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べてるの家のオンラインマガジン「ホップステップだうん!」 Vol.290



・なつひさお  江連麻紀


「最近ポップコーンみたいに爆発するの」と、べてるメンバーのMさんから電話がかかってきました。

べてるでは、どうゆう時に調子を崩しやすいかを研究した結果として発表された標語のようなものがあります。
頭文字をとって「なつひさお」と呼ばれています。

な:なやみがある
つ:疲れている
ひ:暇である
さ:さみしい
お:お腹が空いている/お金がない/お薬飲んでいない、あっていない

上記の当てはまるものが多いほど、調子を崩しやすいことがわかってきました。なつひさおチェックをしてそれぞれの方法で自分助けを研究しているべてるメンバーもいます。

Mさんはなつひさおをポイントで計算しており、9ポイント溜まると爆発しているようでした。

「もうやんなっちゃうー」と、自分の爆発にほとほと疲れていましたが「さ:さみしい」の助け方として私に電話をかけてきていました。

春は変化も大きく、私も疲れているのでなつひさおチェックしていこうと思います。
浦河はまだ寒い日も多く桜も蕾のままのようですが、先日旅行で行った三重県のお花の写真です。

・文/写真:江連麻紀


●新刊「弱さの情報公開」

2023年10月発売の最新書籍です。
2020年に発売しご好評をいただきました「弱さの研究」の続編。
不寛容な社会での孤立と孤独「つながり」を考える。

一部では、カーリング日本代表の吉田知那美選手とべてるの家の人や
向谷地生良氏との「強さと弱さ」についての対談。

二部では人と人の「つながり」を各章で考察、依存症、認知症の孤独について、本当の「つながる」ことの意味を考える。

<目次>
まえがき―「弱さの情報公開」の源流 
一部 弱さの情報公開
一章 弱さの情報公開 
二章 弱さを認める 
三章 行き当たりバッチリ 
二部 つながる
四章 わたしが「ダメ。ゼッタイ。」ではダメだと思う理由 
質疑応答 
五章 「認知症と繋がる」ということ 
六章 あいだは「愛だ」 
七章 地域と人と苦労で繋がって(向谷地生良氏最終講義) 

●大反響増刷中!
『子ども当事者研究 わたしの心の街にはおこるちゃんがいる』

本体価格:990円+税、出版社:コトノネ生活



・「北のバラバラな日々」 (43) 笹渕乃梨

春休み、わたしたち母娘は北海道を飛び出して関東へ小さな旅行をしてきました。上野の国立科学博物館や、ひそかに応援していた多摩動物公園のコアラのこまちちゃんとの念願の対面、どんどん近づく富士山を拝みながら御殿場、箱根、熱海、湯河原、湘南エリアをぐるり。じつに充実した(多動な)旅でした。

最終日は少しだけ小田原を歩きました。道沿いにはいくつも干物屋の看板があって、山に入れば道端にごろごろとみかん的な何かが転がっています。顔を上げると細い道の先は柑橘農園だらけで、墓地で供えてあるお花も柑橘の枝。うしろを振り返れば新幹線も走ってる。生まれも育ちも北海道のわたしはこんな景色はじめてでした。はっきり言って感動。柑橘の無人販売に立ち寄ると、見たことも聞いたこともない湘南ゴールドという品種の柑橘が置いて(吊り下げられて)ありました。買って食べてみるとびっくりするほどおいしかったです。味も香りもわたしの好みで、汁を滴らせながらいっぺんに4個も食べたのでした。「デパートでは1個500円くらいで売ってるんだよ」あとから出会った柑橘農家のお兄さんがそう教えてくれてますます美味しい気がしました。実は高級品だと知ったことでわたしの中の湘南ゴールドの魅力が3割増しになったのでした。デパートで1個500円と知らなくてもすごく美味しく感じたっていうのに。

自分のさもしさに気付かされてちょっとがっかりしかけたけれど、お金だって印刷した紙に価値があると信じて回ってるんだし、人はそうやって誰かが決めた価値を信じて乗っかっちゃいがちな生き物なのだ、仕方ないんだ。などどうでもいいことを考えて「まぁいいか」と考えるのをやめたのでした。

とにかく湘南ゴールドはおいしかったです。

それにしても、今回わたしたちは東京の街は上野くらいしか歩かなかったのですが、人の密度の高さと人の歩く速さは驚くばかりでした。自分のペースでのんびり勝手にやってると知らない人にまで迷惑がかかりそうな心配がやってきて、心がキュッと硬く縮こまるのを感じて異常に疲れました。都会にいながら心を麻痺させずにマイペースを維持して平和な気持ちで暮らすというのは、実はものすごい修行なのでは?と、また役に立たなそうなことを考えたりしたのでした。でもこれはストレンジャー視点で歩いたせいかもしれません。

小田原で柑橘を買ってしまったせいで帰りの荷物は重量オーバー。追加料金を払ってのフライトとなったのでした。馴染みのない場所でいろんなことを感じられて面白かったです。最近あんまり手を繋ぎたがらなくなった娘といつまで一緒に旅ができるかわからないけど、また一緒にどこかおもしろい景色を見つけに行きたいです。ははは。


笹渕乃梨(ささき・のり) 自己病名は『境界線ぐちゃぐちゃ症候群サトラレ型変化球言葉タイプ(現在は枯れている)』
北海道で小学生の娘と二人暮らしをしている。趣味はゆるめの野遊び、スキー、工作、手芸など。精神科のお医者につけてもらった病名はうつ病とADHD。現在は無脳薬で約3年。
「子ども当事者研究」、「子育て当事者研究」、「なさ親」などで活動中。22年4月より「nasaLAB(なさラボ)」のWebラジオ「つまり、きりがないラジオ」パーソナリティ。

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・続「技法以前」 230 向谷地生良

1955年、朝鮮動乱による特需によってはじまった高度成長は、1970年に開催された大阪万博(Expo'70)によって頂点に達します。1955年生まれの私は、その渦中に生まれ育ったので、その熱気は今でも覚えています。国民の誰もが、敗戦という絶望と混乱を「高度経済成長」による物質的な充足で代償していたように思います。その象徴が、世界中から6500万人が大阪の千里ニュータウンに押し寄せた大阪万博でした。NHKは戦後25年を振り返って、先般、亡くなった鈴木健二アナウンサーが司会をして「70年代われらの世界」と題する番組を特集し、科学技術の進歩が、人類の課題を解消する可能性を論じました。

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