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読書会「ある男」✧♡

 今回の読書会は「ある男」【平野啓一郎】だった。
 私の感想は以前に投稿した記事にあることをそのまま発表👇。

Aさん
 この本を読んでいる最中に、眼を休めなさいというドクターストップにかかって、半分ぐらいしか読んでいない。その中での感想です。
 人の一生を交換する。今では犯罪ですが、捕まってもいいほど、自分の人生を否定している。その究極の形が自殺だと思うが、この「ある男」はそそのかされたのか、それとも自分から?と不思議な気持ちで読み進めた。
 彼女との生活の安らぎ。続くとは思ってはいなかっただろうけど、実は優しそうな人だ。殺人者の父を持つから、自分の戸籍を捨てたと思うが、幸せな死だったのではないかと思った。父は憎んでも憎み切れない存在であるということ。

Bさん
 いろいろな人の人生が錯綜していて頭が疲れた。この小説は探偵小説であっても可笑しくないのに、弁護士が話を進める。弁護士に設定したのは色々な立場の人を描きたかったのではないかと思う。自分の戸籍から逃げたい人生。辛い人生。妻との安らかな生活。短かったけれども、ここらへんで退場したほうが良かったのではと彼が亡くなって思った。

Cさん
 「傲慢と善良」という女性が書いた小説を直前に読んでいたが、読みやすかった。この小説は男性作家のものだからか、非常に読みにくく感じた。
 男性と女性の脳の違いを書いた本もあると思うが、それもあるのか?
 最後に出てきた息子の詠んだ俳句。衒気が鼻に付くという批評があり、意味が分からない言葉だったので調べたら、見せびらかすことという意味が出てきたが、よくわからなかった。
 罪を犯すということはそのことが親戚家族まで広がる。読んでいて辛くて悲しい話だ。しかし子供たちは素敵な子供さんで、ある男が暮らした3年9か月は幸せなモノであっただろうと思った。

Dさん
 戸籍の交換で他人の人生を歩むということ。戸籍のロンダリング。
 ある男の3年9か月の幸せ。
 最近の事件で指名手配の男が偽名で暮らしていたのに、最後は本名で亡くなった。どんな人生でも、最後は自分にもどりたいのか?と思ったので、ある男が、自分が死んだ時にどう思ったのかがとても気になった。

Eさん
 推理的な興味で読んでいた。どんどん暗い話になっていくが、最後はみんな幸せになっていくんではないかと思った。大祐と美涼もうまくいくのではないかと期待した。
 最後の息子が作った俳句のところがとても好きだ。

蛻(ぬけがら)にいかに響くか蝉の声

 ある男の妻に、2人の子供がいてよかったと思う。

Fさん
 この「ある男」はすごくいい人だった。私は好きだ。
 この人は本当の自分に戻りたくは無くて「ある男」として暮らした3年数か月が幸せだったろう。彼は自分が戸籍をもらった男の人生のプラスもマイナスも丸抱えしようとしている。彼、そのものになろうとしている。
 
その思いが切ない。
 彼が可哀想なのは、彼の父親にそっくりなことだ。他人に変身した人生を送りたかったのだろう。弁護士が、彼に興味を持ったのは、彼の元々のクライアントである妻の結婚相手だったからではないか。
 私が思うに本物の大祐と美涼の関係はそれに比べると弱くて、2人の交際の復活はあり得ないと思う。(Eさんと逆の意見で一同大笑)
 美涼さんによろめかなかった城戸は、つまらない男(笑)というか、年を取っていたのだと思う。

Gさん
 彼の小説の「マチネの終わりに」というのも読んだが、文章がお洒落な人だという感想。それが反対に回りくどいと言う風にも思われるのだろうか。
 この小説も書き手の繊細さが散りばめられている。
 小説の中に出てくる在日の背景は、五月蠅いという意見もあるけれど私はこの小説に必要なものだと思った。付随するものと本質は違う。それを際立たせるものとして、その設定は必要なのではないかと思った。
 この小説には素敵な言葉がいくつかあった。

「未来のヴァリエーションって、きっと無限にあるんでしょう。でも、当の本人はなかなかそれに気づけないのかもしれない。僕の人生だって、ここから誰かにバトンタッチしたら、僕よりうまく、この先を生きていくのかもしれないし」

「原誠が、おそらくは谷口大祐本人よりも美しい未来を生きたように…」

「わかったってところから、また愛し直すんじゃないですか?一回、愛したら終わりじゃなくて長い時間の間に、何度も愛し直すでしょう?いろんなことが起きるから」

 この美涼の言葉のように「ある男」の妻は、自分が結婚していた男は誰だったのか?と自問自答しながら、なんども「ある男」を愛し直しているのではないかとこの小説を読んで思った。
 そして、その人の本質を愛し直したような、恋愛小説だったと感じた。
 
 

表紙の彫刻家アントニー・ゴームリーの作品

やはり、1人で読んでいるより面白い。みんなの感想を聞くのは。

 今年度、最後の活動だった。
 来年も、この読書会を楽しんで行こう✧♡







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