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映画「たかが世界の終わり」を観て

3月3日、「たかが世界の終わり」という映画を観た。
原題は「Juste la fin du monde」。2016年のカナダ・フランス映画で、グザヴィエ・ドラン監督の作品だ。

キャストは、ルイ役のギャスパー・ウリエル、マルティーヌナタリー・バイ、アントワーヌ役のヴァンサン・カッセル、カトリーヌ役のマリオン・コティヤール、シュザンヌレア・セドゥなどである。

あらすじは、

「どこか」とだけ特定された場所で、34歳のゲイの劇作家で末期症状に対処しているルイは、12年ぶりに家族と再会するため故郷への短いフライトに乗る。妹シュザンヌには彼の思い出がほとんどない。家に到着すると、母マルティーヌは、ルイが兄アントワーヌの妻であるカトリーヌに一度も会ったことがないことに気づき驚く。ルイが彼らの結婚式に出席しなかったためである。カトリーヌはルイに、彼女とアントワーヌの子供について話し始めるが、なぜ息子の一人をルイとアントワーヌの父にちなみルイと命名したかの説明で、落ち着かない様子になり言葉に詰まってしまう。アントワーヌは、ルイは子供の話になど興味がないと言い放ち、緊張感を生む。ルイは以前の家を見に行きたいと懐かしがるが、廃屋とみなしている他の家族は戸惑う。その後彼は電話で会話し、どう反応されるかはわからないが、死が差し迫っていることを家族に伝えたら出発する予定だと話す。
ルイとカトリーヌは廊下でぎこちなく出会い、緊張した会話についてお互いに謝罪する。ルイは、アントワーヌはルイに関するネガティブな意見を彼女に与えたかったのだろうと述べる。カトリーヌは、アントワーヌは実際ほとんどルイのことを話さず、そしてルイが彼らの人生にほぼ全く興味がないと感じていると答える。彼女は公然とこの考えに一理あるのではと思っている。彼女はルイにアントワーヌの仕事を知っているか質問し、近所で工具を作っていることを説明する。マルティーヌもまた、ルイに家族の責任を負うよう諭し、彼の地位、成功や勇気がその権威にふさわしいのだと言う。彼女は、手紙を送っていた住所から彼が引っ越したこと、彼が現在どこに住んでいるか知らされていなかったことを知る。
食事の間、ルイはもっと頻繁に帰省すると約束し、シュザンヌにいつでも彼に会いに来て良いと伝える。しかし、ルイが出発しようとしていることがすぐに明らかになる。これに乗じ、アントワーヌは無理やり彼を家から追い出そうとする。家族はアントワーヌの蛮行に怒鳴り返す。アントワーヌは応酬し、家族の変わり者として扱われることにはうんざりだと言う。しばらくの後、ルイは家族に彼の予後について話すことなく出発する。

出典:Wikipedia

といった内容。

で、観終わっての感想。

常に暗く進行する映画

とにかく、「暗い」というのが、この映画の感想である。
家の中の映像、それも薄暗い映像が多い。
この映画自体の内容を考えると、この映像の暗さは、あっているのかもしれない。
たまに外の映像も出てくるが、外に行こうと、その映像が明るくなろうと、結局「話の展開が暗い方向へ行く」のである。
心が解放されないような、モヤモヤ感が続く。

アントワーヌがこの映画の鍵を握っている

この映画の主人公は、ルイであることは間違いないだろう。
ただ、映画を観終わると、実は兄のアントワーヌがこの映画のカギを握っているのではないかと思えた。
アントワーヌは、おそらくルイがいないこの家で、暴力をふるう場面が頻繁にあるのだろう。その証拠が、映画の最後の方にある。
ルイに向けたアントワーヌの拳が、明らかに今の傷ではないものが見える。
この映画の暗さは、ルイではない。
実は、アントワーヌが醸し出す暗さではないだろうか。

崩壊状態の家族に、ルイは自分の話さえすることができない

そう。この家は、ルイが最期に訪ねたかったかつての朽ちた家より、もしかしたら崩壊しているのかもしれない。アントワーヌの奇行が映画に進むにつれて徐々に出てくる。それが一番現れたのが、ルイと2人での車の中である。
ルイが世間話をしようとすると、それを遮り聞こうともしない。むしろ、ルイの言葉が自分に対する批判に聞こえてしまう。明らかに変である。
そして、ルイが食事中に出発するようなことを発しただけで、彼は今すぐ空港まで行こうとする。食事中にもかかわらずである。
その時の家族の表情が、おびえている。また始まるのか・・・と。

家族全体が病んでいる

そう、ルイの余命宣言どころではない。
この家自体が、もう余命が短いのではないだろうか。
母も妹も嫁も、皆病んでる。
この現状から抜け出せないのだ。
そしていずれは、崩壊することも知っているのかもしれない。
だから、結局話さえできなかった「ルイがこの世からいなくなる事実」は、この家族にとって、どうでもいいことなのかもしれない。

なぜならば、この家族自身が病んでおり、
この家族に終わりが近いことを、感じているからである。

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