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むずかしい平凡 自句自解 第一章「むずかしい平凡」

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拙句集「むずかしい平凡」の自解を行っています。もしよければ俳句を楽しみつつ、お付き合いください。
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#燕

56 川と本屋のゆたかな町よ夕燕

56 川と本屋のゆたかな町よ夕燕

 句集「むずかしい平凡」自解その56。

 鳥の中で一番好きなものは、と聞かれたら「燕」って答えるでしょうね。

 なぜといわれてもうまく答えられないけれど。

 小さくても力強く、自由自在に飛ぶ姿。気がついたら好きな鳥になっていました。

 中学のころ、自宅に巣を作った燕の卵を蛇が狙っていた。その燕も危険を感じ、近くの仲間を呼び寄せ、必死に蛇の気をそらそうとしていた。人間もも蛇を追い払ったりして

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55 草書ってきっとつばめの暗号です

55 草書ってきっとつばめの暗号です

 句集「むずかしい平凡」自解その55。

 口語俳句ですね。最近は口語文語にこだわらず、できるだけ自由に俳句を作りたいと思うようになってきた。

 基本的な型というのはたしかにあるし、それに従っていけば打率も上がる。でも、それだけではなかなか自分自身の深い部分を書き留めきれない、そんな思いも出てきて、つねに試行錯誤ですね。

 これは即興的な句です。

 最近、必要に迫られて書道に親しむようになっ

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54 燕の空仰ぐこと店畳むこと

 句集「むずかしい平凡」自解その54。

 近所の小さなお菓子屋さんや八百屋さん、洋服屋さんなどが次から次に店を畳んでいる。郊外に大きなスーパーマーケットができてしまった影響でもあるし、そもそももう店を継ぐ人がいないという事情もあるかもしれない。

 ただ、ここ数年どっと店を畳む傾向が強くなっているのは、やっぱり大震災の影響もあるのかなと思う。私の住む近辺は避難者がそのまま生活の拠点にしているケー

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26 燕帰るぽかんと再開発の空

 句集「むずかしい平凡」自解その26。

 「燕帰る」が季語。春に南からやってきた燕が、子育てを終え、やがて秋になり、また南方へ帰ってゆく。

 あの暑かった夏の日々も終わり、涼しさが戻り、空が広く感じられる、そんな季節。

 震災から数年たったころの句ですね。復興が進み、街は再開発されてゆく。古い建物が解体され、思いもかけないところに青空がのぞいていたりする。

 あれ、ここ、もとの建物って、な

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25 秋燕や現地解散してから旅

25 秋燕や現地解散してから旅

 句集「むずかしい平凡」自解その25。

 グループで旅行などして、わいわいがやがや、一泊二日くらいのにぎやかな時間を過ごして、じゃあこのへんで、現地解散で、また会いましょう、などと言って、みんなと別れる。

 たいていはこれで帰途に就くわけですが、これで終わるのももったいない。ちょっとどこかへ立ち寄ってみようか。

 なんとなく、そんな気分のときに、秋の燕が空をよぎっていった。

 と、まあ、そ

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