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"Sell in May"アノマリーを検証してみる

"Sell in May"という言葉は多くの人が聞いたことがあると思う。
しかし、多くの人が"Sell in May"には続きがあることを知らないと思う(私もつい最近まで知らなかった)。

この言葉には続きがあり、"Sell in May and go away, and come on back on St. Leger's Day."と続くらしい。

これは「ロンドンの暑い夏が来る前に株を売っぱらって、夏は避暑地で過ごして、9月中旬の競馬(St. Leger's Day)の前に帰ってこよう」という、昔の銀行家の慣習を示していると言われている。

なので、本来は9月中旬に株を買って、5月に売って、6月から8月はお休みしようという意味で、5月に株が下がるという意味は無いようである。

とはいえ、多くの人が"Sell in May = リスクオフが来る"と思っていることは確かなので、実際にそういったアノマリーはあるのかどうかを為替と株について調べてみた。

まずは、為替から。
データはブルームバーグから2000年以降のものを取得して作成している。

ドルインデックス(DXY)は上の表のような結果になった。
5月は平均で+0.66%上昇しており、勝率は65%と高め。ややアノマリーがありそうである。

ではドルインデックスの構成要素として最も大きい、ユーロドルはどうだろうか。

ユーロは平均で0.71%の下落となっており、上昇したのは僅かに35%。
65%は下落しており、DXYの上昇をほぼ説明できている。
ではドル円はどうだろうか。

ドル円は平均で0.14%の下落となっており、上昇は40%、下落は60%となっている。
以上のことから、DXY, EUR/USD, USD/JPYを合わせて考えると、5月はドルが上昇しやすいが、ドル高はユーロが主導しており、ドル円は下落しやすいと言えるだろう。

では、本題の株について見ていきたい。
まずは日経平均から。

日経平均は平均で0.99%の下落となっている。
しかし、勝率は50%とイーブンであり、アノマリーが存在するとは言えない。
では米株はどうだろうか。

米株を見ると平均でプラス0.05%の上昇、勝率は65%となっている。
65%という数字に、アノマリーがあると期待したくなるが、それでは"上昇する"アノマリーになってしまう。
どうやら"5月に下落する"という意味の"Sell in May"アノマリーは全くなさそうである。

さて、こういった類のアノマリーはトレーダーの間でも時々、話題になったりする。
実際に細かいアノマリーをデータ解析して、複雑なアルゴリズムトレードを行うトレーダーも存在する。(殆どの場合、パフォーマンスが悪く、気付くといなくなっているが)

記事を書いておきながら言うのも何だが、アノマリーの分析はデータの母数が豊富でないと統計的に意味のある分析を行うことができない。

今回は20年分の分析を行っているが、20というデータ数は統計的に意味のある分析を行うにはあまりに少ないし、例え50年分のデータを調べても十分とは言えない。

その点にご留意いただいた上で、トレードアイデアではなく、読み物程度に参考にしていただければと思う。

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