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報酬のかたち【エクストールイン高松@香川県】

 フリーランスになるまでは、どちらかというと「お金のために」仕事をしていたような気がする。稀に自ら仕事を作り出すこともあるけれど、会社員として与えられた仕事をこなすだけでも時間があっという間に過ぎてしまう。それによって毎月固定の給料が振り込まれていたし、ある意味で安心ではあった。しかし、仕事のモチベーションはその程度で、会社に対して特に忠誠心などもなく、業務内容にも思い入れなんてなかった。

 この考えは、独立してから大きく変わった。仕事をする相手を自分で選ぶようになってから、お金ではなく相手に喜んでもらうことがモチベーションになって、結果として経済的な余裕が生まれていったのだ。それに気がついてからは、「どうすれば稼げるか」ではなく「どうすれば信頼されるか」ばかりを意識するようになった。良好な人間関係を築くことが目的にあって、結果として直接的にしろ間接的にしろお金を稼ぐことができるという考え方だ。ある意味で利他主義ではあるけれど、不思議と自分自身にもメリットが生まれるのである。

 だからこそ、親しい人から仕事を頼まれそうになった時は僕から断る場合もある。利害関係が生まれると、それまでの良好な関係に歪みが生じる可能性があるためだ。そうならないために、親しい人から仕事を持ちかけられた時は、僕自身で引き受けるのではなく、友人や知人を紹介することに徹するようになった。
 人を紹介するだけでもその相手は喜んでくれるし、「今度ぜひ食事にでも」と連絡をいただくことも少なくない。でも、これでいいのだ。僕にとってはそのように喜んでもらえることが一番の報酬であるし、それに加えて僕のために食事の機会を設けていただけるだけでもありがたいのである。ただ、そのような時はたいてい数万円単位の食事をご馳走していただくことになるのだが。

 数ヶ月にも、そのようなことがあった。僕に仕事の相談をしてくださった方に別の方を紹介したところ、その2人の間で契約が成立したそうだ。僕は人を紹介しただけにすぎなかったが、両者から非常に感謝され、それぞれから食事に連れて行っていただいた。ご馳走をしてもらっているはずなのに、そこでは「いつもありがとう」と感謝をされるわけだ。不思議な話である。

 こういった体験を何度かしていると、お金の本当の価値というものがよくわからなくなってくる。僕は倹約家で、しばらく仕事をしなくとも生活レベルを落とさずに生きていけるほどには金融資産を持っているけれど、その上で実感したのは「お金を持つこと自体にあまり価値はない」ということだ。それよりも、僕にとっては食事に誘っていただける相手がいてくれるほうが心が豊かになる。皮肉な話だが、「お金自体に価値がない」と思えるようになったのは、大人になって、ある程度のお金を持つことができてからだった。自分へのご褒美としてハイブランドのバッグを買ったこともあったが、買うまでが一番気持ちが高まっていて、買ってからは冷めてしまった。それ以降、ブランドものは買わなくなった。
 このような考え方なので、お金のために生きているような人や、お金を持っていること自体をステータスだと感じている人、ブランドものに執着している人に対しては、どうも興味を持つことができないでいる。一緒にいてもつまらないのである。一方で、「誰かのために尽くした、ただの結果としてお金を持つことができた」という人のことを、僕は心底尊敬するし、魅力的だと思う。

 2022年10月19日(水)、僕は香川県高松市にいた。もちろん仕事のためである。アポイントを取った相手とは翌日に会う予定があったのだが、僕が高松に前乗りをすることを聞きつけると、それならということでディナーに招待してくださったのだった。その経営者は気前がよく、行きつけだというレストランでフレンチのコースをご馳走してくださったのだが、そこで話を聞いていると、まさに「他人のために尽くした結果としてビジネスに成功している方であることがわかった。たしかに、その物腰の柔らかい雰囲気からは、人柄の良さが伝わってくる。

 食事を終えて解散した僕は、すでにチェックインを済ませていたホテルに戻った。お世話になったのは「エクストールイン高松」である。全体的に手入れが行き届いていて清潔感があるだけでなく、接客がとても丁寧で気分がいい。おそらく社員教育が徹底されているのだろう。いわゆるビジネスホテルではあるが、そのサービスレベルは非常に高い。さらに、11階には宿泊者用の休憩ラウンジがあり、景色を眺めながらマッサージチェアを使い放題である。
 僕は部屋に荷物を置いて館内着に着替え、大浴場がある2階に向かった。そして脱衣所で準備を済ませ、いよいよ中に足を踏み入れた。

ーーシンプルで良いじゃないですか。

(公式サイト: https://kawaroku.co.jp/exta/bath/ )

 こちらも手入れが行き届いた空間が広がっており、大きなお風呂と小さな水風呂、そして奥にはサウナ室を確認できた。さっそく身を清めた僕は、お風呂で軽く体を温め、サウナ室へと向かったのだった。

ーーここもきれいなのか。普段からしっかり手入れをしているんだろう。

(公式サイト: https://kawaroku.co.jp/exta/bath/ )

 温度は96℃。メトス製のコンパクトなストーブによって熱せられた空間には、物理的に6人か7人ほどが座れる2段のベンチが設けられていた。湿度は比較的低く、先客は1名のみ。僕は空いている上段に腰をかけて静かに蒸され始めたのだが、変な息苦しさを全く感じることなく、ホテルのラウンジのような落ち着いたピアノのメロディが流れる中で、とても快適に過ごすことができた。そこで10分ほど経過すると、ようやく心臓の鼓動が激しくなり、全身から流れ出る汗を実感できたのだった。

ーーそろそろ出るか。

 僕は立ち上がり、サウナ室を出て掛け湯をすると、水風呂に肩まで浸かった。

ーーおお! ちょうど良い冷たさ……!

 体感で15から16℃といったところか。バイブラはなく、最大で2人程度が入れるくらいのコンパクトなサイズではあるが、幸いなことに混んでおらず、優雅に冷水を堪能することができた。浴場はサウナ室と違ってBGMは流れておらず、水の流れる音だけが聞こえる。とても心地よい。
 そこで30秒ほど身体を沈めた僕は、浴槽の縁の他のお客さんの邪魔にならないところに腰をかけて全身を脱力させ、大きく数回深呼吸をした。

ーーこれは穴場でしょう。高松出張の時は、再びここに来よう。

 このゆったりと流れる時間も、僕にとっては仕事の報酬なのだった。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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