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ひねくれ偏食家の、読書挑戦録

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「流行っているものは読まない」と意地をはってきた、ひねくれ者(偏食もち)が、本を読み、世界を広げて行く過程の記録もろもろ。 他にも、読書や本に関するエッセイ・コラムを集めています
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#澤田瞳子

仏像にはまった話~運慶の金剛力士像と、澤田瞳子『満ちる月の如し』と

仏像にはまった話~運慶の金剛力士像と、澤田瞳子『満ちる月の如し』と

 好きな仏像は、と問われれば、私は運慶の作った像を挙げるだろう。

 たとえば、東大寺南大門の金剛力士像。

 奈良への旅行で、間近で見た際、私は地面を踏みしめる足に向けて何度もシャッターを切った。

 そこがちょうど目の高さにあったからだけではない。

 重量感、力強さ、存在感…像の持つ様々なエッセンスが凝縮されているパーツと感じたからだ。

 こんなに力強い像を作れる人が、日本にいたのか。

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仏像を見に行く人にオススメしたい本4冊

仏像を見に行く人にオススメしたい本4冊


 仏像、と一口に言っても、様々だ。
 悟りの境地に達した如来、しなやかに体をくねらせ、アクセサリーをふんだんにつけた菩薩、武器を手にした恐ろしげな明王。
 時代によって、また国によって顔が違うのも面白い。(父が出張先のミャンマーで撮った仏像は、アウンサン=スーチーさんにどことなく似ていた)

 そんな仏像を見て回りたい人に、僭越ながら是非読んで欲しいと思う本がいくつかある。

・真船きょうこ『仏

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澤田瞳子さん『龍華記』読了

澤田瞳子さん『龍華記』読了

 いやあ、すごいものを読んだな…

 昨日の夜から読み始めて一息に半分、そして今朝はその残りを、あっという間に駆け抜けてしまった。

 書かれているのは、平家による南都焼き討ちと、そこからの興福寺の復興、関わった人々の懺悔と苦悩、そして救いを求めて生きる姿だ。

 その中に、メインの主人公である悪僧範長と、その従弟で別当として高い身分にいる信円とが配置され、対比される。

 範長は、摂関家という貴

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