洗濯竿と無口な夫

束の間の休日。

最近の私は夫が起きる前にこっそりと筋トレをする。

しかも40分。

我ながらえらい。

自分、よくやってる（笑）

たまに夫が早く起きてきたときには

すぐに筋トレをやめて

何事もなかったかのように

「おはよう」という。

しかし、夫は「おやすみ」といってまた寝室へ行く。

多分、夫は気づいてる。

私が筋トレを頑張っていることを。

だって汗だくだし。（笑）

そしてその姿を見られたくないと思っていることも。

だから

朝なのに「おやすみ」と言って

二度寝するふりをしているんだと

わたしは思う。

そして今日は

言葉足らずだけど、無言の配慮が得意な夫と

久しぶりの休日だ。

モーニングへ行こうかとも誘ったけど

冷凍してある大量のコストコのピザを思い出し

「コストコのピザでおうちモーニングにしよう」

と誘った。

見た目はそれっぽくなったし、よしとしよう。

休日が重なってもお互いに

半日は自分のために使うことが多い。

夫はジムへ行く。

「ちるのために鍛えてくるよ」

と言って毎回行くけど

その筋肉が私のために役立ったことはまだ一度もない。

でも、その言葉をいつも発する夫は

なんか可愛いと思う。

「ジム行く前に洗濯竿、上げといてくれる？」

と頼んだ。

一昨日からの台風で風が強かったから

竿を下ろしてあった。

今日こそは外で洗濯物を干そうと思っていた。

「あいよ」といい

夫は黙ってベランダに行き、竿を上げはじめた。

少し風が強いけど、竿を上げた。

太陽がリビングに差し込んだ。

夫が洗濯竿を上げている後ろ姿にとてつもなく

幸せを感じ、目に涙が溜まった。

理由は分からない。

台風のあとだけど、風が強くて

でも少し穏やかな午前。

リビングに戻った彼は

私に言ったのか独り言なのか

分からないくらいで言った。

「涼しいね、今日」

「涼しいね、今日」

と返した。

何気ない、休日。

台風が過ぎ去った平穏な平日。

そしてお互いのプライベートタイムを

過ごした午後からは

お参りに行く約束をした。

1か月前にお腹の中で亡くなった「おまめさん」

2度目の流産だった。

彼は言った

「おまめさん2号、1号と一緒のお寺でお参りしよう」

と。

幸せで平穏な毎日の中にわずかに残った苦しみを

彼は半分持ってくれた。

あいかわらず、無言で。無表情で。

筋トレの成果かな？

これが

「ちるのために鍛えてくるよ」

だったのかもしれない。