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【漫画書評】『ゴーグル』豊田徹也

これですよ、これ! 「アンダーカレント」で見せてくれたあの空気感! 豊田徹也ってヒトは言葉にできない空気感が描けるからやめられない><

ずっと待ってたんですよ。こういうの。

『アンダーカレント』からどれだけの月日が流れたでしょうか。
や、作品はポツポツ出てたと思うんですけど、
いまいち、その、ボクの欲しいところまで到達してない感があって
消化不良だったんですよ。はい。

今回の短編集はきました。
あの画面の奥で流れている青い空気というか、もののあはれというか、
人間の業のかけらのようなものから匂い立つ透明な余韻が。
すごく秀逸なショートフィルムを見せられたあとの読後感。

冒頭の一本目はコミカルなものですけど、
表題作がらみとか、『アンダーカレント』が好きだったヒトは
絶対、必読です。

「ゴーグル」と「海を見に行く」

あのう、前も書きましたけど、人間て、全部言わないんですよ。
なんかそれぞれ、みんな抱えてるんんですけど、
表に出してるのなんて、ほんの一部なんです。
「歩く氷山の一角」なんですよ人間は。

そういう抱えてる人間を説明しないで、
空気で見せてくれる技術あるんですよ。

もちろん、物語が進めば、何を抱えていたのかがわかるんだけども、
そのときに、それまでの空気に輪郭ができて、
そして、そこはかとない余韻みたいな、
もののあはれがたちのぼってくる。

読み終わっても、腑に落ちても、
物語は生きていて、終わってない。
流れてる。静かに流れ続けてる。

これはそういう作品です。

※もののあはれ:ここでは物事や対象に触れて生じるしみじみとした優美繊細な情趣、機微という意味合いで言ってます。

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