短編小説「国境線上の蟻」#14
捨てられた君は路上で呼吸を続けていた。天井の開いたダンボールから、見上げる空。雨が鳴り始めて、君は額に、頬に、唇に、それを受けた。生まれて間もない、作りたての君の白い肌を、埃や土を混ざらせた春の細く濁った雨が打つ。君はその柔らかく、やわで、小さな手のひらにそれを受けた。手首を返す。その手のひらから垂れた灰色の数滴を飲み込んだ。
指の隙間から見た高み。仰ぎ見た空。そこには君を狙う野鳥が周回していた。地上から見上げた景色、その青。初めての記憶だった。君の原始の記憶は雨の空だっ