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視点9_ビジョンは「現実から理想」へ

この記事は、2018年末に室井淳司が宣伝会議より出版した「全ての企業はサービス業になる」の最終章で、書籍の内容を10の視点にまとめた内容を要約した記事になります。

2023年現在からすると5年前の記事ですが、当時から現在までに起きた変化を追うと、社会や消費の流れがどの方向に向かっているのか解りやすいと思いますので是非ご一読ください。

2023年視点からのコメントは後半に記載しています。


以下書籍本文の要約

産業構造が大きく変わろうとしているこの時期に、これからの自社や保有ブランドにどのようなサービスが提供できるだろうかということを考えるとします。その際、今ある自分たちの最先端の技術や資産をベースに実現可能なベストな戦略でも、おそらくベストにはなりません。

今は理想形の先、いつかドローンが荷物を運び、目の前にスクリーンが出現し、目の前にいないはずの人が映し出され、自動運転車両が街を走る時代に、企業やブランドが何を実現していたいかという理想を考え、その実現のために足りてないピースをどのように接続し、実現可能にしていくかを考え、その実現のためには、何年後には何が必要かを予測して、現在へと結びつけていくように、未来からのバックキャスティングで戦略を考える発想が必要です。


書籍より


 今、企業が未来のビジョンを描くことは重要です。既存企業(特にメーカー)は、どれだけ巨大な企業でもデジタル・プラットフォームを形成したテクノロジー企業にイニシアチブを奪われる可能性があります。

デジタルテクノロジーは、モノづくりのプロセスにおいてモノに最後に実装されるパーツの時代から、ネットワークにモノが接続し、サービスとなり、顧客と対話していくために最初に検討すべき脳の時代になりました。

企業を支える顧客やステークホルダーは、これまで企業が維持してきた生産能力や事業規模よりも、新しい時代にどのような価値を提供できる企業に進化するのかに意識が向いてきていきます。オートメーション時代に対応しようとしない企業を、顧客やステークホルダーが中長期的なパートナーとして選択することはありません。

企業は自社が今実現できる技術やサービスを積み上げて実行戦略をつくることよりも、未だ具体性の乏しいオートメーション社会において、自社は何を理想とするのか、というビジョンをつくることで、顧客やステークホルダーに自社の可能性と将来性を共有する必要があります。

 例えばトヨタ自動車が自動車メーカーからモビリティ・カンパニーに変わると宣言したように、先進企業はオートメーション時代を見据えたビジョンを宣言することで、新たなパートナーと接続し、次の時代も持続可能な企業へとアップデートしています。それらのビジョンは現時点で具体性や実現性に乏しくとも、ビジョンを掲げ、小さくてもアクションを起こしていくことで、新たなパートナーの協力を得られることになります。

例えば、Amazonが展開する無人コンビニ「Amazon Go」は、2016年12月にコンセプトムービーと共にプロトタイプ店舗が発表されました。Amazonは、その後2017年1年に1号店の出店を予定していましたが、1号店が開業したのは2018年1月です。計画から1年開業が遅れましたが Amazonのブランドイメージが毀損することはありません。それよりも、新しいことにチャレンジする姿勢は、顧客の支持を得ることができます。

 まだ輪郭がはっきりしないオートメーション時代に向けた商品やサービスを完璧な状態に仕上げてからリリースする必要はありあせん。それらがアップデートでき、改善され続けられれば、顧客が失望することはありません。

仮に商品やサービスの精度が低くても、その先に見据える企業のビジョンを顧客と共有できていれば、顧客は企業を応援し続けてくれます。企業変革のプロセスおいては、顧客に利益をコミットできる具体性と即効性のある短期的な戦略やプランも大切ですが、顧客が応援したくなる超長期的なビジョンや理想のデザイン、そしてそこに向けた小さくても着実なアクションが大切なのです。

書籍要約ここまで


2023年から見て

2018年にこの書籍を書いた頃、事業(会社)が、デジタルによる産業構造の変化を超えた近未来社会でどの様な存在でありたいかを、既存進化を前提としない発想で考えるべきと考えていました。

しかし、このあるべき姿の「再考」は、デジタルによる産業構造変化に対応するという領域を超えて、もっと大きな社会変化を前提とした「再考」に変わった様に思います。

その社会変化とは、人間が本質的に幸福に暮らせる社会の実現を目指すもので、地球環境や人間の活動、経済も含めたサステナビリティを軸とした価値観へのシフトにあります。

企業の発展とは、経済的な成長以上に社会的な存在価値が求められる様になり、存在価値を高める為の基本姿勢が、ミッション、ビジョン、バリューに代表されるパーパスの定義に繋がったように思います。(一方で2023年の今では、マーケティング業界でパーパスの定義がトレンド化し、類似した定義に落ち着いてしまった企業も多くある様に思いますが。)

人間が本質的に幸福に暮らせる社会の実現に向けて、各企業がそれぞれの特性を活かしながらどの様な活動を行うのか。企業である限り、勿論その活動自体が経済的にも持続できる必要があります

誰と(社員、顧客、ステークホルダー)、どの様な社会に向けて、どの様な価値観で繋がっていくか。それらは言葉で書かれた綺麗ごとではなく「実体を伴う活動」として価値を証明していく必要があると思っています。


この書籍は全ての視点や考察が視点10に繋がる構成になっています。視点10も是非ご一読ください。


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室井淳司