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ニューヨーク金融市場

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2020年4月の記事一覧

トルコリラのスワップポイントはなぜ下落しているのか。外貨準備が底を尽きつつある?

トルコリラのスワップポイントはなぜ下落しているのか。外貨準備が底を尽きつつある?

外貨準備が尽きつつある?
3月のグローバルなリスクオフの中、トルコでは中央銀行が通貨安防衛のため外貨売り介入を行ってきた。

元々、トルコの外貨準備は他の新興国と比べて少なかったが、いよいよトルコ中銀が保有する外貨準備が底を尽きつつあるという観測が広がっている。

フィナンシャルタイムズによるとトルコ中銀が保有する外貨準備(Net foreign assets)が大幅に減少。その中からスワップを除

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原油ETFがまた招いた混乱。米国ではトランプの支持低下が目立つ

原油ETFがまた招いた混乱。米国ではトランプの支持低下が目立つ

原油安の原因は"また"ETFのUSOだった
本日も原油が大幅安。初めは先行きの需要懸念(=景気減速)が高まっているのかと思ったが、その後、このブログでも何度か取り上げている米大手原油ETFのUSOが再び限月交代を行なっているということが判明した。

今回の報告書によると、本日から4/30までに先物の限月ロールを行う模様。
元々は直近限月(2020年6月)を100%保有する形式のETFであったが、そ

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"Sell in May"アノマリーを検証してみる

"Sell in May"アノマリーを検証してみる

"Sell in May"という言葉は多くの人が聞いたことがあると思う。
しかし、多くの人が"Sell in May"には続きがあることを知らないと思う(私もつい最近まで知らなかった)。

この言葉には続きがあり、"Sell in May and go away, and come on back on St. Leger's Day."と続くらしい。

これは「ロンドンの暑い夏が来る前に株を売っ

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全ての限月で下落した原油価格

全ての限月で下落した原油価格

全ての限月で下落した原油価格
昨日は主に直近限月(5月受渡)がマイナス価格へと下落し、話題になったが、本日は6月限以降の先物も下落しており、カーブ全体に売り圧力が見られている。(5月限は本日が最終取引日)

最大手の石油タンク運営会社であるロイヤル・ヴァパックのCEOが「石油を貯蔵するキャパシティーはほぼ完全に売り切れた」と述べるなど、そう簡単には保管場所の問題が解決されないとの思惑も台頭している

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なぜ"原油の大暴落"に市場は反応しなかったのか

なぜ"原油の大暴落"に市場は反応しなかったのか

WTI先物は史上初となるマイナス価格まで大暴落。
しかし、より正確に言うのであれば、「5月限の原油先物が大暴落」して、「限月間スプレッドが拡大した」というのが正しい表現だろう。

なぜ、限月間スプレッドが拡大してきたのかは前回、記事にしているので参考にしていただければと思う。

前回の記事で書いた理由は3月以降に起きた「中期的な理由」であるが、本日はそれに「短期的な理由」が加わり、5月限の原油価格

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来週の火曜の原油に注意!原油の限月間スプレッドについて

来週の火曜の原油に注意!原油の限月間スプレッドについて

3月のOPECが仲違いに終わった後、急速に広がった原油先物の限月間スプレッドが話題になっている。

マーケットでは、"原油価格"というと通常は"期近の"原油先物の価格を示すが、これは今だと5月受渡のもので、足元では1バレル$20を下回る価格で推移している。

しかし、これに次の限月(6月受渡)を重ねてみると実は見え方がだいぶ変わって来るのだ。

上のグラフは青が先ほどと同じ期近の原油先物の価格、赤

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悲惨な経済データと企業決算が続く・・・

悲惨な経済データと企業決算が続く・・・

昨日、S&P500が2850にタッチし、短期筋のショートは大部分がカバーさせられた印象。一方で、機関投資家は資産の復元をできていないところが多く、3月のようなスピード感を伴う下落はないと予想している。
本日のNY時間も下げ始めたら早いかと思いきや、意外と下げ渋った印象で、米株は3月の底から30%上昇しているが、ロングは溜まって来なかったということだろう。

金融機関の決算は悲惨なものが多いが、貸倒

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コロナの影響を確認する米企業決算が始まった

コロナの影響を確認する米企業決算が始まった

今日から本格的に米企業の決算発表(1-3月期)が始まっている。
米企業の決算は金融機関から始まるが、本日はJPモルガンやウェルズファーゴなどが決算を発表している。

本日発表された企業決算

<金融>
JPモルガン 売上× EPS× 総合× 株価▲2.74%
売上は$29.0blnで予想$29.5blnに届かず($bln=10億ドル)。EPSも$0.78と予想$2.14以下。利益は前年比▲69%と

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金利上昇と金価格の上昇が目立ったNY市場。

金利上昇と金価格の上昇が目立ったNY市場。

NYは先週木曜が半ドン(債券市場)、金曜がイースター休暇であったため、3.5日振りに市場参加者が戻って来たが、朝方は米金利が売られてスタート。

要因は二つあると思われ、一つは先週引け際に発表された、FEDの米債購入減額の話($50bln/day→$30bln/day)。※$bln=10億ドル

個人的には$40bln程度への減額だと思っていたため、ややサプライズだったが、マーケットはロングウィー

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FEDがジャンク債購入を発表!

FEDがジャンク債購入を発表!

ニューヨークは債券市場が半ドン、明日から欧米はイースター休暇というスケジュールながら、本日は多くのニュースが交錯した一日。

まず、市場を驚かせたのはFEDの融資支援策の詳細で、簡単にまとめると以下のような内容が打ち出されている。

a) 小企業向けのPPP(給与保証プログラム)
b) 地方債の購入($500bln)
c) 中小企業向け融資($600bln)
d) [重要] ジャンク債を含む社債購

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「そうだ!仕事をやめよう!」モラルハザードが起きる米国労働市場

「そうだ!仕事をやめよう!」モラルハザードが起きる米国労働市場

私の話ではありません。
今日は米国の労働市場で、今後数カ月以内に起こるであろうモラルハザードについて書きたいと思う。

今、米国の雇用情勢を見る上で最も適しているのは、毎週発表される新規失業保険申請件数だが、足元急激に悪化している。

チャートのスケールがあまりに違い過ぎて、間違いではないかと思ってしまうが、間違いではない。
コロナウイルスのショックでロックダウンが始まるまでは282千件/週程度が

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COVID19 NYの現状と私が感じること

COVID19 NYの現状と私が感じること

改めてこのコロナウイルスについて振り返った時に、一番最初に違和感を感じたのは1月21日のニュースを見た時だった。

"北朝鮮が1月22日から中国との国境を封鎖する"

この記事を初めて見る人もいるかもしれないので、簡単に自己紹介をすると、私はニューヨークでマクロ戦略の投資を行なっている人間だ。

マクロ投資は国際政治や経済、地政学リスクなどをあらゆる観点から分析し、資産配分を決定する投資戦略の一種

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最悪のNFPとなった3月。FEDのQE減額はテーパリングではない。

最悪のNFPとなった3月。FEDのQE減額はテーパリングではない。

米雇用統計は▲71.3万人、失業率も3.8%から4.4%へとジャンプ。産業別では、特にレジャーが▲45.9万人と酷い。

マーケットの反応は指標発表直後は穏やかだったが、現物株がオープンしてしばらくすると、株・金利・EM通貨が軒並みリスクオフ。

週末リスク(東京ロックダウンetc..)が意識されただけでなく、経済指標とリスク資産がリンクし始めたと考えている。(そのように解釈している人は少数だが)

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全ての国が「金融緩和と財政出動」を行なった次の世界にあるもの

全ての国が「金融緩和と財政出動」を行なった次の世界にあるもの

今回のコロナウイルスをきっかけに全世界がほぼ同時に大規模な金融緩和と財政出動を行なっている。

この大規模緩和と大規模な財政出動が「全世界同時に」起きている世界で、資産を守るためには、どうすることがベストなのだろうか?

米国では失業者への給付金を$600/週にしたり、欧州でも従業員を解雇させないよう政府が補助する財政案が出ている。

日本の「1世帯に二枚の布マスク」はタチの悪いエープリルフールだ

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