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掌エッセイ

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心に水を。日々のあれこれを随筆や掌編に。ほどよく更新。
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#小説

【エッセイ】エリンギ教

【エッセイ】エリンギ教

信仰に関するプライベートなことなのであまり大っぴらに話してはいないが、エリンギ教に入信して久しい。

エリンギ教の教祖はもちろん、エリンギ様である。エリンギは美味い。美味すぎる。あまりに美味すぎてその存在を疑う。だってあれ、もとは菌だろう。なぜにただの菌が育つと、あんなに味わい深くなるのか。神秘だ。奇跡だ。

おまけに美味いだけでなく、どんな料理に入れても合うというフレキシビリティ。肉厚で食べ応え

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【エッセイ】弁当屋にいた頃

【エッセイ】弁当屋にいた頃

大学を卒業してすぐ、弁当屋に勤めた。

面接は五分で終わった。その場で「いつからこれる?」とバイトのような乗りで初出勤日が決まった。それが自分の就職活動のすべてだ。

そこは千葉の片隅にある仕出し弁当の工場で、私は配達ドライバーとして雇われた。住み込みだった。特徴のない住宅街にある社員寮はごく普通の一軒家を買い上げたもので、そこに自分も含めて四人の若い男が暮らしていた。

当然、誰も家事などしない

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