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夜天を引き裂く

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ツァラトゥストラの咆哮は、闇の底に反響し、ヘプドマスへ至る道を啓く。
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2019年1月の記事一覧

「夜天を引き裂く」を絶賛したい。

「夜天を引き裂く」を絶賛したい。

というか、する。

なんだろうな、乏しい僕の語彙力では「素晴らしすぎる」「これはヤバい」という言葉しか浮かんでこないわけですが…。今、全話を読み終えて猛烈に感動しているので、その勢いで書いてみようと思います。

圧倒的な筆力作者のバールさん。この人は明らかにただ者ではない。この間、逆噴射小説大賞参加者の作品は大量に読んできましたが、バールさんの筆力はその中でも抜きん出ている。これは敢えて断言してし

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夜天を引き裂く 目次

夜天を引き裂く 目次



 作:バール 絵:脳痛男

 ツァラトゥストラの咆哮は、闇の底に反響し、やがてヘプドマスへ至る道を啓く。

 推薦記事:〇 〇 〇

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 あとがき 前 後

あとがきとおぼしきもの 後編

あとがきとおぼしきもの 後編

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 そもそも「自己投影特化型主人公」に自己投影できないマンだったんですよ俺は(アイサツ)。

 だもんだから自己投影特化型主人公の無難で普通な言動に魅力を感じることができず、だんだんと「基地外じゃなきゃ主人公じゃねえ」などという過激な思想に傾倒してゆき、ついには世の自己投影至上主義に反旗を翻すべくテロ行為に邁進してゆくこととなった。

 それが『夜天を引き裂く』だ。

 それまでも、主人公

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夜天を引き裂く #11

夜天を引き裂く #11

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『ひっどぉ~い! ひどいひどいひどい!』
《いいと思うよ》
 手駒を介した遠視が途切れ、界斑璃杏は自らの肉体に戻ってきていた。
 蟻走感にもにた苛立ちを振り払うべく、半透明の腕を薙ぎ払った。校舎の壁が粉砕され、盛大に粉塵を撒き散らす。
 その姿は、浮遊する巨大なクリオネと言うべきものだった。
 光を透過するゼラチン質の巨体。
 房錘形の胴体から、ぱたぱたと動く二つのヒレが生え、その上

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夜天を引き裂く #12

夜天を引き裂く #12

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 ――どうすればいいんだ。
 秋城風太は半ばパニックに陥っていた。
 界斑璃杏の名を聞き、慌てて病院から駆けつけたはいいが、そもそも学校に着いてから具体的にどうするのかということをほとんど何も考えていなかったのだ。
 ――そもそも僕はどうしたいんだ!
 それがよくわからない。界斑さんを助けたいのか? そして彼女に気に入られたいのか? 再び操り人形となって、夜毎に血生臭いことをやらされ

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夜天を引き裂く #13

夜天を引き裂く #13

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 絶無はさすがに瞠目した。
『え、ウソ……え!? ホントですぅ!? うわ、ホントだ!』
 クリオネがうろたえたような声を上げた。
『今なら楽に勝てる。休戦といこう。利害は一致しているはずだ』
 重騎士が重苦しい口調で提案する。
『ふふん、了解ですぅ。神骸装を潰したなら大手柄ですぅ~!』
 半透明の頭部がぱくりと割れ、中から白い女の腕が六本ほど伸び広がった。
 ほっそりとしなやかなシル

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夜天を引き裂く #14

夜天を引き裂く #14

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「黒澱さん、僕はね、何もしないうちから負けを認めて中身のないプライドを守ることに汲々としているだけの人間を心の底から憎んでいますし、そういう連中の「僕ちゃん賢いから自分の痛さをちゃんと客観視できてますよ」アピールにもうんざりしているんです」
 絶無は、自らの中に仕舞っておいた野望を熱く語った。
「自らの弱さを正当化した先に待っているのは、際限のない妥協と不幸の連続です。それは人間の生

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夜天を引き裂く #15

夜天を引き裂く #15

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 ……絶無にとって痛恨だったのは、諸々の証拠を集めてクズ教師とカス女を社会的に抹殺するのに一週間もかかってしまったことだ。
 一週間!
 一週間も奴らは「示談がうまくいって賠償金までせしめられそうだ」とわが世の春を謳歌していたのだ。
 その情景を想像するだけで腸が煮えくり返りそうになる。
 顔に、雪が触れた。
 闇の曇天から、音もなく白い幻想が降り積もる。
 普段なら、目を細めてひと

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夜天を引き裂く #16

夜天を引き裂く #16

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「秋城さま、こちらでございます」
 花の潤みを含んだ声で導かれながら、秋城風太はちょっとどぎまぎしていた。
 艶やかなロングヘアーが、目の前を揺れながら先行している。女性としては長身で、風太よりわずかに高いくらいなのだが、左右にある肩幅はちょこんと小さく、そんなあたりに「女の子」を感じて余計にどぎまぎした。
 華道部部長、詩崎鏡香である。なぜか片耳イヤホン型のヘッドセットを着けていて

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夜天を引き裂く #17 終

夜天を引き裂く #17 終

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『――知恵比べは』
 戦意の猛りと、嗜虐の笑みを滲ませて、言う。
『僕の勝ちのようだなァ……!』
 重騎士の背後から。
 絶無は、そう声をかけて。
 獰悪に嗤った。
 ――見たぞ。貴様の強さの根源を。
 最初に五つ目の円盤が飛来して腕を切断していった時点で、すでにこういう展開を可能性の一つとして予想していた。奴の視界から逃れた一瞬を見計らって、入れ替わっていたのである。
 ――重騎士

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あとがきとおぼしきもの 前編

あとがきとおぼしきもの 前編

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 五百円。

 『夜天を引き裂く』に俺がつけた値段である。この値が適正価格であったかどうかはわからないが、二つの事実は提示しておこう。

・最初の有料章である「#13」を購入した人(ほとんどブッダ)は、全員が最後まで購入してくれた。

・いただいた電子ドネートのうち、基本の支払い分よりも、追加サポート分の金額の方がでかい。

 これら二つの事実から鑑みて、顧客満足度はすこぶる高い作品だっ

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夜天を引き裂く #10

夜天を引き裂く #10

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 いくつかの壁を突き破り、十秒とかからずに橘静夜は悲鳴の発生源に到着した。
 下駄箱が連なる一角で、饐えた匂いが立ち込めている。
「ヒッ、ひぃ……っ!」
 一人の男子生徒が、尻餅をついている。
 その視線の先には――案の定、堕骸装である。
 ――ぶるぶるぶるぶるぶる! ぶるぶるぶるぶるぶる!
 巨大な芋虫そのものの頭をしきりに振り立てながら、汚猥な粘液を撒き散らしている。
 頭の先か

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夜天を引き裂く #9

夜天を引き裂く #9

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「わかるか、橘」
「さっぱりわからん。要点を言え」
「僕のこの卓越した万能性は、生まれながらに父から受け継いだものなんかじゃなかったということだ」
 拳を、握り締める。やりきれないものを感じる。
「それを知ったときの、僕の気持ちを、どう言い表せばいいだろう」
「……」
「まず最初に、誇らしい気持ちになった。僕が同級生の蒙昧どもより十倍も優れているのは、要するに十倍努力したからだったの

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夜天を引き裂く #8

夜天を引き裂く #8

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 昼休み。
 中庭のベンチにて、絶無は黒澱さんと並んで弁当を広げている。
 すでに病院での顛末はあらかた話し終えていた。
「そしてこれが、秋城風太から強奪したモノです」
 掌を開いて、彼女に差し出す。
 奇妙な物体だった。親指よりやや大きい程度の小瓶である。中にはミイラのように痩せ細った小動物が入っていた。
 一見するとネズミのようにも見えるが、前肢から皮の翼が生えている。干乾びてほ

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