(F48) 新型コロナで勃発した中国IT市場の異変(下)-1 by 葉展旗©財新週刊 (2020.3.27)より抜粋加筆しました。
⑴ 中国IT(情報通信)企業数社は状況を見守った末、数日をかけて1つの結論にたり着いた
「コスト度外視で人員や設備に予算をつぎ込むことだ」
新型コロナウイルスの流行に伴って急増したトラフィックをさばくため、クラウド内で運用するサーバーを以下に増やした。
①テンセント:WeChat Work用に10万台
②アリババ集団:DingTalk用に10万台以上
ネット企業は進化のスピード感が問われます。
DingTalkやテンセントミーティング、WeChat Work、飛書といった競合製品は毎週のバージョンアップを欠かさず、場合によっては数日ごとに一度更新しています。
⑵ 大手がしのぎを削る中で、いち早くサービスを展開したのはDingTalkでした
アリババは、
法人市場をにらんで失敗に終わったSNS「来往」の開発チームが手掛けたDingTalkを2015年1月に発表しました。
DingTalkは賢明な選択をしたと言えます。
アリババが得意とするECサイトとの連携を重視したから。
サービス開始1年目に獲得した法人ユーザーは100万社を超え、競合他社を一歩リードしました。
「ファーストステップとして店舗を経営する顧客をつかむ。
セカンドステップはサプライチェーンを攻める。
3つ目に物流だ。
そうすると最後には必ず消費者に近づく」。
DingTalkのユーザーの多くは零細企業であり、
それが後発の競合他社を寄せ付けない強みとなりました。
2020年1月に入ってすぐ、
DingTalkの1日当たりのアクティブユーザー数は、
3000万の大台に乗りました(WeChat Workの約5倍)。
過去5年間、DingTalkはほぼ3週間に一度のアップデートを欠かさず続けてきました。
法人向けサービスは組織が相手です。
DingTalkの白恵源副総裁は以下に指摘します。
「顧客企業は社運を懸けている」
だからこそ以下が問われます。
①より高い安定性
②改善のスピード感
⑶ アリババが抜け出したわけ
DingTalkにとって、コロナショックで遠隔授業の需要が急増したのは偶然でした。
だが重要なのは、それに備える努力を惜しまなかったこと。
感染が爆発し、DingTalkは顧客の需要はさまざまな業種に広がっているが、「その中でも今回、教育分野は突き抜けた存在だった」(白恵源)
DingTalkの教育分野における躍進は、
これまでに積み上げた客層があったから。
幼稚園から高校まで1万校以上や、数々の大学がDingTalkを利用していました。
DingTalkは以下の支援ツールを提供してきました。
①カリキュラムの管理
②学校の運営
③学校と保護者間の情報共有
④生徒の評価
中国大手IT企業の躍進は、
普段からの努力の上に時代が追いついた格好です。