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久々に激怒した話

おはようございます。チューバ奏者、指揮者、金管バンドの専門家の河野一之です。

先日とある連絡がきて久々に怒りという感情が湧いたのでその時の話を書いてみる。

特定の誰かを傷つけたり貶したりすることが目的ではなく、自分自身があの時「どういう風に」感じたのかを記録するために書くのと、河野がどう対処し何を考えているかご理解いただけたら嬉しい。

目次

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あらすじ

レッスンをさせてもらっている生徒さん(未成年)が所属されている団体の指導者の方から保護者様経由で、僕が行なっている「レッスンの内容を変更して欲しい」と連絡がくる。

その後保護者様と電話でお話をさせていただき
・レッスン内容の変更は無し
・保護者様がそのご指導者様やレッスンを受けていらっしゃる生徒さんご自身と対話を増やしてみる

に落ち着く。

レッスン内容の変更の話

レッスンをさせていただいている生徒さん(以後S)はまだチューバを初めて一年足らず、初めてレッスンをさせていただいときからレンタルのヤマハのトップアクション(3本ピストン)を使用している。

状態としては

・チューバ・スタンドの高さが合わせられていなく姿勢がSの体には不自然な形になっている。
・Bb Majorの運指に限らず半音階などの運指も知らない
・息を吸う量などの話ではなく吸って吐くというタイミングもつかめていない
・現在取り組んでいる曲のリズムや音感はなんとなくつかめている。リズム感に関してはリズム聴音もすぐできたりと、とても良い。
・チューバが好き

このような状態であった。なので誰にでもそうさせていただいているようにまずは姿勢の矯正を行う。これは誰にとってもそうで、チューバに合わせた姿勢でチューバを吹くと身体が歪んだり、長く続ければ骨も歪み両手の長さが変わったりしてしまうからだ。

なのでチューバに合わせた座り方をするのではなく、自分が楽に座った所=楽に呼吸ができたりチューバを吹くための動作ができる所にチューバを置いたり持てるようにする。そのためにスタンドの高さや椅子の角度、譜面台を置く位置を変えるのだ。

楽器自体が重く大きいので、一回座ってしまうとこれらのことを変えるよりも自分の身体を歪ませたりずらして座ってその大きいチューバに自分の身体を合わせてしまう方が簡単なため多くの初心者によく見受けられる姿勢であったためアドバイスをさせてもらった。

その後呼吸や運指、それらを効率よく全て練習できるようなロングトーンやフレキシビリティの方法を約30分間、その後自身が今取り組んでいる曲を30分、計60分をレッスン時間とさせてもらっている。

これまで何度か行わさせてもらってきたレッスン全てこのルーティーンだ。初回以外は最初の30分の中で前回の復習、わからなかったり忘れてしまった部分を再度一緒に復習をし理解を深めてもらい、また次回への目標を立てて行う。

そして残りの30分は相変わらず、それぞれ個人で取り組んでいる曲を聞かせてもらい僕ならこうするといったアドバイスや個人個人のやりたそうなことを見極め、その「やりたそうなこと」をやりやすくするための方法や練習方法をアドバイスさせてもらう。

さてそんな僕のレッスン内容の変更を求めてきたとあるご指導者のご意見(要約)はこうだ。

「レッスン時間全てを曲の練習に使っていただけますか?理由はSが私たちがやっている練習方法についてこられていなく(*)、さらに曲の進み具合もとても遅くコンクールに間に合わなそうだからです。先生がお与えになっている課題をやる時間も物理的にない状況です。」

状況説明

・Sは本業やチューバの他にスポーツも楽しみながら音楽を楽しんでいる。

・取り組んでいる曲はチューバ歴1年の子がやるには無理がある難易度。
(下線4本のF#から第5線A(High Bbの短2度下)まである.)

・ご指導者様は金管楽器がご専門では無い方。

・コンクールまでの日程は約4ヶ月

先生(河野)がお与えになっている課題とは
→運指がわからないということなので運指表と今後使うことになるであろう音階24種を書いたS専用の楽譜。大前提として事前にSと保護者様には忙しいのはよく分かっているし僕と一緒に読まないと意味がわからない箇所ばかりでしょうから”印刷だけ”しておいてください。という話になっている。

(*)の位置に(笑)が入っていた。

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河野の見解

お会いしたこともないご指導者様からのご意見は参考にさせていただくだけにし、Sが未成年ゆえ保護者様のご意見をお聞きすることにした。

・なぜレッスンの初めの30分に基礎や基本的なことを一緒に研究するのか


・曲の練習は毎度最低30分は一緒に見させてもらっているという事実の確認

コンクールに間に合うことが大事なのか、チューバを今後も楽しく演奏する=Sの自己表現の一つの方法としてチューバを続けることが大事なのか
(ここが一番聞きたかった。)

・(笑)とご自分が指導させてもらっている生徒さんの現状を語るときに書くご指導者様が、適切なご指導をSにされているとは申し訳ないが思えない

・曲だけの指導を受けたいのであれば僕では無い指導者の指導をご受講されるべき

・Sの成長速度が遅い!と言う前に彼の成長速度に合った指導内容に変更したり、曲の難易度を下げたり、彼に合った内容を提示できないのか

・Sはコンクールというものを理解し、なぜコンクールに間に合わせなければならないのか、賞を取ると言うこと、コンクールに出ると言うことがどういうことか完全に理解した上でコンクールに出場すると言っているのか

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河野の見解2

僕たち音楽家は音楽の専門教育を受け、その証として大学や専門機関から卒業証をいただきそれをプロフィールに書いて活動をしている。

音楽を生業に、専門にしていない方々からすればどんなに小規模に活動をしていようが、大規模に活動をしていようが

プロの先生

という立ち場に変わりはなく、音楽が好きだ、楽器演奏が好きだという想いから僕らの元へ来てくださる方々へ誠心誠意応える義務があると思う。

音楽の楽しさ、楽器演奏の楽しさの手段としてコンクールの存在を提示しても良いけれども、その手段であるコンクール自体が日々の音楽活動の”目的”に擦り変わると

コンクールに出るため、良い賞をとるための音楽活動になる

コンクールのために、曲を選び、楽器を選び、練習をし、音楽を行う。

学校の部活動でもそうであるけれども、そこには個人の尊厳など無視されとにかくコンクールのための時間が存在し始める。

そうして子供の頃からそんな目にあうと大人になって自分で選択できる環境になるとみんな音楽活動なんて辞めてしまう。

だって音楽の楽しさとかではなく、コンクールにでるため、勝つため、誰かと競うための音楽しか知らないからだ。

コンクールで演奏したことがある曲が流れるとトラウマで身体が緊張する人さえいる。でも、音楽って、コンクールって本当にそういうもの?

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最後に

コンクールやコンテストが問題じゃ無い、それを手段から目的に勘違いしてしまう人間が間違えるのだ。

人を轢き殺す車が悪いんじゃなくて、使い方を間違える人間が悪いのだ。それと同じ

今流行っている大麻だって、医療用としては十分に効果が認められている薬草の一面もあるけれども使い方を間違えるとどの薬やタバコや酒同様に人を堕落させてしまう。

頭にきたのは一瞬であったけれども、今は少しでも多くの何も知らない、真っ白な状態で音楽が楽しい、楽器が楽しい!と初めた人々がより良い指導者に出会い素晴らしい音楽人生を歩めるよう願う。

だって誰しもが出会える機会ではない、この国では楽譜が読めるというのがまず敷居が高くなり、楽器を吹けるなんて言うとさらに上だ。(日本の音楽教育も改善の余地大あり)

そんな中で音楽に出会い、たまたま音楽に興味を持ち、楽器も吹ける環境もあるというとても贅沢な環境で少しでも楽しい時間を過ごしてほしいし、欲を言えば楽器を好きになってもらって同じ音楽、楽器好きな仲間が増えてくれると嬉しい

僕たち指導者は自分たちがそうであるように、音楽や楽器、僕で言えば金管バンドを好きな人にもっと好きになってもらうお手伝いをしているだけだ。

「教えてやるよ」「自分より吹けない」とかいう上から目線は必要ない。でなければ(笑)なんて初対面の別の講師に使わない。

自分を棚に上げて、教育の賜物というより、人間性の問題な気もしているので今の世の中をどう言う風に変えたら良い指導者が増えるかはまだわからないけれども

自分自身、全てのそういうネガティブな事象に自戒をしつつ生きていきたい。

繰り返しになるけれども、誰かを貶めたり、傷つける目的でこれは書いていない。その指導者様もきっと僕の考えを超えるところで何かポジティブな意味で仰ってくださっていると信じたい

何よりもSが今後も楽しくせっかく出会えた音楽、チューバを演奏し続けてもらえたらそれが一番かな

Thank you

Kazz



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