雪を見上げて深呼吸すると、伝統技術が感じられたお話。
その日、名古屋は珍しく大雪に見舞われていた。雪は静かに音を立てながら積み重なり、足元はギュギュと雪が圧縮される音を奏でる。空気はピンと張り詰め、大きく深呼吸をすれば、普段であれば気づかないようなささやかな冬の香りが鼻腔を震わせた。
雪が、私の五感をいつも以上に研ぎ澄ませてくれていた。
その日、私は「写真×香り」の個展を開催しており、最後の在廊のために名古屋にいた。
特段、友人や知り合いもいない土地なので個展在廊以外にすることがなかったのだが、ひょんなことから東京で知り合