見出し画像

誰かを応援すると、人はちょっと元気になる。

「宇宙まお」がデビュー10周年記念の作品を創るために仲間を募るプロジェクトを開始した。

彼女はこれまで、プロサッカーチーム「水戸ホーリーホック」の公式応援ソングアーティストとしての活動や、「ROCK IN JAPAN」を代表とする様々なフェスやライブにて活躍しているシンガーソングライターだ。

通称「まおぴ」。

そのまおぴの10年間の集大成として、ファンの皆さんも巻き込んでCD制作をしていくというこのプロジェクトに僭越ながら僕も少しだけ関わらせてもらっている。

それはプロジェクトのサポートメンバーとして。
そして高校の同級生として。

このnoteでは準備を進める中で感じた今回のプロジェクトの意義や、個人的な想いをつらつらと書いていきたいと。

「アフロ」と「こじらせ」

先述の通り、まおぴとは高校時代の同級生である。僕の中で非常に印象に残っている存在だった。しかし、振り返ってみると高校時代に彼女と言葉を交わしたのは数回あるか。もしかしたら直接話したことは無かったかもしれない。

それでも彼女が記憶にずっと残っているのは、間違いなく「アフロ」と「僕のこじらせ」のせいだと思う。

当時から彼女は「まおぴ」の愛称で呼ばれていて、違うクラスだった僕にもそのあだ名が耳に入ってきていた。校内でバンドを組んでいるらしい。ギターをやっているらしい。見た目はおとなしそうな子だな。そんな印象を勝手ながら抱いていた。

けれどいつだっただろうか。おとなしそうと思っていたまおぴは

突然アフロになった。

注:まおぴではありません

その時の衝撃を今でも覚えている。学校の廊下にアフロの方がいるという事実もさることながら、周りに迎合することのないユニークな髪型で自己表現しているその姿に僕はひとり、心震わせていた。マンガの中でしか見たことがなかったアフロ。自分にはできないことをしている彼女に一種の憧れのようなものを抱いていたように思う。

当時の僕はというと、毎日グラウンドで泥まみれになるラグビー部員である。夢の花園を目指し、青春をラグビーに捧げる日々を過ごす。一方でラグビーとは真逆の音楽や芸術領域で自己表現をできる同級生に、僕は間違いなく惹かれていた。

文化祭でのステージで披露される軽音楽部の演奏。
椎名林檎、歌舞伎町の女王。
ニルヴァーナ、Smells Like Teen spirit。
銀杏BOYZ、駆け抜けて性春。

6弦・4弦をかき鳴らす彼ら彼女らに、僕は羨望の眼差しを間違いなく送っていたと思う。弾けもしないのに、学校帰りに山野楽器や島村楽器へ通ってはギターやベースのカタログを読み漁って「いつかはGUILDのアコギを持ちたいな。」「SquireではなくFenderが欲しいな。」と夢想に耽っていた時期だった。

ちなみに高校生あるあるかもしれないこの種の憧れを、実は今でも持ち続けており、「文化祭でいきなりバンド演奏することになったぜ〜!え、ちょっと待って…全然練習できてねえ!やべえ!どうしよう!」というシチュエーションの夢を30歳を過ぎてもたまに見てしまう。

これはまおぴです。

僕は永遠にこじらせている。

そんなこじらせた僕は、無意識のうちに軽音楽部や藝大・美大志望の友人が周りに多くなっていった。自分にないものをもっている彼ら彼女らに近づきたい。自分の中でもなんらかのクリエイティブな領域を確立して、彼ら彼女らのような人たちと一緒に何かを成し遂げたい。そういう想いが気づかぬうちに積もり積もっていたように思う。

言い換えればクリエイティブへの憧れと渇望がとりわけ強かった学生時代であった。

その中心にまおぴは確かにいたのである。

まおぴとの再会


高校卒業後、大学、社会人と歩みを進めていく中でまおぴと再会することは一度もなかった。けれど、「ROCK IN JAPAN」や「COUNT DOWN JAPAN」に出演する彼女の情報は自然と僕の中に入ってきて、一方的にキャッチアップをしていた。大舞台で活躍する同級生にリスペクトと感嘆をすると同時に、自分もクリエイティブな活躍をしてどこかでまた人生の線を交わせられたらいいな、という気持ちが肥大していたように思う。

そんな気持ちを抱きながら社会人になり、広告クリエイティブをベースにしたプランナー、コピーライター、文筆調香家のキャリアを重ねていった社会人10年目の8月。人生とはいつどうなるかわからないものだ。共通の友人からの飲みの誘いで高校卒業ぶりにまおぴに再会し、今回のプロジェクトは始まったのであった。

15年ぶりに会うまおぴとは何から話そうか。自称「口下手」の僕は、話のきっかけ欲しさとミュージシャンへのリスペクトの象徴として、江口寿史の描いた銀杏BOYZのTシャツをその日の服にチョイスしたことをここで白状したい。

僕ではない

「それ、銀杏だよね」

と、優しく拾ってくれたのにそこまで話を広げられなかった夏の夜を、これから銀杏BOYZを聴くたびに思い出すと思う。

誰かを応援すると、人はちょっと元気になる。

"宇宙まお"の一部であるあなたが、あなた自身を歌のなかに見つけられるような、そんな作品にしたいです。
Makuakeプロジェクトページより

そう語ってくれるまおぴが、いわゆる応援購入(クラウドファンディング形式)でプロジェクトを実施することの意味を、僕はいま一度考えてみる。もちろんそれは、作品を制作するための資金調達という意味もあろう。けれどもそれ以上に「制作プロセスの共有が新たな価値を生み出す」ということにこの取り組みの意味があるのではないかと思うのだ。

既存のファンは、応援の気持ちと日頃の感謝の気持ちを込めて純粋に購入をするかもしれない。

水戸ホーリーホックサポーターは「戦友」の挑戦を後押しするために購入をするかもしれない。

このタイミングで出会った新たなファンは、挑戦する彼女に自分を重ねて購入をするかもしれない。

僕はというと、高校時代から抱えている音楽への憧れを彼女に託して購入をしているかもしれない。

手を振るでもなく。声をかけるでもなく。

限られた期間内で「購入」という身銭を切った一歩踏み込んだ応援をすることで、自分も制作プロセスの一部になれる。

すると、どうだろう。
不思議なもので、僕らはなんだか嬉しくなる。ちょっと元気になる。普段の買い物ではあまり湧き出ない感情がそこにはあり、それが新たな価値の一つとも言える。

「誰かを応援すると、人はちょっと元気になる。」
少なくとも僕は、これを書いているいま、ちょっと元気になっている。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

読んでいただきありがとうございます! 執筆の励みになりますのでもしよろしければサポーターになってくださると幸いです!!😊