文香ヒロ / AYAKA HIRO

文筆調香家。調香は文筆。 空間における香りのコンセプト設計から調香までをデザインしてい…

文香ヒロ / AYAKA HIRO

文筆調香家。調香は文筆。 空間における香りのコンセプト設計から調香までをデザインしています。日常をリリカルに。

マガジン

  • 100文字詩

    詩は言葉の寺。 100文字の詩をしたためていきます。 気軽に、きちんと。 制約の中にある自由を。

  • 自分が書いた詩をまとめていきます。

  • エッセイ

    自分が書いたエッセイをまとめています。

最近の記事

  • 固定された記事

おじいちゃん、インパール作戦について教えて欲しいんだ。

今年も大阪に夏が来た。 近鉄電車に揺られ上本町駅で降りる。 全身にまとわりつく湿気とアスファルトから照り返す日差しが、東京のそれとは一味違うことを教えてくれる。 私は一人、墓花を手にさげながら連綿と続く先祖たち、そしてインパールの地で散った祖父の兄に思いを馳せていた。 おじいちゃんの話を聞かせて欲しい東京のスタートアップでせわしく過ごす日々の中、ずっと先延ばしにしていたことがあった。私はふと思い立ち、それについて大阪に住む祖父(93歳)に電話をかける。 「おじいちゃん

    • ファーストシューズ

      前かがみになりながら 膝を小さく折りながら たんぽぽが根を張るほうへ 手を差し伸べる そちらから芽出る小さな手は 迷いなく たった一本 人差し指を むんずと包みこんだ おろしたてのスニーカーは 一定のリズムを まだ知らない

      • 指さし

        ちいさな指を一本一本 まじまじと 眺めながら 舐めながら 確かめてみる 関節と関節は肩寄せ合い グー、パー パー、グー チョキはまだできない けれども 指さしするのはお得意で 今日もパパに 桜が咲いているのを 教えてあげました

        • カウントダウン

          明滅する心拍 去り際のまたね パパ お父さん オヤジ ママ お母さん オカン 3 耳をふさいで 2 目を瞑っても 1 高らかなUNO 夕暮れを頬張る口 肩に座るよだれ 胸に刻まれた鼻水  UNOを言い忘れたら また訪れるだろうか

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        おじいちゃん、インパール作戦について教えて欲しいんだ。

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          12本
        • 10本
        • エッセイ
          24本

        記事

          宝石

          パン屑の宝石を拾って 人差し指から離陸する 上空70cmを右から左へ旋回し 真新しい前歯は 確かめるように宝石を受け入れた パン屑は喜色 灰色の屑も塵も 彼女につままれた瞬間 喜色となる 私達が忘れた色がそこにはあった

          親友

          イルミネーションを 電気飾りというあまのじゃくは 12月に浮かれることのない あなたへの慕情 人間で詰まりそうな表参道を眺めて バカみたい と呆れる あなたの右手を そっと引き寄せて バカみたい と浮かれながら 歩けたなら

          よだれ顔

          とかく 語りたがりな私たちは いつしか饒舌に ロジカルに 時に エモーショナルに 手から口からプレゼンをする けれども 言葉はあればあるほど 分かり合えず 伝わらない そうした脆さと未熟さを よだれ顔で笑う 赤子が教えてくれる

          平成ガラパゴス

          触れるとベタつき 溶けて無くなる イヤホンのスポンジ カセットテープは巻き戻ることもなく 燃えるゴミの袋 部屋の片隅に残るのは 充電器が無い二つ折り電話 電池パック裏のプリクラ 保護を外せないまま 底に溜まるメッセージ

          手のひらのおむつ

          ありがとうに重さがあるとしたら たっぷりの水分を吸った おむつの重さだと思う 生命活動の循環に 有り難い とささめくのは 私であり お隣のママであり 戦地のパパであり 亡命した老人だった 忘れてしまいがちな おむつの重さよ

          手のひらのおむつ

          17時のトス

          体育館の水銀灯は くゆら ゆらり 急ぐことなく明滅し 西陽は沈む 天井に食い込んだ毛羽立ちバレーボールは 片方だけの上履き達と諦め顔で見下ろしていた 私はシューズの裏を素手で舐めて もう一度 もう一度 真上にトスを上げる

          プールサイド

          チョコミントの空 水泳帽の網目に 世界の全てが乱反射した ビート板と臀部の間には あどけない約束が膜を張り 夕方5時の合図で滴り消える 遠くへ引っ越したあなたの名前を ふと口に出してみると 喉元はこそばゆく震えていた

          MiniDisc

          全然好きでもないJ-POPの 手作りオムニバス MDの中に1文字1文字 タイトルを入れたあなた 打っては消して 打ちすぎては打って 正方形に焼き付けた文字は 曲名を借りた告白 実家のコンポはずっと MDを飲み込んだまま

          立つ

          つかまり立ちをし始めたあなたは 得意げに笑い 無垢に喜ぶ あなたの立つは 時折脱力しながらも 確かに地球を掴んでいた 足裏は重力を受け止め ぷくり膨らむ皮膚は 点から面になる いつしか忘れた喜びを あなたは教えるのだった

          ようこそ、赤ちゃん。あなたの「美味しい」のそばに。

          ハロー、ワールド。2023年3月25日。午前5時13分。我が家に第一子の女の子が誕生した。小さな手足を懸命に動かしながら生きようとする姿を見ると、自分の「生きる」をサボってはいけないと感じる。生命の尊さや母親の偉大さを実感する出産という場に立ち合わせてもらったことは一生の財産だろう。 私は妻や関係者の方々にただただ感謝をしながら、ひたすら我が子に声をかける。 「かわいいね〜。かわいいでちゅね〜。(以下∞繰り返し)」 生まれた我が子を目の前にして親の語彙力は皆無となること

          ようこそ、赤ちゃん。あなたの「美味しい」のそばに。

          「待ち時間」の中にある豊かさ。僕はもうすぐパパになる。

          「待ち時間」と聞くと何を思い浮かべるだろうか。 僕の場合は、エスカレーターでの待ち時間がまず浮かぶ。歩みを止め、その場で立って到着を待つというのがなかなかできない。根っこにいらちな関西人の血が流れているのだろう。もはや階段を歩く。なんなら階段で一段飛ばしで駆け上がる。脚の筋トレにもなるし、心肺能力も高まる。一石三鳥やで。 もしくは、病院のそれであったり。人気ラーメン店のそれであったり。待ち時間というと長く退屈な時間を思い浮かべることが多い。 それは見方を変えると、この資

          「待ち時間」の中にある豊かさ。僕はもうすぐパパになる。

          まおとりどり。宇宙になって、まおになる。

          わからないものです。 人と人の「縁」がどこでどう繋がるかは本当にわからない。 ましてやそこで繋がった人と一緒にチャレンジを重ねられるなんて思いもしていなかった。 ーー来たる2023年1月13日(金)@吉祥寺STAR PINE’S CAFE。 シンガーソングライター「宇宙まお(以下まおぴ)」の10周年記念ライブにて文筆調香コラボレーションをすることになりました。 まおぴは高校の同級生ではありますが、当時ほとんど接点はなし。けれど去年の夏、15年ぶりに再会していろいろと意気投

          まおとりどり。宇宙になって、まおになる。