ペアリングイベント2024 / 3rdのはなし ③
ではニ皿目のカクテル。
メニュー構成はリンクを参照ください。
まずレシピ。
なぜこの時期(9末~10頭)でメルバか。
それはこの企画自体が夏予定でこちらからメインをメルバにしたいと言っていたのがそのままスライドしたからです。
ついでに言うと時期がずれ込んでもメルバはツイストできるのが見えていたのでチョイスしたという一面もある。
振り返ると保険かけといてよかった。
なぜ変更が可能かというと、桃も梨もバラ科に属しているので共通点が多いから。
試しに限界ギリギリまで熟させた梨を食べてみると香りの共通項が見つかります。テクスチャは引っかかるけど香りは良くなる(でも梨のアイデンティティは香りより食感だと思っています)。
デザートは割とベーシックな構成。
桃を梨にスライド+ローストアーモンドで香り付けしたバニラアイス、それに桃のソース。
ほぼクラシックレシピに準じたもの。
梨それ自体には香りがないのでソースを使って双方のいいとこどりというデザインですね。
ドリンクはこれを補完しつつ、少し捻りを効かせる。
構成はデザートとかなり近い。アイデンティティは崩さずツイスト。
シロップのオーキッド、和名だと蘭。
バニラも蘭科に属しているのでそこで繋げた。
グラスでも皿でも同じものを使うとしつこくなりそうだったので、少し青っぽい華やかな香りで軽くしたかった。
スロージンはキレの良い甘酸味と複雑性を持たせるため。
最後にラフロイグとローズウォーターでアクセントを添える。
桃や梨は燻煙香と相性が良い…というよりだいたいのものは合う。要は使用量の問題。
しかし香り自体に向き不向きは少しあるような気がしている。
ざっくりしたイメージとして、アードベッグは濃色系のもの、ラフロイグは淡色系のものというのが印象。単にフェノール値の問題かも知れない。
ローズウォーターはバラ科の総まとめ的なニュアンスで加えた。
悩んだところはピーチリキュールとオーキッドシロップ。
リキュールは主張が強く、分量によっては素材を喰ってしまいかねないのだけど、前述したように梨自体の香りは基本的にないと思っていい。だからと言ってなあ…と迷ったけれど、デザートが桃のソースが入るということになったので、ならば!と。
テクスチャは梨、香りはほんのり桃のニュアンスという曖昧な形を着地点とした。
シロップは分量に悩んだ。存在を主張させるボリューム入れると甘くなり過ぎるけど甘味適量だと香りが繊細。どちらを取るかで後者を選択。
あとひと皿あるし、ここで舌へ負担をかけ過ぎるのは良くないと判断。このグラス、香りに関してはかなり詰め込んだ。構造がシンプルなだけにともすれば単調とも取れるので意識して肉付けをした。
メルバ自体を液化させるのは難しいものではない。食べたことがあるバーテンダーならデザインもバランスも取れるだろう。
実は5年くらい前にリクエストされて一度作ったことがある。あの時は作ったカクテルに自家製アイスクリームをフロートさせたと記憶している。
それもあって根幹のデザインはだいたい定まっていて、それをブラッシュアップさせたようなものが今回の形。
ただ、これは野口さんともども揃って一度道を見失った。シンプルなため、発想はどこまでも展開できるが故だと思う。どこに芯を置くか、というのを学べたメニューだった。
特に複数人で行う時はブレないコアやアイデンティティの共有が肝要。やはりシンプルなものほど難しい。