私の鑑賞の価値観を変えた、舞台「If or...Ⅴ」の思い出。
毎年、プロからアマチュアまでジャンル問わず舞台を観に行っている。しかし、ここ1年は、私のような観劇好き殺しの1年だった。
感想や思い出を記すことも楽しみの一つだったので、本当に寂しい。なので昔の思い出でも書いていこうかなと思う。
私は関ジャニ∞のファンであるが、最近ファンの間で、2月に上演される横山裕主演「マシーン日記」の話題がよく上がっている。
そんな話題を見ていたら、私も何回か関ジャニ∞の舞台を観に行った事があったので、その時の出来事を思い出した。5年くらい前の話であるが、衝撃的かつ価値観を変える出来事だった。
▶1:東京グローブ座
サブカル精通キッズであった私は、とにかく観劇が好きだった。自分自身がミュージカルの習い事をしたり演劇部に所属したりと、演劇の道を辿っていたからでもある。
好き嫌いなく何でも嗜む人間だが、アイドルの舞台というのは関ジャニ∞が好きになるまで観たことが無かった。
初めて観たのは、丸山隆平主演「BOB」であった。(これは、後に私とラーメンズの運命の出会いとなる舞台である。)
この舞台は、舞台好きの生意気キッズからしてもかなり''舞台寄り''の内容だったため、あまりアイドルの劇を観た〜という感じは無かった。
そのため、私が一番最初に意気込んで観たものは、村上信五が毎年シリーズで行っていた「If or...シリーズ」の「If or...V」である。
「BOB」の時に体感したことだが、ジャニーズ系御用達の東京グローブ座へ向かう道中、私はあの道にとてもゾワゾワする。
新大久保の賑やかなコリアンタウンの店通りは、まるで韓国に来てしまったかのような、日本ではないような異国情緒がある。しかし、東京グローブ座へ向かって歩いていくと、どんどん人がいなくなっていく。
新大久保駅を降りてからグローブ座までの、その一連の流れが、異世界へ行くような、現実離れしていくような感覚なのだ。
そんな賑わいから遠ざかる道中、遠く前を歩いている方が関ジャニ∞のグッズを身につけているのを見て、何だかホッとするのである。
あの道で、オタクだけが精査されていくのだ。
東京グローブ座の入口前の壁面に、上演中の公演の大きなポスターが飾ってある。みんな写真を撮るのだが、謎の波打ったポールがポスターとめちゃめちゃ被るのである。
何とか謎のポールが邪魔にならないようなポジションで、大きな推しの姿を収めようとするオタク達が、奇妙な動きをしているのが風物詩である。いとをかし。
ちなみに私も写真撮りました。その写真載せようと思ったのですが見つからない!!嘘だろ!!
悲しいですが、イラストで……。
信五とお揃いノリノリポーズをしたキッズを見て、周りの大人なオタク達も私の真似をして写真を撮り出した。みんなが一斉に同じポーズをして面白かった。いとおかし。
▶2:幸せいっぱい
東京グローブ座は箱が小さくて、2階席の一番後ろだとしても、肉眼で楽しめるくらいには見やすいと思う。(ただ、舞台装置の死角が多い。)
この日、私は1階席の一番後ろであった。
私はちょっと切ない気持ちになる。全体が見えるとはいえ、やっぱりできるだけ前で見たい。チケットの数字を見た時も切なくなるのだが、実際に会場に行くと自分より前に座る人が目に入るので、余計に切なくなる。
一方、隣の母は喜んでいた。
私は関ジャニ∞の何かに参戦する時、私の影響で関ジャニファンになった母親と一緒に行くことが多い。親との仲が良いのもあるし、未成年キッズだったので遠征は親同伴だったというのもある。
我が家のエイトに関する七不思議(ややこしい)の一つに、母親の席はいつも通路横というものがある。
母はいつも「やったー!またデブ席だ!」と、通路横を非常に喜ぶ。
母いわく、「狭い席でデカいオバサンが迷惑をかけたくない、ゆとりがあった方が自分自身の身体にも優しい」ということらしい。母にとっての神席だ。
この日も例に漏れず「デブ席」を引き当てた。
この赤丸の二席である。もちろん母はいつもの通路横に座り、私はその隣に座った。
初めて観た「If or...」、まず印象に残ったのが着替えの早さである。
村上氏の一人舞台であるため、何役もを一人で演じるのだが、ほんの数秒で全く違う格好(なんならカツラ付きで靴も違う状態)で現れる。
これぞまさにコンサートで培った早着替えなのか!と非常に驚いてしまった。
本編も「掟」をテーマにしたお話で、構成がまとまり良く、掟を破ってしまう小ネタなんかも散りばめられ、歌ありダンスありの超コメディだった。
偉そうに、サブカル精通キッズも楽しめる内容で、面白いし楽しかったので、翌年の6も観に行ったくらいだ。
そして、会場が温かい。
もうファンの皆さんの愛に溢れていて、笑い声などのリアクションが尖っていない。
私はかなりツボがイカれているし、不謹慎な所で笑ってしまうような尖りリアクションをしがちなので、「この幸せな空間を壊してはいけない!!」と子供ながらにドキドキした。
でも、やっぱり幸せは伝染するもので、自然とそんな心配もなくなって観劇後はいつもより温かい気持ちになる。ファンの心が一つになっている。
推しは私たちを幸せにしてくれるけど、ファンも私を幸せにしてくれる。
そんな幸せな空気が溢れる東京グローブ座に、余韻をかき消すような出来事が起こる。
▶3:戦慄の伝言ゲーム
終演後、私服に着替えた(これも早い)村上氏の挨拶を笑顔で見送って、彼が袖にはけていく。
そんな時に、左の方から「ピギャ!!」とトラックに轢かれたカエルのような音がした。
その音はなんと同じ列のだいぶ遠い席から聞こえてきた。その声を皮切りに、こちらに向かってそんな奇妙な絶叫が近づいてくる。
絶叫伝言ゲームはなんとワンブロックを制覇し、こちらまでやってきた。
端の方から、通路を挟んでデブ席に座っている母の元に絶叫が迫ってきた。
横山ファンの母の大絶叫によって、絶叫伝言ゲームは四方八方へと向かった。
左から右へ「ヨコ!」「キャ!!」「ヨコ!」「キャ!!」「ヨコ!」「キャ!!」……
観劇によって心が一つになったオタク達は、見ず知らずの相手と手を叩いて大喜び。さすがアイドル、存在した形跡だけで激震が走る。
様々なことに配慮してササッと退出した横山氏の姿を見た人は、隣に座っていた方だけのはずなのに。まるで全員が横山氏と隣り合わせだったかのようなパラダイス。横山伝言ゲームというと、私は英会話よりこっちを思い出してしまう。
あんなに素早くて正確な伝言ゲームを見たことが無い。
▶席は巡り合わせ
横山氏はすぐ入退室できる席に座っていた。
だから、一番後ろの列といういわゆるNot神席も、実は神席になることがあるんじゃないか?と思った瞬間だった。
一番後ろの席でちょっと落ち込んでいた私だったが、この日をキッカケにどの席でも最高に楽しめるようになった。
よくよく考えれば、チケットが当たること自体が素晴らしいことである。
その席で幸せになれるのは私だけなのだ!!
一番後ろだからこそ、会場全体の空気感が伝わってより幸せな気持ちで満たされたし、一番後ろだからこそ、まさかのゲストを直近で感じることができた。素敵なファンの方と知り合えることもあるし、見ず知らずの皆で幸せや喜びを共有できるのも非常に稀なことだと思う。
皆さん、神席じゃないからって落ち込まないで……!
その席にはその席の良さがある!
以降、アイドル関係なく、観劇やコンサートなどの席の位置で悲しむことはなくなった。むしろ、どの席の良さも伝えられるような座席アンバサダーになりたい。全席制覇を目指すのが目標になった。
どれも巡り合わせ。
一喜一憂する最大のポイントではあるが、きっとその席でしか味わえない何かが待っている。
そんなことを気づかせてくれた舞台だった。
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