🐉一丸～帝京大学のチーム変革～

2020年のシーズン開始は帝京大学だった。毎年おなじみのキャンプ地である、静岡は韮山を訪問し日本大学国際関係学部とのオープン戦を観戦した。その日は天気が急変し、最後はドロドロになりながらなんとか試合を終えた。試合を追うより、雨に逃れることで必死だった。

帝京大学は昨年、塚畝諒選手(現：三菱重工神戸・高砂)を中心に、投手・野手ともに経験の豊富な選手が揃った。2017年の春にはリーグ戦優勝も経験し、私自身この年代が一旦のピークではないかとすら思った。しかし、今年の帝京大学は一味違う。逞しさが増しているだけでなく、チームが一丸となっている。

コロナウィルスの影響で長らく野球から離れていた。本来ならば、リーグ戦で新一年生や新しいスターを発掘しているところだ。久しぶりに観戦を再開できたのが先週の土曜日。7月4日、帝京大学とJR東日本のオープン戦に訪れた。

久しぶりの野球に心が高まったのも要因だが、帝京大学のチームの様子が違う。個々の身体も一回り大きくなっただけでなく、ここ数年にないほどチームのまとまりを感じた。特に森元啓雄選手(京都翔英④)の逞しさと、今谷真一郎学生コーチ(滋賀学園④)の声援に凄みを感じた。今年の帝京大学は、4年生のキャラクターが非常に濃い。これが良い一丸となって向けば強く、また逆に転べば転落していくという一種の賭けもある。それほどの影響力が最上級生にはある。懸念していた姿は一切見られなかった。この自粛期間中も、ひっそりと多くの課題をこなしていたのだろうと予測する。それが身なりとチームの色ではっきりとわかった。

このチームの礎を築いたのは、間違いなく去年主将を務めた西川拓馬元主将だろう。昨年もキャラクターの濃い上級生が揃った。困難を極めながらも、チーム作りに徹した。優勝こそならなかったが、力強い野手陣を統率したのは非常に素晴らしく、また西川元主将の真面目で、真摯に取り組む人柄がチームの色となった。これが、現在の4年生に浸透していると感じる。その熱量が、後藤将太主将(奈良大附④)や森元選手、角田之仁選手(銚子商業④)をはじめ、多くの最上級生に引き継がれているのだろう。

さらに去年よりパワーアップしている箇所がある。それは投手陣と野手陣のコミュニケーションがよくとれているところだ。彼らの熱量の差が縮まれば縮まるほど、チームは強くなる。これが持続すれば、自ずとチームの雰囲気はよくなっていく。先日のオープン戦で先発した大津亮介投手(九産大九州④)の眼差しからも非常に強いものを感じた。

今年の帝京大学は一味違う。はじまってみなければわからないが、秋季リーグ戦で一つの楽しみができた。私が今まで見てきた帝京大学の中で、ダントツ一番に雰囲気の良いチームだ。このチーム作りができたのも、諸先輩と現在の最上級生の力ありきではないかと考える。長いこと与えられなかった、背番号1と背番号18も、もしかしたら出てくるのではないだろうか。それほど、強いチーム力を感じた。2017年春以来の優勝を目指す、帝京大学の活躍が今後も楽しみだ。

余談・かなねーさんオススメ選手

森元　啓雄選手(京都翔英④)

はつらつとしたプレーももちろん。屈託のない笑顔がチャームポイント。なかなかチャンスに恵まれなかった下級生時代から一変。チームの中核を担う選手にまで成長を遂げた。

角田　之仁選手(銚子商業④)

下級生よりコンスタントに試合に出場し活躍。プレーからもにじみでるほど真面目。最近は少々不調に陥っているようなので、頑張ってほしい。打席から悔しがる姿は、こちらも色々思うところがある。早く一本出てすっきりしてほしい。

同じチームでも学年によってその“色”や“特徴”が異なる。その年々によって良いチームを作り上げることも、一気に落ち込むこともできてしまう。これはチームだけではなくどの組織にもいえる。良い伝統をつなげ、その上で変化していく大切さを改めて知ることになった。