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【父を避けていた私】韋応物の漢詩で気づいた、父が娘を想う気持ち。
父に入籍の報告をしていない、私。
私の両親は離婚しています。
両親が離婚に至るまでの実家での生活が、
私にとってはすごく辛いものでした。
思い出すと今でも苦しいので、
どのように辛かったのか詳細は書けませんが
このように表現してみます。
「家」というのは、心身を休める場所。
「家」というのは、安心で、安全な場所。
私の「家」での生活は、この真逆でした。
昨年私が入籍したとき、
母には文面で伝えましたが
父には一切報告していません。
今回紹介する漢詩は、
嫁いでいく娘を想う父の詩なのですが、
もし父に入籍の報告をしていたら、
同じような気持ちで私を想ってくれたのだろうかと
考えてしまう詩でした。
報告は、今からでも遅くないのでしょうか?
何も言わずに入籍した私を、父は責めるでしょうか?
様々な感情を抱きながら、
「送杨氏女」を解説していきます。
韋応物:楊氏の女を送る
送杨氏女
韦应物
永日方戚戚,出门复悠悠。
女子今有行,大江溯轻舟。
尔辈况无恃,抚念益慈柔。
幼为长所育,两别泣不休。
对此结中肠,义往难复留。
自小阙内训,事姑贻我忧。
赖兹托令门,仁恤庶无尤。
贫俭诚所尚,资从岂待周。
孝恭遵妇道,容止顺其猷。
别离在今晨,见尔当何秋。
居闲始自遣,临感忽难收。
归来视幼女,零泪缘缨流。
【書き下し文】
永日 方に戚戚
出で行くこと復悠悠
女子今行く有り
大江 軽舟 泝る
爾が輩 恃無きに苦しみ
撫念 慈柔を益す
幼は長に育てらる
両別泣いて休まず
此れに対して中腸結ぶ
義として往くこと復留め難し
小より内訓を闕く
姑に事うること我れに憂いを貽《のこ》す
玆れに頼りて令門に託す
仁卹庶わくは尤無からん
貧倹 誠に尚ぶ所
資従 豈周きを待たん
考恭 婦道に遵い
容止 其の猷に順う
別離 今晨に在り
爾を見るは当に何れの秋なるべき
閒に居りて始めて自ら遣る
感に臨みて忽ち収め難し
帰来 幼女を視れば
零涙 纓に縁りて流る
【日本語訳】
終日に憂いは尽きず
嫁ぎゆく道は遠い
お前は今家を出て
大江を船でさかのぼる
早く母を失った不幸なお前たちを
憐れんで私はことさら可愛がった
小さい妹は姉のお前に育てられたが
その二人が別れようとして泣いてやめぬ
それを見ていると私は胸がはりさける
とは言ってもお前を引き留めるわけにはゆかぬ
小さい時から母の教えも受け得ずに
お姑に仕えることができるかどうか
それが私は心配だ
どうぞ先方の皆様にお願いして
仁卹を以て幸い尤が無いように
貧しい中に倹約ひとすじ
嫁入り道具とてどうして具わろう
舅姑に孝 夫に敬 女の道をよく守り
立ち居ふるまい 女の礼にはずれまい
今朝はいよいよもう別れだ
この次会うのはいつの日か
平素は気にもかけなかったのに
この別れの悲しみにあっては
どうにも心が圧えきれぬ
帰って来て幼い妹を見れば
涙は冠のひもをつたって落ちる
【解説】
嫁いでゆく娘を送る父の心をうたった詩。
早くに母を亡くした姉妹の、姉の方が嫁いでいく。
父とともに苦労してきた娘であり、父の慈愛も人一倍深かった。
しかし母がいないので、家庭のしつけも満足にはできていないだろう。
嫁に行って、よく舅姑に仕えられるだろうか。
貧しくて嫁入り道具も充分には揃えてやれなかった。
どうぞ先方の家の方々、娘を憐れんで、行き届かぬところがあっても許してほしい。
また娘は夫の家に行ったら、舅姑に孝をつくし、夫を敬って、立ち居ふるまいによく気をつけねばならぬ。
父はいつでも遠くから見ている。
娘を送って帰ってくると、一人残された妹が淋しそうに遊んでいる。
それを見て、私は思わず涙がこぼれた。
家族とは何か?
私は何故だか最近、よく見る夢があります。
それは父と母が離婚していない世界線で、
なおかつ私が未婚の実家暮らしをしている夢です。
私はまだ両親と仲良く付き合いたいと思っているのでしょうか。
もちろん、疎遠のままで良いとは思っていません。
でも実家にいたときの自分を思い出すと、
心が黒ずんでいく感覚があるのです。
車で実家近くを通った時ですら、
呼吸が整わなくなります。
ですが「送杨氏女」の詩を詠んでいて、
やはり家族は切っても切れない存在だと感じました。
少しずつでも、家族についての考え方を
変えていこうと思います。
参考書籍 中华书局经典教育研究中心:唐诗三百首诵读本(插图版) (Chinese Edition)
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