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自然と子どもたちを保護する自立したコミュニティを作ることによって、カカオ生産者の繁栄を促すーココアホライズンプログラムとは?【後編】

2021/2022年の中間報告書のなかでは、ココアホライズンの3つの柱である生産性、コミュニティ、環境におけるさまざまな取り組みが、私たちの目指す目標に大きな影響を与えていることが紹介されています。ここではその中からいくつかを抜粋してご紹介します。

<前編から読む>

生産性

ココアホライズンアカデミー

ココアホライズンでは、従来のトレーニングに加え、生産者のアカデミー卒業シス テム拡大に継続的に取り組んでいます。これにより、生産者の知識、トレーニングの習熟度を評価できます。

卒業テストの範囲には、適切な生産方法のほかに社会、環境についての項目も含まれます。

実際に、2022年2月末までに106,793人の生産者が卒業しました(前年比+37%)。このプロセスは、個々の生産者に合わせたコーチングへと移行し、より多くの生産者に適切な生産方法を取り入れてもらうための第一歩となります。

農園ビジネスプラン

生産者とそのコミュニティの生活を向上させるためには、「農園ビジネスプラン」が大きなカギを握ります。

生産者の現状を調査した上で、既存の農業モデルを変革し、個々の農園のレベルに応じた新しい農業のビジネスプランを提案します。

2022年2月までに64,994 人の生産者が農園ビジネスプランの提供を受けられるようになりました。これは納入している全生産者の51%に相当します。

コミュニティ

児童労働の撲滅

児童労働の撲滅に関しては、データを利用した介入計画と予防のための活動を中心に行ってきました。

データを利用した介入計画では、国勢調査データと児童労働改善監視システム(CLMRS)に基づいてカカオ生産者コミュニティ を低リスク、中リスク、高リスクに分類し、プログラム実施の優先順位を決定します。その上で、子どもやコミュニティのニーズ、特定されたリスクに応じて介入策を計画し、優先順位をつけることにより、最も効率的な方法でリソースを割り当てることができます。

2021年9月‐2022年2月における調査の結果、児童労働撲滅システムの対象となっている生産者グループは164で、全体の75%を占めています(前年比+131%)。調査対象世帯数 36,754世帯(前年比+556%)の66,924人の子どもたちを調査し、12,563件の事例を確認しました。

つまり、調査を受けた子どもの81%は児童労働に関係していないことになります。前年度に特定された16,485件は是正措置中です。

また、長期的に児童労働の根本原因に取り組むための予防活動も行っています。カメルーンでは、ラジオ番組を通じて生産者とコミュニティの意識を高める活動を開始しました。

村落貯蓄貸付組合の設立と強化

女性の自立促進は、世帯収入の向上や児童労働防止の面でも重要な要素のひとつです。このプログラムでは積極的に投資を行っており、その筆頭に挙げられるのが村落貯蓄貸付組合 (VSLA)の設立と強化です。

この活動は、主に子どもに対する取り組みの推進、女性の自信の構築、生産者への資金調達ソリューションの提供など、さまざまな形でその役割を担っています。

2022年度に入ってから、主にコートジボワール、ガーナ、カメルーンで493の VSLAが設立されました(前年度比+144%)。今後も引き続き活動を強化・拡大することを目標としています。

環境

農園のマッピング

ココアホライズンは、50万人以上のカカオ農業従事者を2025年までに貧困から脱出させるため、カカオ農園のマッピングを行っています。

農園のマッピングによって、調達先の農園の正確な位置を把握し、カカオ保護区で収穫されたものでないかを確認できます。

2018/19年度末の時点で、17万6984の農園と農業従事者の全データをデータベース「Katchile(カチリ)」に入力しました。このデータベースは、位置、農園規模、カカオ農園と農業従事者の社会経済および世帯のデータに関する主要なインサイトを提供するものです。

また2021年には農場モニタリングがさらに整備され、国立公園、狩猟保護区、森林保護区、そして2020/21年からは新たにコートジボワールの分類林から25キロメートル以内の農場を含むことになりました。

2020/21年度には、ダイレクトサプライチェーンに含まれる240,570(+358%)の農場が、保護林エリアから25キロメートル以内に位置していることを把握しています。

カカオ生産者コミュニティが取り組んでいるさまざまな活動

カカオ生産者コミュニティではさまざまな活動に取り組んでいます。例えば環境保護の啓発、アグロフォレストリー、料理用コンロ や日よけ用の木の配布などです。

2022年2月時点で、420万本の日よけ用の木を育成中で、今後それぞれ配布される予定にあります。料理コンロは今後6ヶ月で2,800台を配布予定です。

また、カカオ以外の生産による収入の多様化の支援も行っています。具体的な例としては、養鶏、ウサギの繁殖、野菜作り、石けんの製造などが挙げられます。

ココアホライズン採用例

国内外問わず、多くの企業がココアホライズンのヴィジョンに共感し、製品に使用しています。次にいくつかの事例をご紹介します。

ハンズ・オフ・マイ・チョコレート(ベルギー)

ベルギーのチョコレート会社であるハンズオフは「時にはあえて自分のために選ぶことも必要だ」を信条としています。ハンズオフのウェブサイトでは、ココアホライズンと提携していること、また「フェアチョコレート」について紹介しています。

ハンズオフの製品である一般的な「チョコレートバー」で使用されているカカオ豆は、ココアホライズンプログラムを通じて、コートジボワールとガーナで完全に別管理されて購入されています。どの農園で作られたカカオ豆なのか追跡可能です。

ハンズオフはサステナブルなベルギー産チョコレートを使用した製品をつくりました。そしてそれをさらにおいしくするために、ココアホライズン財団と提携し、カカオ生産者が品質も味も最上級のカカオを生産できるような豊かなコミュニティ作りをサポートしています。

シンプリーチョコレート(デンマーク)

デンマークのシンプリーチョコレートは、自社が販売するチョコレートが生活者だけでなく、カカオ生産国の生産者や村、環境にとってもプラスであるようにしたいと考えています。

シンプリーチョコレートはココアホライズン財団と協力して持続可能なカカオを調達し、生産者とそのコミュニティの繁栄を支援しています。取り組みの一例としては、コートジボアールの女性が果物や野菜を栽培し、家族に第二の収入源を確保する実験的な温室プロジェクトを開始しました。

加えて、シンプリーチョコレートはココアホライズン財団の内部で、独自のコミュニティ開発プロジェクトをサポートしています。

森永製菓株式会社

森永製菓は地球環境への負荷を軽減しながら継続して事業を行うために、原材料の調達から顧客の手元に商品が届くまでの全ての工程でサステナブルな取り組みが重要だと考えています。

人類が生存し続けるための基盤である地球環境の変化を考慮し、森永製菓では2021年5月に2030ビジョンを定め、「顧客・従業員・社会に、心の健康、体の健康、環境の健康の3つの価値を提供し続ける企業になることを目指す」ことを決定しました。

森永製菓は2008年より、ガーナやカメルーンなどカカオ生産国の子どもたちの教育支援やカカオ生産者の自立支援などを継続して行ってきており、2020年9月より、「ココアホライズン認証カカオを採用し、包装材料を環境に配慮した素材を活用した「小枝」チョコレートの発売を開始しました。

森永製菓は、2025年までに100%持続可能なカカオ豆の調達を目指しています。ココアホライズン財団やその他の持続可能なカカオプログラムと提携し、2023年までにすべてのパーム油を持続可能な原料に切り替え、よりサステナブルに貢献していく予定です。

有楽製菓株式会社

印象的なブラックのパッケージが特徴の「ブラックサンダー」を製造する有楽製菓。1994年の発売以来、累計の年間販売本数はおよそ2億本を誇ります。有楽製菓では2020年2月より、ブラックサンダーのメイン商品について、カカオ原料の一部を児童労働撤廃に取り組む原料へ変更しました。

また、2021年3月より、ココアホライズン認証カカオを使用したブラックサンダーミニバーカカオ72%各種の販売を開始しました。

ブラックサンダーを購入することで、カカオ生産者を支援し、子どもたちや自然を守る自立したコミュニティづくりの⽀援につながります。

今後、段階的にサプライチェーンから児童労働を撤廃していき、2025年までに自社商品で使用するすべてのカカオ原料について、児童労働撤廃に取り組んでいる生産者の原料へ変更することを目標としています。

株式会社ファミリーマート

2021年9月に40周年を迎えたファミリーマートは、「40 のいいこと!?」に取り組んでまいりました。その取り組みの1つ、「食の安心・安全、地球にもやさしい」の一環に加え、ファミリーマートのサステナブルな商品として、ココアホライズン認証カカオを100%使用したロカボ糖質(※1)10g以下の「ロカボシリーズ」チョコレート菓子6種類を2021年10月より、全国のファミリーマート約16,600 店で発売しました。

ココアホライズン認証のカカオ原料を使用することにより、カカオ生産者を支援し、地球環境の保護や児童労働の撲滅に貢献しています。

※1:ロカボ糖質(1g=4kcalのエネルギーを持つ糖質量)は、利用可能炭水化物を元に算出したもの。一般社団法人食・楽・健康協会によると、糖質の摂取をあえてゼロにせず、ロカボ糖質を1食当たり 20~40gに、間食のロカボ糖質を10gに抑えることで、食後の血糖値上昇を抑えられるとされる。

最後に

ココアホライズンは「生産性」「コミュニティ」「環境」の3つを主軸にして、今後も以下の点に重点を置いていきます。

  • 100%完全なデータを確保し、より効果的な方法で活動を推進します。

  • 児童労働と強制労働に関するデューディリジェンス(リスクを特定し、それに対処するために取る行動)の強化を各生産地で徹底します。

  • 革新的なプレハーベストアプローチによる生産者への支援を通じて、収穫量と収入の増加を促進します。 

  • これまで以上にアグロフォレストリーや気候変動対応型農業に重点を置き、カーボンニュートラルの達成に向けた活 動を促進します。

  • 第三者実施機関へプログラムを拡大し、既に実施している生産地においては強化していきます。



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