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「周りをかわいい人で溢れさせたいんです」

「周りをかわいい人で溢れさせたいんです」

その誘いにとても驚いた

駅のホームを出て人混みの中を
早歩きで歩いていた時である

「すみません!」
斜め後ろから女性の声がした

あぁ、よくある美容師さんのカットカラーの誘い、もしくはエステの誘いだろうな、と振り返った
いつもの私なら会釈程度でその場から去るのが常である

「呼び止めてしまって、すみません。あの、かわいいですね!」

そう言う彼女の方がとてもかわいかった
前に出すはずの足を思わず止めてしまった

立て続けに彼女は言う
「わたし、美容師なんですが、」
「周りをかわいい人で溢れさせたいんです」
「すみません、いきなり。でも声かけなきゃって走ってきました。
本屋帰りなんですけど・・・」
照れてはにかみながらそう続けた彼女は
確かに買ったばかりであろう雑誌が入っている袋を持っていた

目を輝かせながら話す彼女がかわいかったからかもしれない
かわいいと言われてお世辞でも嬉しかったのかもしれない
ただの誘い文句で特に意味は無いのかもしれない

それでも”かわいい人で溢れさせたい”という言葉が真実な気がして
わたしの髪を初対面の彼女に任せたい、と思ったのだ

”かわいい”という言葉には色んな意味になり得ると思っている
しばしば議論に上がる、
「女はなんでもかわいいと言い過ぎ」説はあながち間違っていなくて、
女に限定されるかは統計的に分からないが、
色んな意味になり得るからこそ言い過ぎだと認識されるのではないだろうか

さて先日、
そんな出会いをした美容師さんを訪れたのだけど・・・

やっぱり彼女はかわいかった

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