親ガチャとアルコール依存症

本当は映画論評の方に進みたかったんだ。
でもオギャアと生まれた時点で、評論家になるべくしてなったような人間との家庭内インフラ・家庭内ロジスティックスの差が大きすぎる。
これが親ガチャ？　と言えばそれまでだけど、ウチの親はしっかり映画以外の家庭内インフラ・ロジスティックスを整えていたわけだから、まあ、進んだ道が悪かったとしか言いようがない。

さて、あるとき先輩の母親が劇評家っぽいことしてるって耳にして、映画とは違うけど、それはそれ、これはこれ、てなわけで、無理やりお邪魔してどんなもんか話を伺おうとしたの。評論家とはなんぞや、と。

そしたら彼女、重度のアルコール依存症なんだって。みりんを飲むほど。料理酒じゃないよ、みりんだよ。
いわゆるキッチンドランカーだね。

だからお邪魔するのも申し訳ない、というわけでお話は伺えなかった。
今思うと、アルコール依存症とはなんぞや、と聞いておけばよかった気がするけど、まあ、無理だよね。

その先輩は親ガチャに成功してる。とハタから思われるような身分なんだよね。
父親は大会社をとんとん拍子で出世して重役にまでなるし、母親は劇評家として小銭を稼いでいるし、妹は妹でイギリスで『ミス・サイゴン』に出演していた。

結局、ないものねだりなんだろう。でも、ねだりたいよ、なかったものは。