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その子らしく、そのままができる - ミライクラフト一級建築士事務所【体験者インタビューVol.1】
【体験者インタビューVol.1】
こんにちは、ベネッセアートサイト直島 エデュケーション担当の大黒です。
ベネッセアートサイト直島でのプログラム体験者の声をお届けするインタビュー企画をスタートします!
第1回となる今回は、香川県高松市にある建築設計事務所「ミライクラフト一級建築士事務所」の代表を務める野上むつみさんにお話をお聞きしました。
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■プロフィール
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平成14年一級建築士資格取得後独立、ミライクラフト一級建築士事務所を設立。木造住宅をメインに設計の傍ら、3人の子育て中に、子育て支援団体「特定非営利活動法人マイシアター高松」の理事長を10年間つとめる。その間にたくさんの子どもとの関わりをきっかけに「子ども建築士教室」を立ち上げて5年。家や建築をツールとした子どもたちとの学び合いを楽しむ日々。
インスタ:https://www.instagram.com/mutsu_mirai_craft/
HP:https://www.miraicraft.net/
ベネッセアートサイト直島では、2021年の夏に「自由な発想・自由な表現をたのしむ」をテーマに直島でプログラムを行い、その後、豊島、犬島、小豆島、女木島を舞台に今日に至るまで計6回のプログラムを実施しました。
ベネッセアートサイト直島のプログラムを体験しようと思ったきっかけや目的を教えてください
プログラムの問い合わせをする前の年に、高知県にある隈研吾さんの建築に子どもたちを連れていったんですけれども、「現地に立つ」という経験がすごくいいなと思って。次の場所を考えたときに、直島がいいんじゃないかと。近いし、自分も何度も足を運んだことのある場所なので。それでホームページを調べていくと、学びのプログラムのページがあって、問い合わせました。
その日のうちに返信が来て、「一緒にやらせていただけるんだな」というのを感じて、そこからはとんとん拍子に進みました(笑)
1か月後には直島で打ち合わせをして、どんなことができるんだろう、と思いながらお話する中で子どもたちと関わるスタンスが一緒だったことが本当に大きかった。大人が一方的に何かを伝えるのではない関わり方や、時間を区切って管理するスケジュールではなく、子どもたちを見守るスタイルを自分は大切にしているので、それが実現できると分かったときに、一緒にプログラムができると子どもにとってもいいんだろうなと思いました。建築とアートの中で子どもたちの学びの機会がつくれるということも一つなんですけれども、一番期待したポイントとしては子どもたちと関わるスタンスが同じだったというところです。
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実際にこれまでのプログラムを通してどんな体験や効果が得られましたか?
親は親、子は子どもだけで分かれるプログラムにしてもらって、子どもの時間を子どもたちで過ごせること、子どもが発言したこと、感じたことを全部受け止めていただけるのがすごくいいなと思っています。説明や知識を与えるのではなく、子どもたちが感じたものを表現させてもらえる、子どもたちが感じるがままに受け入れていただいている。
大人はガイド付きのツアーで鑑賞して、最後に子どもと合流してどんなことをしていたのかを共有する時間があって。同じものを見ても、感じ方は全然違う。大人の楽しみと子どもの楽しみを同時にできるっていうのはすごくいいなって思っています。大人の参加者の話を聞くと、本当にガッツリ楽しんでいらっしゃって(笑)ガイドがいいらしいです。
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建築っていうのは、環境など全てのもので構成されていると思っているのですが、それこそ自然だったり、その時の天気だったり、子どもたちが過ごす時間だったり、そういったものを感じられるプログラムだと思います。子どもたちによって気になるポイントがたくさんあるので、拾った木の実が良かったんだ、見た景色が良かったんだ、食べたものが美味しかったんだ、とか建築というものが全てで構成されるならそれはもう何でもいいんかなって思えるんです。
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あとは本当に自由にさせてもらえていて。本当にいいのかなって思うぐらい自由に体験させてもらって、ありがたいなと思っています。
本来だったら指を指し、声を出し、あれすごいよねとか話をしながら観るのが本当の作品鑑賞なんだろうなと思うのですが、普段ではもう絶対できないので。それを本当にさせてもらえている。すごい貴重な体験を子どもたちはしているんだろうなって思います。ここでしかできないと思う、本当にできないと思う。
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プログラムに参加した子どもたちの中に、何か変化は見られましたか?
続けて来てくれる子たちは、事前情報がなくても楽しめるようになっているのが一番かなと思います。何をするのか分からなくて不安な時って「今日何するの?」とすごく聞いてくるんですけれど、そういうのも全然なくて、船に乗るところから楽しんでくれています。
最後に自分がつくった作品や考えたことを発表する時が、やっぱり一番子どもの成長が見られるように思います。2022年の11月に小豆島の福武ハウスで自分だけの小学校を作るワークを行った際、大人のグループが発表の時間までに帰ってこれなくなってしまって、急遽スタッフの方々に向けて発表することになりました。子どもたちからは「えー!」って反応が返ってきたけれど、その中で一番最初に手を挙げて発表してくれた子がいて、あーすごいなと思ったり。長いこと続けているとそういう瞬間に立ち会える。やっぱり発表の時間があることで1つでも2つでも変化はあるんじゃないかなと思います。
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タイトに管理されたスケジュールの中で息苦しく圧を感じながら取り組むのではなく、発表までの時間がとても自由なので、自由な状況の中で自分のアウトプットを表現できるのがいいんだろうなって思います。変化というよりは、そのままができる。その子らしく、ありのままのその子らしさが表現できているっていう感じがします。
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プログラムの中で最も印象に残っている場面を教えてください!
2023年4月に直島で1泊2日のプログラムをしましたが、その時に鑑賞した夜のベネッセハウス ミュージアムでの出来事が一番印象に残っています。初回のプログラムで直島のベネッセハウス ミュージアムを訪れた際、参加していた子が≪天秘≫で空を見上げながら「ここで夜空が見たいわ」って言ったんです。それをずっと覚えていて、子どもたちをそこに立たせたいと思って実現したのが1泊2日のプログラムでした。夜のベネッセハウス ミュージアムに行き、≪天秘≫を鑑賞していると上から桜の花びらが舞ってきて、上を見て子どもたちがそれを追いかけて、その桜を見た子が「桜が降る美術館」と名付けていて。お月様も綺麗で本当に感動的でした。この場所で夜空を見たいって言った子が夜空を見て、見上げた時に桜が降ってきたという体験を、ずっと持っていてくれたらいいなと思っています。そういう体験を意図した建築なのかもしれませんが、それ以上のものを持って帰れるのはすごくよかった。あの季節とあの時じゃないと、多分もう二度と再現できないんだろうなって思います。自分が生きている中での結構なワンシーンに入っています。
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2021年12月に訪れた豊島美術館でずっと佇んでじーっと作品を見て、座るでもなくずっと立って見ている子がいたのも印象に残っています。他の島でのプログラムにも共通していますが、あの建物の中に立ったからこそ味わえること、写真や映像では絶対に味わえない体験をさせてもらっているなと思っています。
今後ベネッセアートサイト直島のプログラムで「こんなことがしてみたい」ということがあれば教えてください!
2024年4月に直島で「島づくり」をテーマにプログラムを行う予定なので、まずはそれが楽しみです。
これまで様々な島に足を運んできたので、同じ島を訪れて前回とは少し違った角度から見たり、制作をしてみたり、自由に感じてみるところから一歩考えを深めてみたり、少し視野を広げることができたらいいなと思っています。
あと、ホテルや美術館の裏側みたいな場所を見せてもらえたらいいなと思います。子どもって建物の表側しか見てきていないんです。学校にしても、どこに行ってもバックヤードっていうのは秘密の場所で、見ないんですよね。けれど、自分がオーナーとして建物を考えるとなった時、表の部分だけでなく、仕事するところだったり、従業員さんがいるところだったり、裏の部分まで考える必要があって。建物って訪れる人のためだけでなく、そこで仕事をする人のための空間でもあるので、裏側が見られると違う発見があってすごくいいのではないかと思っています。ちょっと変わった建物の中に立った時、子どもたちがどう感じて、それをどう表現するのかはとても興味がありますし、面白いと思います。
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本当にいいスタンスでプログラムを行っていただけるのが一番だなと。今のこのご時世本当にありがたいなって思っています。美術館に自由に子どもたちを放つってドキドキするんですけれど、でも本当にいいなって。自由に美術館で過ごせるっていうのが子どもにとっては一番。それができるっていうのはすごいありがたいなと、今さらながらに思います。
おわりに
今回は「ミライクラフト一級建築士事務所」野上むつみさんのインタビューをお届けしました。ご協力いただき、ありがとうございました!
これまでのプログラムはこちらからご覧いただけます↓
①直島の美術館を探検!@直島(2021/8/1)
②自分だけの美術館をつくろう@豊島(2021/12/19)
③自由な発想・表現を楽しむ@犬島(2022/6/26)
④オリジナルの小学校をつくろう@小豆島(2022/11/5)
⑤自由な発想・表現を楽しむ@直島(2023/4/2-3)
⑥旅の思い出をコラージュしよう@女木島(2023/11/26)
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