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退職の練習⑪ラーメン詐欺

 一昨年、去年から、学校の近所の大好きなラーメン屋に恩返ししようと思って、ぼちぼち、卒業生とかにラーメンをおごる様になった。
 っていうか、退職なので、4月からはおごれるかわからんな?と思って、頑張って絵を描いている子には、
「ラーメンおごる!」と宣言してきた。

 でも、それが忙しくて、全く実現できてないと言うと、
 向かいに座っていた同僚が、
「先生、それ、ラーメン詐欺じゃないですか?」
と言ってきた。確かに、おごるおごるといって、何もしないのは、
オレオレ詐欺ならぬ、ラーメン詐欺と言って正しい。
 ほんとうは、相手も自分も、忙しい笑。
 自分は早くこの学校を卒業したいし、卒業生は、新天地での大学生活が
待っている。在校生は、新入生歓迎黒板アートを一日も早く完成させたい。
 
 互いに、忙しさを抱えつつ、ちょっとこの他人に「ラーメン詐欺」と
言われた事態を解消したいと思った。

 うちのダンナが若いころから通っているお気に入りの町中華。
 我々夫婦は土日のランチの外食を楽しみにしているが、
利用する数少ない定番の店が、「珉珉」という白銀にある町中華である。
 自分の利用する好きな店が混むのは嫌だけど、自分のnoteで言うぐらいは大したことないし(←私のブログは影響力が無い笑)ちょっと若い世代に受け継いでもらいたいので店名を出した笑。
 先日、「珉珉」のおやじさんとおかみさんに、コロナで、コロナ後も、客足は戻ってきていないと言う話も聞いた。

 うちで宝くじがうっかりあたったら、ボーナスをプレゼントしようと思っている町中華が2つある。(←最近は宝くじ買ってない)「珉珉」もそう。
 いずれも夫婦で何十年も頑張って働いている町中華だ。
 この話を、私の利用する美容室でしたら、
「うちはその対象にならないんですか?笑」と返されたが、やはり、私もダンナも2人ともお世話になっているというのが条件である笑。
 
 そういう大切な店で、生徒におごりたいという話を、ダンナにしたら、
ダンナはなぜか、簡単には喜ばない。
「お前な、生徒におごりたいからといって、あの店に何人も連れて行って、おやじに迷惑かけるんじゃないぞ!」とむしろ、不機嫌であった。
 ダンナの話をちゃんと聞くと、同じ鍋を使わなくてもいいよう、
我々が頼む2品は、ラーメン系とご飯系から一品ずつにしたり、
「俺は、おやじの体調まで気にかけてラーメンを頼んでいるんだ」と言う。
 だから私が生徒をたくさん連れて行くことが、どんだけおやじに迷惑かけることか!と語る。

 うちのダンナの繊細さ、奥深さには全く、驚く笑。

 私もその話を聞いて、「珉珉」には、2~3人しか連れて行ってはいけないなと自重しながら生徒とのタイミングを図った。

 春休み、もう大学への新生活が決まっている3年生に、まだ、持って行ってない作品があるよと連絡する。
 みんなが揃ったらラーメン屋に行ってもいいけど、と。
 全く返事が無いので、今日は無いな?とのんびりしていると、
突然、やつらが11時半ごろ来て、私におごられる気満々だとわかった笑。
 返事しろよ!と思う私。
 その私が最もラーメンおごりたかった部長副部長は、私の片腕ともいうべき頼りになる連中で、彼らの御蔭で、今まで、突然計画を建てた美術部の企画が成功してきた。
 そして彼らのいいところは、今どきの高校生とは違って、まるでlineをチェックしない、または反応も返さないと来ている笑。

 つまり、愛すべき連中である。lineとかどうでもいいところが素敵笑💖

 その2人に加えて、卒業して、合格したのに、なぜか、学校に漫画を描きに来ている漫画家志望の女の子がいた。
 漫画家志望と言うだけで、高校時代の自分と重なる同志のような女の子。

 3人で「珉珉」に行き、思う存分、好きなラーメンや、ギョーザ、炒飯をおごった。まさか彼らが来るとは知らなかった私は、おかみにゆるされて、ダンナが作ったお弁当をそこで食した笑。

 楽しい時間だった。

 食べ終わって会計をすますと、おやじさんにいつも一言二言絡んで、店を去るのが楽しいのである。
 おやじさんは、いつもより饒舌で、
「あんたたち、大学行くのか?」
「おれも東京の大学に行った。東京のどこの大学でも、トウキョウダイガク」とホラを吹いている。愛想よく手まで振っていた。

 後日、男子を2人連れて、「珉珉」へ。

 1人は本当に美術を頑張って、絵がぐんぐんうまくなって、ごく最近までやっていた新入生歓迎黒板アートで、大活躍していた男子。(冒頭の写真のオレンジのつなぎ来ている奴である)
 しかもバドミントン部との兼部である。彼の描いている深いテーマの絵から、君には美術が向いているんじゃないのか?と美術の進路に誘った男子。
 彼を主人公に、私が漫画描けそうな気がするわ笑💛

 もう1人は、男子バスケ部との兼部の男子で、ほとんど美術部の活動には参加できていない。ある時、自分は、美術部のlineに、勉強でもなんでも一番とったら、ラーメンおごるから報告せよ!と言ったのである。
 そうしたら、彼が、ある時、スポーツテストの結果、学年1番の結果を持って、わざわざ私に見せに来た。
 彼は、もともと、そんな美術を進路でやっていこうというタイプではないのだが、彼のクラスの美術の時間の楽しさと、私が、毎年男子バスケ部には兼部している男子がいるんだよ?という私の誘い文句に、
「ま、おれ、美術部に入ってもいいっすよ」というノリでキタ男の子だ。
 どっちも、なんて!かわいいんでしょう笑!

 食べ終えた後、またおやじにからもうとしたら、おやじはクールで、
女の子たちの時と反応が全然違う。
「あれ、女の子たちにはもっと愛想よかったですよね?」と私。
「あんた、何年、教師してるの?そんなこともわかんないの?」とおやじ。
みんなで大爆笑して店を出た。

 ああ~よかった。
 ラーメン詐欺にもならなかったし、おやじさんに新しい顧客も紹介できたかもしれない。

 美味しかったし、楽しかった。
 よかったよかった!

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