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社会科学

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2022年5月の記事一覧

『戦後"経済外交"の軌跡 : なぜ、アジア太平洋は一つになれないのか』井上寿一著、NHK出版、2012

第1章 [アジアと太平洋のはざまで]1997 アジア通貨危機の勃発によりAPECが目指す自由貿易圏構想は瓦解した。なぜ、アジアと太平洋の連隊が図られたのか

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『日本とドイツ 二つの戦後思想』仲正昌樹著、光文社新書 213、2005

下の文章で書いたような目的で読んだので、関係があるのは第1章『2つの「戦争責任」』と第2章『「国のかたち」をめぐって』だけで、第3章『マルクス主義という「思想と実践」』、第4章『「ポストモダン」状況』は、それ自体は面白かったが、今回の企画とはほとんど関係がない。

読んでいて気がついたのだが、基本的に対象は「知識人」なので、これが国の政治行動に大きな影響を与える一般国民と近いのかどうなのか分からな

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戦後のドイツ・日本の戦争責任や外交を勉強する理由

最近ロシア関係の本ばかりなので、なぜ急に日独の戦後思想、具体的には敗戦をどう捉えたかというテーマは変に思われるかもしれない。

しかし、今回のウクライナ戦争でロシアが「敗北」し、プーチン一味が失脚して、「まとも」な政権が誕生し、ウクライナ政府が求める賠償などの議論になってくると、ブチャなどでの虐殺という問題にロシア人は直面しなければならなくなるかもしれない。これは、特にユダヤ人を虐殺したナチス・ド

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『ロシアの軍需産業 : 軍事大国はどこへ行くか』塩原俊彦著、岩波新書 845. 2003

序章 冷戦期の「負の遺産」0‐1.イラク・北朝鮮・中国とソ連・ロシア製武器イラク戦争の教訓

2003年3月20日からはじまったイラク戦争で、イラク側が使用した武器のなかで脚光を浴びた武器がひとつある。それは、米国の主力戦車M1エイブラムス2両を機能停止に追い込んだとされるロシア製の対戦車ミサイル「コルネット」だ。この真偽はわからないが、
①ブッシュ大統領が2003年3月24日、ロシアのプーチン大

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『現代ロシアの軍事戦略』小泉悠著、ちくま新書 1572、2021。

はじめに―不確実性の時代におけるロシアの軍事戦略「ポスト冷戦」時代の終わり――揺らぐ国際秩序



いずれにしても、米国が国際秩序の揺るぎない中心であるように見えた「ポスト冷戦」時代からほんのわずかに間に、世界のありようは大きく変わり、混沌とした「ポスト・ポスト冷戦時代」へと突入しつつあることだけは明らかであろう。

軍事力の「効用」



ここでは、その出発点として、ルパート・スミスの著書『

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『ロシアCIS経済の真実』ヤブリンスキー編著、東洋経済、1992

訳者あとがき本書の編著者ヤブリンスキー氏は、ソ連急進改革派の少壮経済学者として早くから西側のマスコミで注目されていたが、それでもやはり、氏がもっとも華やかなマスコミの脚光を浴びたのは、1991年10月、主要7ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)の際だっただろう。

タイのバンコクで開催されたこの会議とソ連との協議の場である「G7プラス1」に出席するソ連代表団の団長として乗り込んできたのが、弱冠39歳

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『ロシア市場経済の迷走 : 改革と混乱の五〇〇日』陸口潤編、講談社現代新書1160、1993

プロローグ――経済改革への流れロシア政府はソ連邦が崩壊した直後の1992年1月2日から価格自由化などを導入、市場経済化に向けての経済改革をスタートさせた。



経済改革の中心になったのがエリツィン大統領の下で第一副首相兼蔵相だったガイダル氏ら若手の改革チームである。経済改革はIMF、世界銀行など西側経済専門家の指導も受け、まずロシア経済のマクロ的なシステムを根本的に変更することを狙った。第1弾

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