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注目すべきマックの『デジタルとピープルの融合』~デジタル化の直接的効果と間接的効果~

 日経電子版の記事【カウンター飛び出すマック 10日から静岡県内で開始】でリポートされるマックの事例は、デジタル化の施策について改めて考えさせてくれます。



 まず、記事からマックの施策を整理してみると――

▶アプリによる事前注文システムを導入

(ユーザー)① スマホアプリで事前注文。
      ② カウンターで注文の列に並ばずに商品を受け取れる。
      ③ 店舗内で席を立たずに追加注文できる。
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      待ち時間のストレスなく、気持ちよく飲食できるので、
      顧客満足度が向上する。

 
(店舗) ① 注文から受け渡しまでの工程が効率化される。
      ② カウンター前の混雑がなくなる。
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      カウンター業務の負担が軽減される。
           

人的リソースをより付加価値の高い業務に回せる。

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(カウンタースタッフ)店内で飲食する来店客へのテーブルサービス。

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▶さらに接客サービスを充実

(接客専門員)① 来店客の席を探す。
       ② 来店客のメニュー選びを助ける。
       ③ 商品を運ぶ手伝い。
       ④ 飲み物をこぼしてしまった家族客にナプキンを運ぶ。
                              など
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セルフサービスを見直し、顧客満足を向上。



 このような施策から浮かび上がってくる、マックにおけるデジタル化の方向性は――


(1)攻めのデジタル化

 マックにおけるデジタル化の方向性は、一つには、守りのための『デジタルによる人員の省力化・省人化・少人化』ではなく、明白に攻めの『デジタルとピープルの融合』である事が分かります。

 デジタル化した方が顧客満足の向上に繋がる工程はデジタル化し、その分の浮いた人的リソースをこれまた顧客満足の向上に繋がる『テーブルサービス』へと振り向ける――あくまで顧客満足の向上を徹底追及しています――。

 そして、さらに接客サービスを充実すべく接客専門員を置くことで、『デジタルとピープルの融合』による顧客満足の最大化を図ろうとしているのです。


(2)ビジネスモデルのパラダイムシフト

 マックにおけるデジタル化の方向性のもう一つの側面は、その目指すものが、セルフサービスが当たり前のように思っていたビジネスモデルの大転換であるという事です。

 記事では、「未来型店舗体験」、「全てのタッチポイント(接点)でサービスを大きく変えていく挑戦だ」といった表現がなされていますが、セルフサービスを見直して接客による顧客接点を増やす施策は、より来店客に寄り添ったものであり、セルフサービスでは決して得ることの出来なかった大きな効果がありそうです――

▶接客サービスの効果

 ①『来店客のストレス軽減』・・・接客によって、「何を選べばいいか
  迷ってしまう」、「初めて来たけどどんなメニューがあるのだろう」、
  「混んでて席を探せない」、「商品ができあがるまでカウンターで
  待ってなくてはならない」、「追加したくなった」など、実に様々な
  来店客の悩み、ストレスを軽減し、顧客満足へと転換することが
  できる。

 ②『来店客の生の声』・・・真にフレンドリーな接客を実現できれば、
  ちょっとしたクレーム・要望など、来店客の本心、生の声に接する機会
  が著しく増えることで、顧客の不満を吸い上げ、店舗のオペレーション
  やメニューなどを改善するアイデアを獲得できる。

 ③『ストアロイヤリティの向上』・・・顧客に寄り添い、その場その時の
  課題から中長期的な課題まで解決していく事で、ストアロイヤリティが
  向上していき、差別化へと繋がる。



 マックに見られるようなデジタル化の方向性は、攻めのパラダイムシフトであり、省人化ではなく文字通りピープル化、人手でこそできるコト、人手でしかできないコトに力点が置かれています。

 デジタル化によって人手をかけないオペレーションを設定するのも、あくまで顧客満足のためであり、そのような『デジタル化の直接的効果』と併せて、デジタル化によって浮いた人的リソースをより付加価値の高い業務である接客へと振り向ける、『デジタル化の間接的効果』を最大限追求しようという姿勢です。

 『デジタルとピープルの融合』というメッセージは、デジタル化の一つの方向性、あり方を見事に表現していると思います。

 


  


  


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