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想像力を研ぎ澄ませ。ばちょめん くっきんぐ!①

<はじめに>


料理。それは人の生命、生活、時には心にまでも影響を及ぼし、人間の英知を集約させ繰り出される、至高の芸術作品だ。
料理人の腕から繰り出される、心を打つ演奏。舌を通して聴く、その華麗なハーモニー。素敵な一品に出会うこととは、それすなわち人生をいろどるデコレーションである。

筆者は、全く料理をしない。知識、技術、ゼロである。全く何も作れない。
冷蔵庫をサッと開けて、中の具材を確認し、あれこれつぶやいた後サッと調理に取り掛かれる人達は、逆に頭がおかしいんじゃないかとさえ思う。

ただそんな筆者にだって、美味しい料理を人にふるまいたいという願望はある。
特に日頃の感謝を込めて、大切な方々に料理をふるまい、喜んでいただけたなら、そんな幸せなことはないだろう。自分にだって、その様な想いはある。

それならば、はじめようじゃないか。日頃の感謝を込めて、大切な人へ

ばちょめん くっきんぐっ!


<そもそもそれは何なのか>


ばちょめん くっきんぐ とは、全く料理の知識も技術も持ち合わせていない筆者が、想像だけでそれがどういう料理なのかを予想し、レシピ等を一切見ず、調理、提供する、アバンギャルドな創作料理のことを指す。

記念すべき第一弾をお送りする上で、誰に提供しようか...............

妻だ。

他の記事でもたくさん触れてきたが、筆者にはアメリカ人の妻がいる。心から日々感謝している。そんな彼女に、日頃の感謝を込めて、最高の一品でもてなそうじゃないか。間違いなく、彼女が人生において、一度も口にしたことのない、至高の一品で。

<想像力を研ぎ澄ませよ>

では、何を作ろうか。そっと瞳を閉じ、妻の顔を思い浮かべる。せっかくなら、高級料理を提供したい。彼女の喜ぶ顔が見たい...............…

..........見えた。高級フレンチだ。

高級フレンチを作ろう。でも、フレンチってどんな料理があったっけ。一つわかっていることは、料理の名前がオシャレで、ファンシーで、でも何を言ってるのかよくわからない、そんな料理名が多い印象だ。

高級フレンチの一品の名前。

もう一度、そっと瞳を閉じる。これから自分が作るフレンチ料理、その名前をオリジナルで決めよう。何が見える?名前はなんだ?.........

見えた。

チキンのゴルゴンマッソゥリーヌ 太陽の恵み仕立て


これだ。

ゴルゴンやマッソゥリーヌが何なのかはわからないが、フレンチっぽさと、響きわたる高級感。一つわかることは、チキンだということ。太陽の恵み仕立てだ。

さぁ、最後に完成図をイメージしよう。創作とは、イメージの具現化である。

最後にそっと瞳を閉じる。ゴルゴンマッソゥリーヌってなんだ?何が見える?


なんか白いソース、乗ってね?


<ルールの確認>

ここから自由に羽ばたいていく、ばちょめん くっきんぐ。その数少ないルールを紹介する。

1,レシピ等は一切見ない。" 考えるな、感じろ " 。
2,健康に害があってはいけない、火は通そう。
3,食べ物を粗末にしない。もしあまりに不味かった場合、それでも根性で食べきれる小さな一品にする。

さぁ、エプロンの準備だ。ばちょめん くっきんぐ スタートである。

<創作開始。メモのご準備を>

.........何からしたらいいのだろうか。

ルール1 " 考えるな、感じろ "。

そうか、考えすぎはよくない。筆者が思うゴルゴンを、自由にマッソゥリーヌしちゃえばいいだけだ。

1,【チキンを焼いていく。】

どう焼けばいいんだ。フライパンの上にドンでいいのか。
いや待てよ、よく料理のフレーズで、" 片栗粉をまぶす " って頻繁に聞くなぁ。片栗粉、みんなまぶしてるよね。なんでまぶすんだろう.........まぁいいや、

まぶす


さぁ、しっかり焼いていこう。両面焼かなければならないことぐらいは、知っている。


焼けた。

片栗粉の存在感を全く感じさせない、普通のチキンが普通に焼きあがった。

これが、ゴルゴンスタイルだ。

2,【白いソース作り】

次は、この一品の核となる部分、白いソース作りだ。チキンの上に乗せる、高級品である。

........." 考えるな、感じろ "

冷蔵庫を開ける。視界に入ったのは、ヘビークリーム。これは、本来何に使われるものなんだろう。

まぁいいや.........…入れよう。

再度、瞳を閉じる。頭の中のイメージにあるソースを意識する。ん?このソースは真っ白であるべきなのか?.........

いや、ちょっと緑と赤だ。

冷蔵庫をあける。緑と赤のものをみつける。

きゅうり

すり潰す。
で、入れる。



トマト

すり潰す。
で、入れる。

おぉっ、徐々にマッソゥリーヌしてきたじゃないか。

ここで、もう一手間だ。敏腕シェフというのは、必ず隠し味を持っている。

………

普通にチーズ入れてみる。


おっと、いけないいけない。肝心なものを忘れるところだったじゃないか。



片栗粉、まぶす。

さぁ、火を通そう。フランスが誇る、高級ホワイトソース。泣く子も黙る、秘伝のレシピ。


沸いた。

片栗粉の存在感を全く感じさせない、ホワイトソースの完成だ。

さぁ、お皿に盛り付けていこう。

まずは、先ほど創作し終えたゴルゴンチキンをお皿に載せる。


そして、たった今完成したマッソゥリーヌソースを上から上品にかける。


できたー!父さん、やったよ、僕、料理ができるようになったよ。

ミシュラン5つ星、チキンのゴルゴンマッソゥリーヌ 太陽のめぐ……........…

ん?

……ここで、致命的なミスに気づく。

太陽、全然関係してねぇ。


太陽の恵みが、見当たらない。仕立てているはずの、太陽の恵みが……

“ 考えるな、感じろ “


よし、太陽の恵みが、追加された。

それでは、改めて。

チキンのゴルゴンマッソゥリーヌ 太陽の恵み仕立て

完成!!!


<提供>

現在妻は、自身の部屋でくつろいでいる。その間に、テーブルをセッティングしよう。何せ、高級フレンチだ。テーブルセットにも、こだわりたい。

んー、実に無機質だ。華やかさ、パッションが足りない。
何かいい案はないか........…

あっ

友人と、彼の小さな子供が遊びに来た時用の、テーブルクロスだ。

一気に、華やかになった。

よし、セットだ。


高級フレンチレストラン、ここに開店。


妻の部屋を訪ねる。

筆者「何してるの?もしよかったら、プレゼントがあるから、リビング来てくれない?あ、ドレスとか着なくていいけど、シャツは最低着てもらってもいいかな?」

ドレスコードを設けた。

当たり前だ。高級創作フレンチだ。身だしなみは、整えてもらう。

妻が部屋から出てきた。
テーブルを見る。

妻「はっ?」
筆者「え?」

筆者「まぁ、座ってよ」

筆者「いつもいつも、ありがとう。僕は君が居ないと生きていけないよ。今日はその感謝を込めて、僕から君に、料理のプレゼントだよ。」

テーブルに置かれたバラ。ローソクのライティング。完璧だ。

妻「ありがとう。で、これ、なあに?」
筆者「チキンのゴルゴンマッソゥリーヌ 太陽の恵み仕立て だよ」
妻「は?」
筆者「え?」
妻「ゴルグオン、ムァッソゥウィーヌ?」
筆者「うん。というか、考えないで。感じて」
妻「...…何、それ」

妻が、白いソースをフォークですくい、
妻「これ、なに?」
筆者「マッソゥリーヌだよ」
妻「……それって、日本食?」
筆者「いや、フレンチだよ」
妻「……料理なんて、できたっけ?」

筆者「愛があれば、できないことなんて、ないんだよ」


ついに妻が作品を口にする。

ついに、頬張った。高級フレンチは、妻の口に合うのか。
さぁ、感想をくれ。

妻「愛は感じたよ。でも..…」

「味は感じない」


少し薄口な、繊細な味が難しかったのだろうか。
おかしいな、片栗粉、ちゃんとまぶしたんだけどな。

その後妻が続ける。

妻「でも、カボチャの味は、おいしいよ」

カボチャ、入ってねぇ!


筆者「えっと..…」

塩コショウ、後から振る。

後乗せ塩コショウ。次世代の調理方法だ。



ばちょめん、後半、全部自分で食う。


<総括>


第一回を迎えた ばちょめん くっきんぐ。

想像力を研ぎ澄ませ、料理で華麗なハーモニーを奏でる。

時代が追いつくのか、ばちょめんが逃げ切るのか。

今後も、厨房から動かず、時代をリードしていきたい。

せーのっ

ばちょめん くっきんぐっ!



最後までご一読、ありがとうございます。

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