見出し画像

町工場とスタートアップのマリアージュ~互いの持ち味を高め合う~

 ワインと料理の組み合わせのように、別々のものが出会った相性の良さ、互いの持ち味を高め合うマリアージュが、スタートアップと町工場の間に起きている事は、素晴らしい事だと思います。日経電子版の記事【スタートアップ 町工場が支える ロボ作りなどで助言 試作・量産、国内に回帰】では、そんな実例がリポートされています。


 そもそも、モノづくり系スタートアップ、あるいは、IT系であっても、そのサービスの実現のために独自のデバイスを必要とするスタートアップにとって、工場を持たないファブレスである事は、ファブレスとしてのメリット以上に、①「どこに作ってもらえばいいか?」というリスク、あるいは、もっと端的に②「自分達とリスクを分かち合って作ってくれるところはあるか?」という現実的な課題であるはずです。

 さらに忘れてならないのは、③スタートアップの企画・開発と、工場の製造という作業は、互いに情報交換しながら、アジャイルに改良を加えていかないと、UX(ユーザーエクスペリエンス)の最大化は達成できない、という最大の課題を抱えていると思います。つまり、ファブレスなスタートアップにとって、組むべき相手である工場には――

▶スタートアップが工場に求めるもの
 ① 高い技術力
 ② 課題解決への共感(温度差なく、同じ熱意で取り組んでくれる)
 ③ 互いに意見を言い合える高いレベルでのコミュニケーション


 このように考えると、今までスタートアップが中国・深圳や台湾に工場を求めていた、というのはむしろ不思議な事で、文字通り灯台下暗し、日本の町工場こそが理想の結婚相手であった、と言えそうです。

 もちろん、高齢化・事業承継問題など数多くの課題を抱える町工場にとっても、スタートアップと組むことは、大きな飛躍のチャンスとなるに違いありません。町工場のモノづくりのテクノロジーと、スタートアップのコトづくりのアイデアがかけ合わさった時、ハードとソフトのマッチングしたイノベーティブな商品が生み出されるのです。

 イノベーティブな商品

   スタートアップのコトづくりのアイデア
  ✖
 町工場のモノづくりのテクノロジー


 実は、このような見方に相通ずるものが、全く別のところでも指摘されていました。日経電子版の記事【「製造業 GAFAに負けぬ」 シーメンス、IoTで脱重電 現場のデータ 付加価値高く】です。


 この記事で、独シーメンスのジョー・ケーザー社長は、次のように発言しています――「製造業の知識が豊富でなければ、現実世界をうまくデジタルで再現して最適化できない」――。

 その本質として社会課題・生活課題のソリューションである商品は、ハードとソフトで構成されており、ハードの知見とソフトの知見がハイレベルで融合しないと、UXを最大化するような良い商品は生み出せないのだと思います。今後、町工場の技術リソースが見える化され、スタートアップとのマリアージュ・ラッシュが続くことが、日本の製造業の再生の一つの道筋として大いに期待されます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?