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河合隼雄を学ぶ

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河合隼雄先生の著作や関連書籍から、河合隼雄先生の思想を学んでいきたいと思います。
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#ユング

河合隼雄を学ぶ・1「コンステレーション」

河合隼雄を学ぶ・1「コンステレーション」

ユング心理学における「コンステレーション」という概念を知った時の衝撃は大きかった。

もともとは「星座」を意味する英語だが、ユング心理学では、布置とか、配置の意である。

星座は、もともとはただの点である星々を繋いで、夜空に壮大な世界を見たことから始まっている。

一見、無関係に、偶然に配置されているとしか思えない数々の出来事が、繋ぎ合わせて見てみたときに、思いがけず、全体的な意味のあるひとつの世

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河合隼雄を学ぶ・8「母性社会日本の病理③」

河合隼雄を学ぶ・8「母性社会日本の病理③」

(前号の続きです)

ところで、この本の第二章として、【ユングと出会う】という章が挟まっている。日本社会の原理を、ユング派の視点から考察するための前提として必要な章である。ユング派の心理療法家である河合隼雄には、ユングに関する著書が多数あり、今後紹介している機会も多いと思われるので、今回は、この本の中で印象的な部分を抜粋するにとどめたいと思う。

【第二章:ユングと出会う】

・夢こそは、人間の内

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河合隼雄を学ぶ・9「母性社会日本の病理④」

河合隼雄を学ぶ・9「母性社会日本の病理④」

(前号の続きです)

【第三章:日本人の深層心理】

河合隼雄はまず、「自我」を「われわれの意識体系の中心」と定義する。そして、私たち日本人の自我は、西洋人のそれとは著しい相違があるという。

ユングは、「西洋人は、意識というものを自我なしで考えることはできないが、東洋人は、自我なしの意識ということを考えるのに困難を感じない」と述べている。つまり、西洋人にとって、意識は、自我を中心としてそれに関連

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河合隼雄を学ぶ・10「これからの日本①」

河合隼雄を学ぶ・10「これからの日本①」

この本は、河合隼雄がさまざまなところに呼ばれて講演したものの記録集である。

テーマは講演ごとに違うのだが、すべて「これからの日本」ということに何らかの形で関連しているようだ、と河合隼雄もあとがきで述べている。
それぞれの講演から、特に印象的だった内容を紹介していきたい。

【心の子育て】

小・中・高校にスクールカウンセラーが入るようになり、ある中学校で、茶色い髪でピアスをした子がやってきた。は

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河合隼雄を学ぶ・16「中空構造日本の深層①」

河合隼雄を学ぶ・16「中空構造日本の深層①」

「中空構造」「中空性」ということが日本人の基層心理を説明するのに重要な観点であり、欧米の文化の基本的な在り方と明らかに異なる点である。この「中空構造」「中空性」について掘り下げているのが本書である。

日本と日本人を考察しつづけた河合隼雄の論の中でも、この「中空構造」「中空性」という概念は大きなものだと思うので、本書を丁寧に紐解いてみたい。

【神話的知の復権】

本章で河合隼雄は、「科学の知」に

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河合隼雄を学ぶ・20「魂にメスはいらない-ユング心理学講義-」

河合隼雄を学ぶ・20「魂にメスはいらない-ユング心理学講義-」

今回は、河合隼雄と詩人・谷川俊太郎の対談である「魂にメスはいらない」を取り上げたい。谷川俊太郎が聞き手となり、河合隼雄が自らのユング論を様々な角度から語っている。谷川俊太郎は単なる聞き手ではなく、自らの詩作のうえであらわれる無意識の問題などを照らし合わせながら、河合隼雄の話をさらなる深みへと誘っていく。

対談形式の本は、なかなか体系的にまとめられないので、印象的な発言を抜粋していきたいと思う。

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