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映画「いつか君にもわかること」を観て

6月16日、「いつか君にもわかること」という映画を観た。原題は「Nowhere Special」。2023年のイタリア・ルーマニア・イギリス合作映画で、ウベルト・パゾリーニ監督の作品だ。

キャストは、ジョン役のジェームズ・ノートン、マイケル役のダニエル・ラモントなどである。

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あらすじは、
33歳のジョンは、窓拭き清掃員として働きながら、一人で4歳の息子マイケルを育ててきた。だがジョンは不治の病を患っており、余命いくばくもなかった。彼はマイケルと養子縁組してくれる家族を探そうと多くの家族候補と面会するが、人生最大の決断となるだけに次々と迷いが生じる。献身的なソーシャルワーカーと出会い自分の不甲斐なさを思い知りつつも、マイケルのために最良な未来を選ぼうと奔走する。と、いったところから始まる内容。

で、観終わっての感想。

父親の愛が、最後の最後に推薦を決壊させる

もう、「愛」という言葉しか浮かんでこない。
父親の息子に対する愛。「人を愛するということは、こういうことなのだ」と、あらためて感じた。父親の心理が、鑑賞し続けてゆくと手に取るようにわかる。幼い我が子を、残して去らなければならない「無念」。心中は想像することさへ難しい。ついに死が間近であると悟った後、息子あての手紙を箱に入れる。その手紙の一つは「運転免許を取ったときに読んでほしい」といったような、息子の成長場面と、その時の手紙をいくつも箱に入れる。
父親の窓ふき清掃の道具。車の中で見つかった母親の手袋には、生まれたばかりのマイケルと母が一緒に写った写真を入れる。
もう、ここまでくると、ボクの心の中から感情が飛び出してきて、涙が目からあふれ出してきた。もう、そのあと、止めることができなかった。

淡々としたストーリーが、逆に「死」というものを考えさせる

淡々としたストーリーで、派手さはない。
だからこそ、胸に響く。
そう、死が近づこうと、日々の生活は続くのだ。
でも、確実に命の時間は減りつつある。
マイケルとの別れは、別れだけでなく、里親を捜さなければならない。
誰でも良いわけではない。
でも、巡り会えない。そのジレンマが、苦しみとして伝わってくる。
「死」とは、そんなものなのかもしれない。誰もが、必ず迎える死。
でも、この父子のような、パターンは通常ではほとんどない。
でも、目の前で、実際に起きている。

決して満足ではないが、父が最後に選んだ里親

父親が最後に選んだのは、ある女性だった。
ストーリーの運びからみると、ありえない選択である。
でも、複数の里親にあった中では「まし」な存在であったと思う。
決して、満足して託すわけでないのは、わかる。
でも、時間はない。
父の心の中は「里親の女性」が、息子をいつか我が子として愛してくれることにかけたのだと思う。
父を見上げる息子。その表情にも、不安ながら覚悟が見えるような気がした。

最後に余談ではあるが、息子のマイケルの可愛らしさが、何とも言えない。
可愛すぎて、それが余計に、感情移入に拍車をかける映画であった。


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