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半導体徹底勉強会① TSMCはなぜ日本に工場を? 半導体の歴史編。

  • 日本が半導体で一世を風靡していた?

  • 半導体産業が落ちぶれたきっかけは?

  • なぜTSMCは日本に工場を新設するの?

こんにちは、雨不足の場合です。現役東大生です。あり余った時間を使って、今日も経済動向の解像度を上げていきます!

やります!!半導体徹底勉強会!!!
先日、日経平均株価はバブル期の高値をこえ、青天井のゾーンに入りました。
それを牽引したのが半導体メーカーです。
第一回目は、半導体の歴史からTSMCの日本工場新設に至るまで、半導体の動向を追っていきます。

投資家も、ビジネスパーソンも、学生も全員必見!
経済のギモンを今日も紐解いていく!!!


日本が半導体で一世を風靡していた?

-総合電機メーカーの黄金時代。

経産省によると、2019年における世界の半導体の売上のうち、日本企業が占める割合は10.0%だったようだ。しかし1988年時点では日本が世界の半導体シェアの50%以上を占めていたのである。

かつて日本の産業を支えていた半導体産業は、一体どうなってしまったのか。まずは半導体産業と日本の産業動向の歴史を振り返る。

もともと半導体産業は、20世紀半ばに米で発明されたトランジスタに始まったもの。その後、アメリカが軍事・宇宙開発部門などで半導体産業を牽引し、日本が主にラジオやテレビといった家電部門で牽引した。グローバル化がそこまで進んでいなかった当時、半導体産業は一貫して国内生産だったので、日本では半導体製造装置産業も盛んになった。

1989年時点の半導体製造装置メーカーは、世界上位5社のち4社が日本企業だったほどだ(1位:東京エレクトロン、2位:ニコン、3位:アプライドマテリアルズ、4位アドバンテスト、5位キャノン)。

当時日本の半導体産業は、総合電機メーカーが自社内で材料から生産まで行っていた。この構図がのちに日本半導体産業の国際競争力を低下させる一因と化したのである。


日本の半導体産業が落ちぶれたのはなぜ?

−20世紀末、半導体におこった変化。

1990年代後半ごろ、半導体産業に大きな変化が訪れた。それは半導体の高集積化に伴う製造プロセスの複雑化と膨大な開発コストである。

これにより半導体の生産技術よりも設計図に付加価値が置かれるようになり、半導体製造装置の技術が発展していなかった中国や台湾で半導体産業が勃興した。一方自社内で一貫して生産していた日本は、製造工程の複雑化や大量にかかる開発コストに対応できず、国際競争力を失っていったのである。

しかし、日本は製造装置では負けなかった。半導体製造装置を作る上で最も重要な要素となる「精密さ」は、やはり日本企業の得意とするところであり、現在でも日本には世界随一の半導体製造装置メーカーが数多く存在する。


なぜ製造装置メーカーが生き残ったのか。

−構造的な負担が見出した海外への活路。

2020年、日本メーカー製の半導体製造装置のシェアは30%を占めている。半導体産業が衰退する中で、どうして日本には製造装置メーカーが生き残ったのか。

それは独立系の半導体装置メーカーが海外へと販路を拡大させたからである。日本の半導体装置メーカーと半導体メーカーの間には、装置を納品しても検収(装置が正常作動するかどうかのチェック)後にしか代金を支払わないという構造があった。半導体製造装置は検収に1年もかかることもあり、装置メーカーはキャッシュを確保できなかったのである。

そのうち、海外の半導体メーカーが納品時に代金の半分を、検収後に残りを支払うという方式になると、日本の製造装置メーカーは海外に販路を切り替えるようになった。これにより日本の製造装置メーカーは競争力を維持できた。

また、日本の製造装置メーカーは総合電機メーカーが牽引してきたと述べたが、自社グループ内で完結する構造では海外での収益を大幅に上げることはできなかった。こうして親会社にとらわれない独立系の製造装置メーカーが台頭していったのである。

今では、半導体は家電からスマホ、自動車まであらゆるデバイスに必要不可欠なものになっており、その安定供給は経済安全保障の観点からも重要になっている。製造装置産業が生き残ったものの、半導体供給能力が低い日本にとって、その安定供給は喫緊の課題なのである。

レザーテックHPより。半導体の使用先。



TSMCはなぜ日本に工場を新設するのか。

-日本が密かに持つ地政学的な強み。

2021年10月、世界最大の半導体受託生産会社である台湾積体電路製造(TSMC)は、日本で工場を建設し、24年末に量産を始めると発表した。
日本政府は総事業費の半分程度を補助金で支援する方針。経済安全保障の観点から先端半導体を生産する国内拠点が欠かせないと判断した。(日本経済新聞)

日本における半導体産業の動向を振り返ったところで、ここからは以上のニュースを踏まえて、本題に入っていく。TSMCはなぜ日本に工場を新設するのだろうか。

TSMCはファウンドリーで最大手で、世界の半導体メーカーから生産を受託し、設計と生産を分離する方式を築いた。生産規模を確保し大規模な投資を実施し続け、時価総額は59兆にのぼる。

今回TSMCが熊本に工場を新設するのは、最も表面的に言うとソニーグループをはじめとした日本の顧客に半導体を供給するためだ。

ただ、この投資はTSMCの世界戦略の一環でもある。TSMCはこれまで台湾に生産資源を集中させることで低コストオペレーションを続けてきたが、さらなる事業拡大を見据えて世界への生産資源の配分が必要になると判断した。

一つには台湾は中国との地政学上のリスクを抱えているということ、二つには電気不足と水不足で台湾だけでは資源的制約があることだ。各国政府も半導体の安全供給のため工場誘致に乗り気で、お互いの意図が合致している。

台湾は常に中国リスクにさらされており、米国もこの状態を世界的な供給網のリスクになると指摘している。
日本は米国の友好国であり、安全保障の面でも確度が高い。
さらに自動車分野で半導体需給が逼迫している昨今、東南アジアという最大の市場に近い等、やはり日本は地政学的に強い。
おまけに政府が半分も出資してくれるときたら、それはTSMCも工場を建設するになるだろう。


最後に

日経平均が最高値を更新続ける中、みなさんの資産も潤っていることではないでしょうか。
もしかしたら、半導体がよく分からないから・・・という理由で、半導体銘柄を今まで避けてきた人もいるのでは?
ここから先の記事で、半導体について、そして半導体銘柄についてまとめていくので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
これから先の経済を担う半導体について学びましょう!


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学生の私の励みになります…泣

(参考引用:日本経済新聞・半導体業界の製造工程とビジネスがこれ1 冊でしっかりわかる教科書 エレクトロニクス市場研究会著)

presented by 雨不足の場合
経済・株式投資に専念する現役東大生です。有り余る時間を活用して、皆さんの経済への解像度を上げるお手伝いをしたいです。今日も昨日より少しだけ賢くなって資本主義に立ち向かいましょう。
資本主義を勝ち抜くのは、いつだって堅実な冒険家。





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