【掌編】ともしびの行方
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深い闇の階段を降り
黄金の燭台をたずさえて
神に灯をともしに行く
その厳かな一歩一歩に
確かな祈りが帯びてゆくのを感じる
この世はすべて
目に見えぬ因果で紡がれている
それを
けして観念ではなく
六十兆の細胞が立ち上がるように実感し
体得していくことが
日々の祈りの本質であったように思える
眼前に立ち塞がる罪業の蜘蛛の巣を
不思議と微塵も揺るがぬ
赤々とした蝋燭の炎が
焼き溶かしていく
――と
その先
フードを目深に被った「己」と目が合う
「遅かったな」
「己」の口が少し歪む
心做しか笑ったようにも見える
人の身で過ごせばわかる
思い出すには少々時間がかかるのだ
すべてを受け入れることに
「胆は決まったか」
ああ
言って私はフードを脱ぎ捨てた
これより――
全人類を救いにいく
「皆おまえを待ち侘びていた
――神よ」
踵を返し
一歩を踏み出したその刹那
地上へと続く
昏く冷たい扉の軋む音が
地の底に重く響き渡った
場に残された燭台の灯が
その使命を果たし終えたかのように
静かにすっと掻き消えた
而れど
真実の炎は
いまだ明々と燃えていた
独り歩みゆく神の全身で――
あるいは貴方の胸奥で
――永遠に
【了】
水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。