【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その6)
この世界は、広い場所である。
広すきると言ってもいい。
そうした広すきる世界に対して、私達は、何を持って対峙すればいいのか。
ある人々は、自らの手をのばすように、自分の撮りたい画を切り取って、心の中に封じ込める。
ある人々は、自分が思い描く風景をじっと待って、それが、うまく目の前に現れた時、幸運に恍惚となりながら、その瞬間を、心の中に封じ込める。
どちらも。
切り取って。
囲って。
閉じ込める。
その時、世界は、初めて、心を通じて、見えるものに、変貌する。
普段生活している街に。
「こんな素敵なところがあったんだ!」
と、初めて気づくことがある。
つまり、私達は、普段、生きている時、周りの世界なんて、ろくに見ていない。
毎日、歩く世界は、見るには、あまりにも広い。
美しさと、驚異に満ちているはずの、身の回りの世界。
他人の作った流れの中で生きることの限界を感じながらも。
日々の生活の中で、ただ、通り過きていく背景になっていて。
改めて、そこを、見ようなんて、誰も、思わないのかもしれない。
自分自身でさえ、その美しさに気づいておらず。
見ることさえ、していなかった、その世界を。
見える世界へと、変えることができるのは、やはり、自分自身。
それは、見る自由(リバティー)でもあり。
どんなふうにも、世界を、見ることが出来る自由(リバティー)。
ほんと、それは。
琴線に触れるたびに。
心眼を通したシャッターを押すたびに。
自分の世界を、新しく作っているに等しいと、私は思っている。
それを、私は、こころを使って見たいし。
あるいは、ことばを使って見せる。
触れるまで気づかなかった、見えなかった世界は。
気づきを得られた瞬間!
見える世界となって、私達の前に、初めて、その潜在的な美しさの本質をあらわし、世界を見ることが出来る自由(リバティー)があることを教えてくれる。
そのような素晴らしい可能性こそが、人間に与えられた最高の力であると、私は信じているし。
その世界は、誰の目から見ても、違っているという希望を感じられる限り。
ああ、人の世界って、すごいなって、その行く先を見てみたいと、素直に思える(^^)
そう、人の心にある、音のなる糸が、琴線だとすれば。
その音色は、人それぞれ。
優しい音色♪
力強い音色♫
静かな音色♬
に、元気な音色♬と、いろいろだね(^^)
どんなものが、心の糸を、ふるわせるのか。
それが、その人の音色になるのだとしたら。
奏でたい音をイメージして、いろんなものに触れてみるといいんじゃないかって、そう思います。
ときには、音ならぬ音を詠んだ句を聴いてみたり♪
「我汗の流るる音の聞こゆなり」高濱虚子
「蝶々のもの食う音の静けさよ」高濱虚子
「日盛りに蝶のふれ合ふ音のなす」松瀬青々
「蝶堕ちて大音響の結氷期」冨澤赤黄男
ときには、音を詠んで場を描いた句を読んでみたり。
「団栗の葎に落ちてくぐる音」鈴木花蓑
「団栗の鏑に落ちてかさと音」素十
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その6)
「鯉裂いて取りだす遠い茜雲」
(中島斌雄『肉声』より)
「広がつて薄きところや蟻の道」
(岸本尚毅『岸本尚毅作品集成I』より)
「四トン車全部がおせち料理かな」
(北大路翼『天使の涎』より)
「七夕や若く愚かに嗅ぎあへる」
(高山れおな『荒東雑詩』より)
「終極のこころを点すからすうり」
(渡辺松男『隕石』より)
「春はあけぼのみなさんの忘れもの」
(松澤昭『自選三百句』より)
「春昼に昔と出逢ふ磨硝子」
(藤原月彦『藤原月彦全句集』より)
「春風や川浪高く道をひたし」
(內田百閒「おかやま文学の古里」富坂晃(著)より)
「少年よ國家より一人の友をこそ」
(坂戸淳夫『彼方へ』より)
「人が通る野分がとおる山頭火」
(松本勇二『直瀬』より)
【関連記事】
<短歌>
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その1)
https://note.com/bax36410/n/nf8e5e47f578a
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その2)
https://note.com/bax36410/n/n353e5be2445e
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その3)
https://note.com/bax36410/n/nbb5a13ca8405
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その4)
https://note.com/bax36410/n/n0090664bcf33
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その5)
https://note.com/bax36410/n/n9c0ff103b72c
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その6)
https://note.com/bax36410/n/n066b0410eafa
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その7)
https://note.com/bax36410/n/n43fdb643550c
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その8)
https://note.com/bax36410/n/n6478294052d2
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その9)
https://note.com/bax36410/n/n794a601eb10a
【百人一首(近代・現代短歌)】ある世界(その10)
https://note.com/bax36410/n/nef42320214fa
<俳句>
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その1)
https://note.com/bax36410/n/n5c97e0bdf258
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その2)
https://note.com/bax36410/n/n0a3e48a832f3
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その3)
https://note.com/bax36410/n/nbb3cde472999
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その4)
https://note.com/bax36410/n/n9392f27683df
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その5)
https://note.com/bax36410/n/n57dcb79b2c3b
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その7)
https://note.com/bax36410/n/n03ae4a228fb0
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その8)
https://note.com/bax36410/n/nacaa5528c5a8
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その9)
https://note.com/bax36410/n/nb8c8bb795a19
【百人一句(俳句)】そこにクローズアップ(面白味を見ようと)してみると(その10)
https://note.com/bax36410/n/nf5d7a178aa52