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コンセプトストーリー「嵐の夜の記憶」

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ある物語に沿った作品をまとめています。
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記事一覧

音楽「期待」

トナカイウサギ音楽室

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家で待つ子らに伝えてあげられる物語を探して
わたしたちはいつも日常を持ち歩いている

音楽「石の町の回廊」

トナカイウサギ音楽室

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その場所は遠く、鉄と石の国にありました。
そこに移り住んだわたしたちはいつしか固い石の地面を駆け回ることに慣れ、
かつてお気に入りだった靴は、その役目に耐え切れず壊れてしまいました。

音楽「一日の終わり」

トナカイウサギ音楽室

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道行き、家々を行き帰る町の人びととすれ違う、夕日がそれらの影を揺らす
共に交わし合う挨拶が誰しもの心を照らしている

音楽「船窓」

トナカイウサギ音楽室

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海はきっといくつもの音をその内にたたえている
夜の暗闇、広い海に浮かぶ船の上
そこに立つ孤独

知ることは少なく、日々

知ることは少なく、日々

海を見に行くことがありますか
まるで
今まで辿ってきた道を思い返すように
白と桃色が混じった空 反射する水面の色
隣に住む男の子はいつも学校の制服を着たまま出かけていた
道ばたで出会ってもあいさつなんてしないのだし
話しかける作法さえも分からない
だから
何か知りたいなんて思わないように すれ違う

ただ過ごしやすい気候が続きますね
そういえば
今晩、姉が卵を届けてくれると言う
わたしなどは とい

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期待

期待

今日も毎日と変わらない一日が過ぎていく
早起きの朝は跳ねる気持ちを持て余して
どうせ転ぶのでしょうと 期待とは真逆の言葉が口をこぼれる
古い教会の廊下の奥を光が跳ね回っている
ほこりがかった空気を反射する陽光
まるで 人の意思など届かない世界の朝もやのように

はらはら
はらはらと 懐かしい祖母の声が舞う

どこからか入り込んだ猫が迷っている
わたしは撫でてやることすらできず
その進む先を目で追っ

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両の手

両の手

夜に限って利き手が震え
手紙を書くことを邪魔する

だから今日も何も伝えられませんでした。

そうあなたに報告する為だけにあるわたしの口と
そこから発せられる言葉
利き手でないほうの手で何ができる
それぞれの手で床の木目に触れてみても
その感触に大した違いは無いというのに

その、不器用なほうの手であなたの手紙を数える
あまりにぎこちないその手つきに笑ってしまう
返事を書けないままでいる手紙を、

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秘密

秘密

秘密を知りたいと思っていた
どんなことでもいい
この世界が隠している本当のこと
自分には少しも関係のない何か
知る必要の無いことを知ることができたなら
その度に少しは大人になれるのだろうと夢想していた

鳥がささやく彼らだけの言葉
虫が這う葉の裏に刻まれた文字
路地裏を吹き抜ける風が運んでくる石の欠片
その欠片は、誰かが意味を持って砕いた、意味の無い一片でしかないのだろう

大人たちはいつも知らな

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火のように伝われ

火のように伝われ

火が燃えている
まるでそう感じるような
ただまばゆい夜明けの夢だった
寝床から這い出て耳をすますと
人々の声
ああ、声が……
ひとつひとつ聞き分けることなどできない
一人ひとりが何かを伝えているはずの声、声
きっと そのはじけるような音の群れが
わたしにあんな夢を見させたに違いない
人々が伝えようとする思いは混ざり合い火のように
いつものわたしの心に焦げ跡を残す
どうして人々の声は無関係な者にも気

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記憶、波の奥底の

記憶、波の奥底の

だんだんと思い出は暗さを増していくものだ
過去を思えば思うほど
織り重なった薄幕の奥へ歩み入るように
幾重もの波の底に沈みたゆたうように

光は
遠ざかる

ある夜、何かを告げる鐘の音が風の隙間から聞こえてきて
それが何だったのか知ることはなく夜は明けた
知らなくてもよかったことなんだよ。
と、友達は言うけれど
きみもただ何も知らなかっただけなのだろう

「知らなくてもよかったことなんだよ。
 知

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