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「君は狂人」

夜の窓の外は黒煙、僅かに灯る暖色は、
季節を違えた宙をたゆたう羽虫の鱗粉、
階層下に伸びる十字路、使い古しの家具と鉄、

再び刻む時計は夜を、軋んで告げる鐘は沈痛、
毛羽立つ紙のテーブルクロス、焦げちまったら気分が悪い、
印刷された一語一句はどこかの古い神の方便、

眠る前を彩った、
アルファベットをaから象るグラスは19
床の板を転がってたり、逆さに埃をかぶっていたり、
そいつを使った記憶ごと、ひとつひとつ床に投げつけ、
散らばる様はやり切れなくも、なぜか背筋にひりつく快楽、
本能には抗えない、最期の地点に及んでさえも、
攻撃、破壊を誘う衝動、

aから始まる出来事すべてを瞼に描く、
19で足りるわけもなく、それでもしないよりはいい、
記憶は抹殺できずに残光、余熱と響く破壊音、跳ねる破片が頬を裂く、
カーペットには赤が数滴、移り住んだ土地の地図に滲んで見えた、

彼にはもう遺したいものもない、
窓に映るその顔は、子供のころに恐れた狂人、
消せずに居座るその者にしか、狂人にしか映らなかった、
鏡のなかの、君は最期の最期になって、
夜に恐れた悪魔となった、

artwork and words by billy.

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