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自然と子どもたちを保護する自立したコミュニティを作ることによって、カカオ生産者の繁栄を促すーココアホライズンプログラムとは?【前編】

ココアホライズンは、バリーカレボーが2025年までに持続可能なカカオとチョコレートの未来を実現するために立ち上げたサステナビリティプログラムです。プログラムは現在、コートジボワール、ガーナ、カメルーン、インドネシア、ブラジル、エクアドル、ナイジェリアで実施されています。

ココアホライズンプログラムとは

ココアホライズンは、子どもたちと自然を保護し、自立した生産者コミュニティの構築を支援することによって、カカオ農家の繁栄を促進し、持続可能なカカオの供給を実現するための成果重視型のプログラムです。

ココアホライズン財団は、バリーカレボーが2015年に起案し、スイスの連邦基金監督局(the Federal Foundation Supervisory Authority)が監督する、独立した非営利団体です。パートナー企業の協力と支援のもと、カカオ生産者コミュニティへの影響力を拡大し、変化を促しています。

ココアホライズンプログラムの取り組みは、国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)「1.貧困をなくそう」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「8.働きがいも経済成長も」「10.人や国の不平等をなくそう」「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「15.陸の豊かさも守ろう」の7つのゴールに貢献します。

ココアホライズンプログラム内容

ココアホライズンのプログラムの主な内容は以下の通りとなっています。

  • 生産者のアカデミー卒業と生産者グループの能力開発 

  • カカオの生産性向上と収入を所得創出活動 

  • 子どもの保護に重点を置いたコミュニティ活動

  • 環境保護活動

ココアホライズンのプログラムに参加している生産者グループ数と生産者数

2021/22中間レポートによると、プログラムに登録している生産者は、全世界で247,062人で、前年より12%増加しました。また、ココアホライズン認証カカオを 供給した生産者グループは218に上り、前年より10%増加しています。

ココアホライズンのプログラムに登録している生産者を国別にみてみるとガーナが、120,756人とトップで、コートジボワール100,961人、カメルーン19,356人と続きます。

ココアホライズンが目指すもの

持続可能で企業的な農業経営、生産性の向上、コミュニティ開発の促進を通じて、カカオ生産者の生活とコミュニティを改善し、子どもたちと自然を保護することを目指します。

ココアホライズンが取り組んでいる3つの重要分野

ココアホライズンでは、「生産性」「コミュニティ」「環境の改善」の3つの分野に焦点を当て、課題解決へ向けてアプローチしています。

生産性では「生産者の繁栄」、コミュニティでは「児童労働ゼロ」、環境では「森林保護」と「カーボンポジティブ」を目指しています。各分野それぞれの内容と、現在までの進捗状況について説明します。

生産性

ココアホライズンプログラムで、現在主に取り組んでいるのが、生産者トレーニングと生産者サポートです。

・生産者トレーニング

バリーカレボーとココアホライズン財団では、若い世代のカカオ生産者をトレーニングし、カカオ生産が魅力的な職業になるよう尽力しています。

トレーニングは2年のサイクルで受けるシステムです。登録した生産者全員が生産能力を養成し、持続的なカカオの生産方式に対する認識を構築し、意識を高めるような内容になっています。

主なトレーニング内容は以下のとおりです。

  • 適切な生産方法の実践

  • トレーサビリティー(追跡可能性)実施のトレーニング

  • 人権に関する研修

  • 品質要件を満たす

  • 健康と安全

  • 環境保護

剪定のトレーニングを受けたガーナの男性からは「カカオの木をきちんと剪定すると、驚くほどたくさんの実をつけるんです。以前は数袋しか収穫できませんでしたが、今では30袋近く収穫できるようになりました」と嬉しい報告がありました。

・生産者サポート

バリーカレボーが手がけるココアホライズン認証のチョコレート・ココア製品は、購入量に応じてプレミアムを支払うしくみとなっています。そのプレミアムの一部は、カカオ生産者や生産者グループに直接支払われる形で生産者をサポートしています。

それによってカカオ生産者の収入が上がり、また農園やコミュニティへの投資にもつながります。残りのプレミアムはココアホライズンが取り組んでいるカカオのサステナビリティ活動支援に使われ、カカオ生産者のさらなるエンパワーメントに活用されます。

2021/2022年のココアホライズンの中間報告書では、ココアホライズン農業サービスを利用して生産性を高めた例を紹介しています。

ある男性は、農園診断を自分の農場で実施することで、殺菌剤の使用量を減らし、経費を削減し、収量を増やすことができました。また、剪定や除草の方法を教えてくれる訪問指導も受けています。近所の人たちや、カカオ農業を成功させたい人たちに、このプログラムへの参加をすすめています。

コミュニティ

ココアホライズンは、パートナーと共に長期的視野に立ち、生産者と共にカカオ生産方法の改善に取り組んでいます。それと同時に、生産者とその家族が暮らすコミュニティにおける社会的課題の解決にも挑戦しています。私たちはこの統合的アプローチが生産性の向上、世帯所得の増加、家族およびコミュニティ全体の生計改善のための最善策をもたらすものと信じています。

また、コミュニティの分野では、コミュニティや生産者グループと協力して、子どもの保護、女性の自立支援、教育などの分野でニーズを把握し、問題の解決に貢献しています。

・子どもの保護

ココアホライズンは、カカオ生産コミュニティの繁栄に向けたビジョンとして、すべての子どもたちが学校に通い、有害で過酷な労働から解放されることを掲げています。パートナーとともにラジオ番組や研修、ココアホライズンのイベントなどを通じて、生産者の啓蒙活動を行っています。

コートジボアールの生産者の男性は「私にとって、ココアホライズンから得たコミュニティの最も大切な恩恵は、すべての子どもたちが学校に行き、そのまま学校で勉強できることです」と語っています。

生産者トレーニングでは、学校教育の重要性についても説明しています。児童労働に対する問題意識を高め、理解を深め、建設的な解決策を見出すために、児童保護委員会を通じてコミュニティに働きかけています。

ココアホライズンは、児童労働の発生リスクに基づいたアプローチをして優先順位をつけています。そして、生産地全体でデューデリジェンス(人権侵害を行わないための注意義務)を強化し、コミュニティを巻き込むことによって最も必要性の高いところで児童保護の介入を行っています。

児童労働の根本原因に長期的に取り組むため、個々の監視と是正を行う一方、予防活動にも取り組んでいます。

・女性の自立支援

女性は、家計の収入向上や児童労働の防止などにおいて、非常に重要な立ち位置にあります。

ココアホライズンでは、女性の読み書きやビジネス能力のトレーニングを支援し、女性および地域密着型の女性グループと協力して所得創出の機会を設けています。

このプログラムは、児童労働の防止や世帯収入の向上にプラスの効果をもた らす女性の自立促進に継続的に投資しています。その鍵となるのが、村の貯蓄貸付組合(VSLAs)の設立と強化です。この活動は、主に子どもを対象とした取り組みの促進、女性の自信形成、生産者のための資金調達法の提供などに役立っています。

・教育

教育はすべての人々にとって発展の基盤となるものです。主な活動は、入学および就学・出席の促進、学校用キット、補習コース、出生証明書などの支援です。

また、地域にふさわしい小学校や中学校の施設がない場合は、ココアホライズンがインフラの整備に寄与しています。

教室の整備および家具などの備え付け、学校給食のための食堂の整備および家具などの備え付け、男子および女子用にわかれたトイレの建設、照明用のソーラーパネルの供給、適正な職員を誘致し、雇用に向けた教員用住居の整備なども含まれます。

コミュニティや生産者グループのニーズに応え、カカオ産地の子どもや若者が、よりアクセスしやすく、安全で質の高い十分な設備を備えた学習環境の実現を目指しています。

2021/2022年のココアホライズンの中間報告書では、ココアホライズンの女性コーチが紹介されています。

エクアドルで最初にココアホライズンに参加した生産者の女性は、農学部を卒業した後、ココアホライズンのコーチになる機会を得ました。女性は現在コーチとして、コミュニティの他の生産者が成長し、プロフェッショナルになるのをサポートしています。

よりよい農法や環境・社会的原則について指導するとともに、自分の農園でも知識を深め、すでに収穫量の増加を実感しています。彼女はコーチとしての経験を生かし、将来は修士号を取得して農業研究のリーダーになることを目指しています。

環境

森林破壊を止め、生物の貴重な生息地である森林の回復と繁栄を目的とする「フォレストポジティブ」。また、二酸化炭素が排出する温室効果ガスの量よりも吸収する温室効果ガスの量が多い状態になる「カーボンポジティブ」に取り組んでいます。

・森林保護

生活者ニーズに伴ってカカオ生産を推し進めた結果、必要以上に森林が伐採され、生態系に大きな影響をおよぼしているのが現状です。森林破壊を防ぐため、すべての農園をGPSポリゴンでマッピングし、保護区域ではないことが確認されています。

また、モニタリングによって毎年の森林減少の度合いを評価し、生産者と協力してアグロフォレストリーなどの方法で過去の炭素負債を補填しています。

アグロフォレストリーとは、農業・林業を同じ場所で行うなど、その土地の地球物理学的・社会的条件を考慮し、同じ土地に樹木と作物を意図的に融合させるシステムです。

地球環境保護が叫ばれている現代において、アグロフォレストリーで作られた作物は商品価値が高まり、結果として生産者の収入向上をもたらすというメリットがあります。

カーボンポジティブ

カーボンポジティブとは、二酸化炭素が排出する温室効果ガスの量よりも、吸収する温室効果ガスの量が多い状態を指します。

また、同時によく使われる「カーボンニュートラル」とは、排出する二酸化炭素の量と、吸収する量が同じ状態を指しています。

ココアホライズンは、森林再生に積極的にも取り組んでいます。現在420万本の日よけ用の木を生産中で、今後数カ月以内に配布される予定です。

また、2,800台の料理用コンロも配布予定です(2021/2022の中間報告書より)。これまで以上にアグロフォレストリーや気候変動対応型農業に重点を置き、カーボンニュートラルの達成に向けた活動を促進していきます。

後編へ続く>


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