摂理を作りたもうたのか

摂理は幾層にも重なり
交差し
大きな曼荼羅を描く

自然の摂理は我々に
恵みの雨を降らす

もっとみる
【詩】入れ子の世界

【詩】入れ子の世界

今年も田んぼに水を通す

半年間遊ばせていた土地は
見る見る水浸しになっていく

そこに住んでいたアリやクモやミミズ達は
わけもわからず
巣穴や見つけていたエサを失い
大慌てで沈んでいない土地を目指す

彼らの生きてきた世界は
文字通り
台無しになる

私は彼らの世界を台無しにするために
田んぼに水を通したわけではなく
お米を作るために水を通したのだが

結果的に彼らの世界を台無しにしてしまったの

もっとみる
【詩】雨風

【詩】雨風

田畑に身を置いている時に
大雨と強い風に出くわす

一瞬にして体はびしょ濡れになり
強い風が私の体を冷やす

私は急いで物置小屋の中に逃げ込み
雨の様子を伺う

トタンに雨が激しく打ちつけ
雨は右へ左へ斜線を描く

まるで古代の人が
羅生門の中で見ていた風景のよう

自然は我々を甘やかしてくれない

あの中にいたらゆっくりといのちを
奪われるだろうという

確かなイメージ

雨風から身を守る
その

もっとみる
【詩】川の芥

【詩】川の芥

川に浮かぶ芥は

人びとの生きるあかし

川の色は
透きとおる清流のそれとはほど遠く
色濃く

芥は
透きとおる清流のあわとはほど遠く
形を留めたい

少しでも色濃く
形留めようとする
人びとの生きるあかし

おもてにはそうみえるのだが

そこには

うつくしくすきとおる
はかないあわのような
ひとびとのすがたが

たしかにある

【詩】クラゲを負う者たち

【詩】クラゲを負う者たち

自分を
自分の属する集まりを
嘲る

卑屈な人の
卑屈な集まりに
何かが覆い被さっている

透明でもったりとした
何か
巨大なクラゲのような
何か

彼らはその何かを
脱ぎ捨てることができない

その重くもったりしたものに
支配されながら
守られているようにも思っている

こんなものをおっているせいで
オレは十分に動けない
だからしょうがない
しょうがないんだ

かれらは仲間と目配せをし
なんとも

もっとみる
【詩】気心の糸

【詩】気心の糸

不安なのかい?
またスマホをいじったり
食べものを口にいれているよ

さほど欲しくもない情報をみたり
さほど食べたくもない食べ物の味をみて
気を紛らわせているんだね

紛らわすってのは
糸を分けるって書くでしょ?

糸を分けたら
より細い糸になって
その糸を分けたら
さらに細い糸になって

あなたの気心は
ぷつっ

と、切れて
断片化していく

断片化した気心は
切れ切れで
変化の速い
刺激的なも

もっとみる