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知ることは少なく、日々

海を見に行くことがありますか
まるで
今まで辿ってきた道を思い返すように
白と桃色が混じった空 反射する水面の色
隣に住む男の子はいつも学校の制服を着たまま出かけていた
道ばたで出会ってもあいさつなんてしないのだし
話しかける作法さえも分からない
だから
何か知りたいなんて思わないように すれ違う

ただ過ごしやすい気候が続きますね
そういえば
今晩、姉が卵を届けてくれると言う
わたしなどは といえば
通い慣れた道すがらに丘を見て
日の光を外れたところから風に吹かれているだけ
そんなとき、魔法のように悲しみが心を包む
知らぬ間に葉の落ちた木立
お気に入りの服のすそは風を受けて揺れている
男の子はどこへともなく去ったまま
海はまだ遠い・・・

古びた鉄塔
きしむ音が波間をめざして消えていく
灰色に曇った空はまぶしい
過ぎ去った風雨の名残りのような微風が少しだけ景色に色をつけていく

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