見出し画像

なつのうみ


同じ場所を見ていても
感じるものは人それぞれ

現実の風景は
ときに心の中の理想を見せる

あの時
語り合った言葉はぜんぶ
目も開けられないほど眩しくて
希望が波にのって
次々と押し寄せてくるようだった


いまでは
眩しかった景色がはっきり見える
でも
輝きも希望もどこかへ行ってしまった

「夏の海を描こう」と言った私に
ついてきてくれた日は心が踊った
綺麗でどこか悲しい砂浜を見ながら
「今度はゴミ袋を持って行こう」
と話したりした

けれど「今度」はもうみんな
ついてきてくれないかもしれない

みんな
新しい希望を見つけたから
それは寂しいことではなくて
むしろ嬉しいことなんだけど


希望の波が去ったあと
わりとすぐに現実はやってきて

時間は少しずつ
大きく
すべてを変えていった


それでも
この風景を見たとき


潮がひいて
いつもは見えない岩が見えたとき


熱い潮風の帯に巻かれて
そのなかに一筋だけ
秋の冷たさを感じたとき

砂浜にひとつのゴミを見つけたとき

かならず、思い出す

この場所だけは
いつまでも
楽しい日々を覚えていて

それぞれちがう日々を送る私たちが
いつでも
すぐに
あの日に帰ることができるように

どうか
これからもずっと
変わらずに


この記事が参加している募集

この街がすき

応援したいと思ってくれたらうれしいです! これからも楽しく記事を書いていきます☆