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  • 故郷からの手紙 〜心をつなぐ家族の物語〜

    「故郷からの手紙」は、家族の絆、失われた時間、そして再生への旅を綴った物語です。父との別れから始まり、家族の歴史を振り返りながら、故郷の実家を再生し、農業を復活させ、新しいライフスタイルを確立するという夢に向かって歩みを進めていきます。このマガジンは、挑戦と成長、希望と再生の物語を通じて、読者の皆様に心温まるメッセージをお届けします。

最近の記事

新たな始まり

名古屋に着いてからは、心機一転。二人で始める新生活の準備は、それはそれは希望に満ち溢れていて、とても楽しかったのを覚えています。名古屋の街並みも、新しい会社も、見るもの全てが素敵に見えて、ウキウキな気分で働き始めたのです。 ところが、徐々に私の仕事が忙しくなっていき、帰宅する時間がどんどん遅くなっていきました。知り合いが誰もいない妻は、話し相手がいない時間がだんだん増えることが苦痛になってきたようで、 ショッピングに出かけては、電気屋の店員さんと数十分しゃべるほど、孤独な時

    • 一生懸命の絆

      妻と出会ったのは、高校一年生の頃。野球部に入部したら、妻はマネージャーとしてそこにいたのでした。当時は私はまだ体が小さくて、身長は妻とほとんど変わらず、どちらが高いか背比べをしていたほど。私の体が小さいのは昔からで、「前へ習え」では一番前の人の「腰に手を当てるポーズ」しかやったことがありません。野球部の一年生の中でも私は特に小さく、体も細く、ひ弱な選手でした。少しずつ大きくなる体とともに、妻との心の距離も少しずつ縮まっていきました。 そして高校二年生の秋、妻と付き合い始める

      • 家族の崩壊と形成

        20歳になった大学三年生の頃、私は一年生から始めた少林寺拳法に夢中になっていました。黒帯を取ったこともあり、やる気は満々。いつものように道場で汗を流していたとき、携帯電話が鳴りました。それは父と一緒に暮らしていた母からの電話でした。「もうダメかもしれない…。」電話口で涙ながらに事の経緯を話す母の声は、私たち家族がこれから崩壊に向かうことを知らせていました。 遡るのはさらに10年前。当時、私が小学校四年生だった頃、父の仕事の都合で、私たちは岩手から埼玉に引っ越しをしました。私

        • 父との別れ

          2023年2月4日、父が息を引き取りました。脳梗塞を患い、要介護状態になってから4年。コロナに感染し、肺炎になった父は静かにこの世を去りました。決して立派な家庭人とは言えなかった父ですが、子供の可能性を尊重することや、スポーツの世界の楽しさと厳しさを教えてくれた人でした。思えば、私は父から肯定され続け、自分の生きたいようにのびのびとやってこられたのでした。 母との離婚後、埼玉で一人働きながら暮らす父に早期退職を促し、一緒に浜松で暮らすようになってから10年。父との別れは、1

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        • 故郷からの手紙 〜心をつなぐ家族の物語〜
          4本

        記事

          ウサギとカメ

          一緒に仕事をしている仲間が、「ウサギとカメでいうと、我々はカメだから、周りを気にせずいこう!」と言ったことがあった。その発言は数年前のことだったが、今、私の中で大きな支えとなっている。 「ウサギは何で負けたか知ってる?」と聞かれ、「油断してたからじゃないの?」と答えた。「うん、そうなんだけど、ウサギはカメを見てたの。カメはゴールを見てたの。その違いだよ。」「あー、なるほどねー。」と、当時は軽い納得感で答えたが、努力が三年、四年と経過してくると、「私たちはカメだから」のフレー

          ウサギとカメ

          1/365

          先週末、1/365の喜びを見た。とある少年野球チームが、シーズン最後の大会で悲願のベスト4入りを果たしたのだった。 少年野球はシーズン最後の大会が終わると、最高学年である6年生が引退となる。そして、5年生を中心とした新チームが結成される。去年の同じ日、今の6年生は新チームとしてのバトンを受け取った。 しかし、10人以上いた6年生が抜け、たった4人でバトンを受け取った選手たちの道のりは険しかった。_____勝てない。刻々と過ぎていく時間と、積み上がる黒星の数に、チームは乱れ

          待つ力

          「待つ力」ってとても大事だ。必要なときに、きちんと待てる人。そんな人でありたい。 日々の生活に追われているとつい、イライラ、せっかちになりがちだ。信号待ち、渋滞、何かにもたついている場面など、私たちは時間がかかる場面で時間を浪費しているような気がして、時間がもったいないと感じてしまう。 しかし、物事には「待つ」ことが必要になることが必ずある。子供の成長、努力が結果に結びつくまで、大切な人との信頼関係の構築、私たちは見守ったり、努力したり、誠実につとめたりしながら喜びの瞬間

          待つ力

          成長のスピード

          成長のスピードは人それぞれだ。すごいスピードであっという間に成長し、瞬く間に結果を出していく人。とてもゆっくり成長し、周りのみんなと楽しみながら成長する人。早くも遅くもなく、淡々と成長していく人。私は「早く成長したい」と思いながらも、「我ながらゆっくりした成長だな」と思うときが多かった。 必死に成長しようと新しい学びに没頭したり、ちょっとくたびれてペースを落としたり、時には歩くことをやめてみたりしていたら、心地いい成長のペースがあることに気がついた。「季節の移り変わりと同じ

          成長のスピード

          夢への一歩目

          夢や目標に向かうための一歩目って何だろう?何度も夢や目標を掲げ、その度に何度も挫折し、何度も自分の不甲斐なさと向き合ってきた私が、ようやく夢に向かって進みはじめたと実感したとき、必要だったのは「本当の夢や目標を知ること」だと気がついた。そして、本当の夢や目標を見つけるためには、「自分を知ること」が必要だった。 私にとって「自分を知ること」は想像以上に奥が深いことだった。「自分探し」というワードはよく耳にしたことがあったが、私が必要とした「自分探し」は、「人間とはこういう生物

          夢への一歩目

          素人

          新しいことをはじめるのは、とてもいいことだ。いつもとは違う日に心弾むし、今までにない発見や出会いがあるからだ。過度なストレスにならない程度の新しい試みを日常生活に取り入れることは、心理学的にもいいとされている。だけど、そんな心踊ることをやってみるとき、私たちはいつも素人だ。 「素人」という言葉にはあまりいいイメージがない。しかし、素人だからこそのいい部分はたくさんある。素人だからこそ、これまでのしきたりに縛られない観点を持つこともできるだろうし、先入観がないからこそ新しいチ

          努力の意味

          目標達成に向けて一歩一歩進んでいるとき、ふと「なぜこんなに頑張っているんだろう」と思うときがある。それは必死で努力をしている時間のすきま、まるで真っ白に包まれた登山道で、雲のすきまから下界の景色が見えるときのような感覚で、ふと立ち止まるときがある。そんな瞬間を何度も経験し、答えを探し続けて、あるときしっくりくる答えが見つかった。「もっと自分を好きになるため」これが長年探し続けた答えだった。 人は夢や憧れを持ったとき、自然とそこに近づこうとする。もしかすると、近づきたいと思っ

          努力の意味

          原動力

          杉山修氏の感情リトリートプロジェクトで、私の「原動力」を見つけた。それは、あまりに当たり前で、普通で、まるで息を吸って吐くほど平凡な感情だった。あまりに自然な感情だったから、意識することもなく、日々の生活に埋もれていた「家族を育む」という感情。とても当たり前で、普通なこの感情が、とてつもない原動力を生み出しているのだった。 きっと誰もが、誰かを思い生きている。愛するパートナーのため、愛する子供たちのため、愛する両親のため、毎日自分なりの「仕事」をしている。思い直せば、これは

          原動力

          感情と学びの種

          感情がネガティブに振れるとき、私の目の前に「学びの種」が落ちていることに気がついた。 怒りを感じるときは、自分が大切にしている価値観とは違う価値観を知ることができる。嫉妬を感じるときは、自分の中に眠っている理想に気がつくことができる。悲しみを感じるときは、今手にしているもののすばらしさを噛みしめることができる。 大切なのは、自分の感情と真摯に向き合う強さと、そのための時間を持つことだ。なぜ、怒りが湧いたのか。なぜ、嫉妬に駆られたのか。なぜ、悲しみに暮れたのか。その一つ一つ

          感情と学びの種