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遠くて近い距離を知る【南青山 清水湯@表参道駅】

 今日は2月3日(水)。珍しく外出の予定ができた僕は、荷物をまとめて原宿駅へと向かった。いや、厳密には北参道駅に行かなければならなかったのだけれど、目的地の位置情報を確認したところ原宿駅からも徒歩で行ける距離だったので、それであれば自宅からのアクセスを考慮して、原宿駅で降りることにしたのだ。
 さて、今回なぜ外出する予定ができたのかというと、たまたまSNSを通じて知り合った経営者の方と意気投合して、その方のオフィスまでご挨拶に伺うことにしたからだ。実はその方とは2年以上前からお互いの存在を認識し合っていたものの、一度もお会いしたことはなかった。それが、今流行りの「Clubhouse」というコミュニケーションアプリを通じて初めて音声での会話をする機会が生まれて、とんとん拍子に話が進み、実際にお会いする約束を取り付けたのである。
 その方は、僕にとっては遠い存在だった。Twitterのフォロワー数は約1万人で、ツイートは何度もバズり、その業界を賑わせている有名人でもあったからだ。そんな方と気軽に連絡を取り合うことができる時代に生まれたからには、その機会を生かさない手はない。
 僕は少し緊張しながらも、それ以上に期待に胸を膨らませていた。そして、いよいよオフィスまで到着すると、その方は僕と目が合うなり声をかけてくれた。

「お〜! やっと会えたね!」

 実際にお会いしたその方は、僕の想像通りにとても気さくで明るく、幸せオーラが全開で、たまにいる「一緒にいるだけで自然と笑顔になれる人」の典型だった。
 それから時間はあっという間に過ぎ、小一時間が経過したところで、次の予定に向けて僕はその場を後にした。

「では、行きますか」

 次の予定とは、もちろんサウナである。外出の予定ができたら、当然その近辺にあるサウナに寄るに決まっているのだ。時刻は16時ちょっと前。時間帯としてはベストである。
 運動不足解消のために、僕はそこから徒歩で移動することにした。そして都会の街並みを眺めながら歩くこと約20分、いよいよ今日の舞台である「南青山 清水湯」に到着した。

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 清水湯は表参道駅から徒歩約2分の場所に位置し、100年以上の歴史がある老舗の銭湯なのだけれど、2009年にリニューアルされたそうで機能的にもデザイン的にもモダンな要素が取り入れられていることで知られていた。

 入り口に近づいてみると、そこには「お客様へのお願い」と書かれた注意事項が掲示されている。

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 もしもこの内容を守ったお客さんばかりなのであれば、きっと快適に過ごすことができるだろう。

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 僕はさっそく店内に入り、「26(風呂)」の下駄箱に靴を預けて奥に進むと、すぐ脇には券売機が設置されていた。タオルは持参していたので、ここで「サウナコース(入浴料込)」のチケットを1,020円で購入し、それを受付でロッカーキーと引き換えた。

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 休憩処には飲み物やアイスなどの自動販売機と、広々としたベンチが設置されている。入浴後にここで体を休めるのも良さそうだ。

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(TOKYOSENTO: https://tokyosento.com/archive/minato-ku/3009/ )

 そのまま脱衣所の中へと進むと、清潔感のある開放的な空間が広がっていた。さきほど受け取ったロッカーキーにはICチップが組み込まれているようで、指定されたロッカーにかざして解錠し、荷物をしまった。

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(OMOHARAREAL: https://omoharareal.com/navi/shop/detail/1899 )

 準備は万端だ。僕はタオルを片手に、いよいよ浴室への扉を開けた。

「おー、想像していたよりも広い!」

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(OMOHARAREAL: https://omoharareal.com/navi/shop/detail/1899 )

 軽く見回すと、ここには大きなお風呂が1つに水風呂が1つあることがわかったのだが、そこからさらに続く通路を抜けると「高濃度人工炭酸泉」と「シルク風呂」の2種類のお風呂があった。そして、このスペースに "ととのい椅子" も3脚用意されている。

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(レッツエンジョイ東京: https://www.enjoytokyo.jp/style/106132/ )

 この2つのお湯をのちほどいただいたが、特にシルク風呂はお湯が真っ白になるほど微細な泡が溶け込んでいて肌触りが良く、39℃前後とややぬる目の温度なので、心地よくリラックスしながら入浴することができた。

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(OMOHARAREAL: https://omoharareal.com/navi/shop/detail/1899 )

 そして、運がいいことに、ガラガラというほどではないけれど混雑している様子も見られない。グループ客もいないようで、常連と思われる個人客がほとんどだった。

 僕はまず身を清めて、大きな内湯で体を温めてから、さっそくサウナ室に向かった。このドアにも会話禁止を呼びかける注意書きが貼られているのだけれど、そもそもソロ客ばかりなので、浴場全体が静かで治安が良い。

「では、いただきます」

 僕はゆっくりとサウナ室の扉を開けた。

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(OMOHARAREAL: https://omoharareal.com/navi/shop/detail/1899 )

 「なかなか居心地が良さそうだ」

 ベンチは2段構成で、8人前後が座ることができるほどの広さがある。室内はやや明るく、おそらくはすぬま温泉と同じ型の遠赤外線ヒーターによって90℃程度の温度が保たれた、いわゆる「コンフォートサウナ」というタイプだ。
 先客は4人。僕は空いている上段に腰をかけて、テレビの音に耳を傾けながら、目を瞑ってじっくりと蒸されること約7分。次第に全身からは滝汗が流れ始め、僕の心臓の鼓動はかなり激しくなってきていた。

「そろそろだ……」

 サウナ室の小窓から水風呂の様子を確認すると、利用者はいないようだった。僕は立ち上がり、サウナ室を出て汗を流してから、すぐ脇にある水風呂へと肩まで沈み込んだ。

「うおぉー、キンキンだ!」

 水温は12℃を指しているが、13℃の水風呂をいただいたコスモプラザ赤羽よりも負担を感じないのは、こちらにはバイブラが無いからだろうか。
 大人が3人ゆったりと入れるほどの広さの冷水を贅沢に一人占めさせてもらうと、20秒ほど経過したところで徐々に羽衣を感じるようになり、心臓の鼓動も少しずつ落ち着いてきた。それからさらに30秒ほどが経過し、呼吸のリズムも整ってきたところで、僕はゆっくりと立ち上がった。そして、そのまま先ほど見つけた ”ととのい椅子” まで移動し、そこに腰をかけて大きく深呼吸をした。

「最高だ……」

 僕は全身を脱力させ、そのまま時間が止まったかのように、夢心地で癒しのひとときを堪能した。この独特の浮遊感がたまらない。思考は少しずつ薄れていき、頭の中が空っぽになっていく。すると、ある記憶が蘇ってきた。

ーーそういえば、僕は5年ほど前に、ここから徒歩1分ほどのところにあるジムに通っていたことがある。しかも、週5のペースで2年以上も通い続けていたのだ。にも関わらず、僕はこの清水湯の存在を把握していなかった。幸せというものは、その存在に気付かなかったり自分自身で見つけに行かなかったりするだけで、意外と近くにあるのかもしれない。待っているだけでは掴むことができないのだろう。

 結局、僕はそれからさらに2セットをいただいてから清水湯を後にした。外はすっかり暗くなっていて、火照った体に外気が沁みる。

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 そこから表参道駅に移動し、自宅まで電車で向かいながら、僕は今日の出来事を振り返っていた。

ーーあの経営者との距離を、僕はずっと誤解していたのかもしれない。

 それに気付いた時、僕は今日のお礼と合わせて再び連絡を取っていたのだった。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます