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イノベーションの坩堝(るつぼ)

 日経電子版の記事【1つ生むのも大変なイノベーション それを増産する
イノベーションを増産せよ(上)】、【パナソニック、イノベーション増産狙う新拠点の内部 イノベーションを増産せよ(下)】は、改めて、『イノベーションを生み出す環境』、というものを考えさせてくれます。イノベーションというのは、最終的には人間の『ひらめき(アイデア)』かも知れませんが、それを待つのではなく、『ひらめき』の生じやすい環境というものは、人工的に整備することが出来るのでしょうか?


 そもそも、消費者の潜在的なニーズを捉えた、今までにない全く新しい価値を創出するイノベーションのアイデアは、どのようにして飛び出してくるのでしょうか?――全く新しい価値であるからには、連続的な思考の流れが、どこかで飛躍して、思いもかけない異質な要素と組み合わさる必要がありそうです。

 実例は枚挙に暇がありませんが、例えば、最近見たTVで、京指物の『ぐい飲み』、というのがありました。吉野杉で作った『ぐい飲み』なのですが、そのユニークな所は、京指物の桶作りの技術で作られている所です。『桶作りの技術』と『ぐい飲み』という全く異質なもの同士が結合してできたイノベーションです。

 このような、異質なもの同士の出会いからイノベーションが生まれるとするなら、イノベーションの生じやすい環境というものは、異質なもの同士が行き交い、豊富な出会いが生まれる『文明の十字路』のようなものと考えられます。


 ここで注意しなくてはならないのは、企業内に『文明の十字路』を作っても、そこが孤立していては、つまり、付け焼刃的にイノベーションラボのようなものを作っても、全く効果は望めないという事です。何度も何度も地金を打つように、企業自体がDX(デジタルトランスフォーメーション)によって打ち鍛えられていなくては、イノベーションのアイデアが事業として独り立ちするまでには至らないでしょう。一つだけ例を挙げるとしたら、決裁ルートが、煩瑣なピラミッド型であるか、スピーディーなフラット型であるかなどは、きわめて重要なポイントだと思います。

(註:DXについては、下記の拙稿で考察しています。)


 『イノベーションを生み出す環境』、豊富な出会いが生まれる『文明の十字路』とはどのようなものか、記事などから整理してみると――

▶研究開発施設の例
 ① 人が集まりやすい都心や、研究機関・AIベンチャーの集積地に立地。
 ② パートナー企業も入居。
 ③ 社外の有識者を技術顧問・研究員として招請。
 ④ 共創のための空間と個人が集中するための空間の両方がある。
 ⑤ 各研究室は、仕切りで隔てることもできるが、基本的にはお互いの
  やっていることが見えるオープンな構造。
 
▶オフィスの例
 ① フリーアドレス制
 ② コワーキングスペースなど

 これらの施策は、人という角度から見るなら、いかにしてダイバーシティを機能させるかという課題に通じていることが分かります。異色の思考が行き交い、対流して、今までにない全く新しいものが湧き上がってくる『イノベーションの坩堝』を構築することは、第4次産業革命の時代を生きる企業にとっての急務ではないでしょうか。

 


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