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仲立ち(ハメ技の続き)

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銀太に「私を守って…チームに戻ってくれ…」と言った千秋でしたが…銀太は千秋の投げつけた1万円札とゲームの台に積み上げたお金をカバンにしまうと「自分を守りたかったら…男になって自分を守るのね!!」と言うと #ゲームセンター から出ていってしまいました…
私は2人が互いに惹かれあっていることを知っていましたので…歯痒い気持ちでした…
千秋の方はそれから連絡が取れなくなってしまいました…
銀太の方は快進撃を続けておりました。
当時まだ今ほど #LGBT への議論がなされていない時代です…長髪や #女装 でできる仕事はありませんでした…
銀太にとって女装は #ゲーム 1本で食ってやるんだ、後にはひけないんだと言う覚悟で自分を追い込む為のものでもあったのです…
それから3年が経ち私は #卒業 して #書道 の道に本格的に進んでいました…銀太のことを忘れていたとき…付き合いで #オカマバー へ行くことになります…
そこにいたのは少しやつれたチーママの銀太でした…
話を聞いていると3年の間にストリートファイター2はバグを改訂していったようで…バグを利用したハメ技が主体の銀太は翼を失った鳥のように堕ちていきました…
今のママに拾われ多額の借金を背負って戦い続けた銀太は「借金ももうすぐ返し終えるの…スト2が私を天職に導いてくれたのよ…」と嘯いておりました…
一方、メクリの千秋は男になるためにはじめたパワーリフティングにハマり大量のステロイドを摂取し世界記録に迫るほどの記録を叩き出していると言う噂が流れておりました…ジムの広告に載るほどで私はその噂を聞きつけ千秋に会いにいきました。
千秋は体重も増え…大声でしなるシャフトを持ち上げては床に落とすデッドリフトのトレーニングに励んでおりました…
「やあ、久しぶり」と声をかけると千秋は驚いた様子でしたが、すぐに自慢の腕を見せながら「どうだい??私も変わっただろ??」と…
私は銀太の話をしました…千秋は「あいつはまだ女装をしてんのかい…」と少し後ろめたそうでしたが…「まぁ…私も今はやりたいことも見つけたし…スト2が私を導いてくれたんだよ…」と汗を拭くとまたバーベルの方に歩いていきました…
それから又、時は経ち銀太から一通の手紙が届きました…
ママに認められ独立して新しく店をやることになりましたオープン前に一度来て欲しいと…
私はオープン3日前に店に行くとカウンターだけの狭い店でしたがピカピカのグラスが輝いており銀太の顔も輝いておりました…
銀太にお祝儀を渡すと少しだけ2人で飲むことになりました…お酒が進むと楽しくなってきて「千秋には店を出すことを伝えたのかい??」と聞くと空気が凍り…しまった…と思ったのですが銀太はただ首を横に振るだけでした…

オープンの2日前…私は千秋に会いにいきました…そして明後日、店がオープンすると伝えると「それはお祝いに行かないといけないねぇ…でも、アタイも今更会いにいけないよ…私は今…薬漬けだから酒も飲めないしねぇ…」と言うと銀太にお祝儀を渡すように頼まれました…

千秋と銀太をもう一度、会わせることはできないのか…と考えていると初代ストーリートファイター2がただ同然の値段で売りに出されていることを知りました。
ああ、これは…!!と思い買いに行ったのですがちょうどさっき売れてしまったと…銀太の店におけば千秋も来てくれるのではないかと思ったのですが…
万策尽きたと思いオープン前日の銀太の店に行きました…

扉を開けると銀太と千秋がスト2をしていたのです…
びっくりした私ですが2人はゲームに夢中で私に全く気付きませんでした…
どうも千秋が負け越しているようで…「今回は本当に負けたよ…私の太くなった指では弱攻撃の連打もできないね…」と言うと銀太は「アンタがこの大きな台を1人で背負ってきたのにはビックリよ…今はお酒飲めないみたいけどゲームしにきてくれたら嬉しいわ…」とコインを入れて…もう1ゲームしようとしたところで「千秋ちゃんあの時の勝負は…」と最後に千秋が銀太に負けた勝負の話をしているようでした…私はまた喧嘩になるのでは…と思って会話に入ろうとしたのですが…千秋から預かったお祝儀を置いてそっと扉を閉じました。

それから今まで月日は経ちましたが…この田舎町では初めてのミックスバー(オカマ、オナベがいるバー)として老舗の名店になっています。
カウンターの隅には誰も遊ぶことはないですが…時代遅れのストリートファイター2がいつでも遊べるように置いているとのことです。

#米早食

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