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#WEB小説
月の砂漠のかぐや姫 第68話
遊牧と共に交易を主な生業とする阿部たち肸頓族にとって、ヤルダンに複数の盗賊団が出没して、そこが安全な交易路でなくなることが、一番困ります。
本来は、民から税を徴収して、その代わりに安全を保障するのは「国」の仕事なのですが、月の民という「国」は、複数の遊牧民族の緩やかな集合体であり、政治の中央に位置する人々の指示が国の隅々にまで届くような制度は、存在していないのでした。
ましてや、遊牧民族は、
月の砂漠のかぐや姫 第67話
「あ、あそこ、何か動きませんでした? 大丈夫ですかね。大丈夫ですかね・・・・・・」
「おい、おい、お前が言うなよ。案内人はお前だろうが。大丈夫かどうかは、こっちの台詞だぜ?」
「あ、すみません、すみません。もちろん、大丈夫です、大丈夫ですとも。道は、ばっちり覚えていますし、何よりも僕がいる限り、盗賊に襲われる心配はありません。それは、保証いたします。でも・・・・・・。なにか、変な影が見えませんでし
月の砂漠のかぐや姫 第66話
ここで、物語は、時間を少し前に遡ります。
それは、羽磋たちが、一つ目のオアシスに近づいて歓声を上げたときから、一月ほど前の出来事でした。
彼らとは別の交易隊が、西から東へ、土光(ドコウ)村を目指して進んでいました。
この交易隊が辿っている交易路は、土光村と吐露(トロ)村を結んでいる交易路で、吐露村からさらに西側は、月の民とは別の遊牧民族、烏孫(ウソン)の勢力圏の中にまで、続いていました。
月の砂漠のかぐや姫 第51話
自分の周囲に何もなかったところから、両側が高い面で区切られた狭間の中に急に飛び込んだせいか、何かが頭をぐっと押さえてくるような感じが、羽磋にはしてきました。
ゴビの荒地と地平線で結びついていた空は、頭上と前方にしか見えなくなってしまいました。
馬を走らせながら左右の壁を見上げると、北側の岩壁はほとんどまっすぐに立っていて、人が隠れる場所は無いように思えましたし、壁の上で待ち伏せをしてその壁を
月の砂漠のかぐや姫 第50話
「空風(ソラカゼ)っていうのか、あのオオノスリ。しかし、上手く操っているよな、小苑(ショウエン)。いったいどうやってるんだ」
「へへっ、空風は、雛の時から俺が育てた相棒っすから。指笛の音で指示を伝えることが出来るんす。長音一声が来い、二声が進め、探せ。単音一声が太陽の方角、二声が太陽に向かって右、三声が反対、四声が左、などなどって寸法っす。もちろん俺の指笛にしか反応しないっすけど」
「ははぁ、だか